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2023年08月19日

「ポールの道」#105「ALL THINGS MUST PASS」5CD/BD Super Deluxe Edition



ジョージ・ハリスンの最高傑作と云っても過言ではない「ALL THINGS MUST PASS」は、オリジナルが1970年11月27日にLP3枚組でリリースされて、2001年1月24日には30周年記念盤として「ALL THINGS MUST PASS」~new century edition~がリリースされていて、ここまでがジョージが生前の作品です。2010年11月26日には40周年記念盤がオリジナルと同じLP3枚組でリリースされて、コレはアナログ盤と配信のみでCD化はされていません。更に2014年9月22日には最新リマスターでCD2枚組でリリースされていますが、収録内容は2001年盤と同じで、ジャケットだけオリジナルのモノクロに戻されています。コノ2014年盤は、アップル時代のアルバムを全て収録した「THE APPLE YEARS 1968–75」にも収められていて、以前にも触れましたが、サントラ盤「WONDERWALL MUSIC(不思議の壁)」と、調律していない初期モーグ・シンセサイザーで遊んだガラクラ音源集「ELECTORONIC SOUND(電子音楽の世界)」までリマスターして収録されています。そして、2021年8月6日に、50周年記念盤がリリースされました。レーベルは、アップルとダーク・ホースで、オリジナルをリマスター&リミックスした「2CD」、ソレにアウトテイクやジャム音源のハイライトを加えた「3CD・デラックス・エディション」、8枚組のアナログ盤「スーパー・デラックス・LPエディション」、5CDとBDまたは8LPを木箱入りにした「Uber Deluxe Edition」、「5LP」、「3LP」、「3LP Color」、そして、あたくしも含めて多くの人が買ったであろう5CD+1BDの「5CD/BD・スーパー・デラックス・エディション」、と様々な形態で、後には配信もされています。5CDと8LPには、オリジナルに加えてデモ音源とセッション音源が合計70曲収録されています。

まず、CD1はオリジナルの1枚目と同じ9曲入りで、2001年盤と2014年盤に入っていたボーナス・トラックはここには入っていません。CD2はオリジナルの2枚目9曲と3枚目「APPLE JAM」5曲の計14曲入りで、「APPLE JAM」の曲順はオリジナル通りに戻されています。CD3とCD4は、1970年5月26日と5月27日のデモ音源で、アルバムに収録された楽曲以外にも、「I LIVE FOR YOU」、「GOING DOWN TO GOLDERS GREEN」、「DEHRA DUN」、「OM HARE OM(GOPALA KRISHNA)」、「SOUR MILK SEA」、「EVERYBODY/NOBODY」、「WINDOW WINDOW」、「BEAUTIFUL GIRL」、「TELL ME WHAT HAS HAPPENED TO YOU」、「NOWHERE TO GO」、「COSMIC EMPIRE」、「MOTHER DIVINE」、「I DON'T WANT TO DO IT」、と13曲が、更にCD5のセッション音源(1970年5月28日〜10月7日)にも、「WEDDING BELLS(ARE BREAKING UP THAT OLD GANG OF MINE)」、「DOWN TO THE RIVER(ROCKING CHAIR JAM)」、「GET BACK」、「ALMOST 12 BAR HONKY TONK」、「WOMAN DON'T YOU CRY FOR ME」、と5曲、合計18曲もの未発表曲が収録されていて、中にはカヴァー曲やジャム・セッションや後にジョージがソロ・アルバムで蔵出しする楽曲も含まれてはいるものの、オリジナル3枚組17曲18ヴァージョンと「APPLE JAM」5曲以外にも18曲もの貯めがあったとは、驚きを隠せません。オリジナルに収録されている「ART OF DYING」は1966年のビートルズのアルバム「REVOLVER」の頃に書いたと云われていて、フィル・スペクターによれば「彼は文字通り何百もの曲を持っていた」は盛り過ぎかもしれませんが、少なくとも50位はあったのでしょう。ソレで厳選しても3枚組となった事が分かります。

ジョージのソノ後の活動を考えると、何もいきなり3枚組で出さずに、小出しにしていたなら、もっとヒット作を出し続けられたのではないのかと思えるのですが、3枚組箱入りだったからこそインパクトがあったのも事実だし、50周年記念盤では前述の通り他にも楽曲は沢山あったわけで、コレは仕方ない事だったのでしょう。何より、売れて、しかも評論家からも大絶賛されたのですから、ジョージとしては「ポールよ、見たか、ざまあみろ」と云う心境だったでしょう。さて、50周年記念盤はCD5枚にBDも付いていて、そちらはオリジナルの23曲の、「ドルビー・アトモス」と「DTS-HDマスター・オーディオ 5.1サラウンド」と「PCMステレオ」の3種の音源が収録されています。いつもの事ですが、箱に音源のみのBDを加えるよりも、CDとBDは分けて販売した方が良いと思うんですけれどね。ソレで、デモ音源とセッション音源はベーシック・トラックが中心なので、ジョージのヴォーカルも良く聴こえるし、1年半位前のビートルズによる「THE GET BACK SESSIONS」と比べると、ジョージの気合の入り方が全く違っていて、ソロになる覚悟が感じられる良い音源だと思います。肝心の本編ですが、今回はリマスターだけではなくリミックスもされていて、元々のプロデューサーであるジョージばかりか、フィル・スペクターもコノ箱が出る少し前に亡くなっているので、果たしてジョージやスペクターがコレを聴いて何と云ったかは永遠に分かりません。ジョージは2001年盤の時にリマスターだけではなくリミックスもしたかったらしいので、まあ、コレはコレでアリなんでしょうね。個人的にも旧CDと2001年盤と2014年盤と2021年盤の4セット持っているので、アリっちゃアリです。2001年盤と2014年盤のボーナス・トラックが外されて、アノ「MY SWEET LORD(2000)」がコレでは聴けません。しかし、アウトテイクでのエリック・クラプトンのギターは、うるさいですなあ。

(小島イコ)

posted by 栗 at 23:00| FAB4 | 更新情報をチェックする