ジョージ・ハリスンが1970年11月27日にアップルからリリースした3枚組の大作であり傑作アルバム「ALL THINGS MUST PASS」は、3枚組と云うハンデがありながら全英・全米で首位の大ヒットとなり、ビートルズではなく、ジョージ・ハリスンと云う個人がクローズアップされて、1970年代の幕開けを飾るロックの金字塔と絶賛されました。同じ頃にジョン・レノンはアルバム「JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND(ジョンの魂)」を発表して、ソノ赤裸々な内容のアルバムは絶賛されるものの、セールス面ではいまいちだったし、ポール・マッカートニーは「McCARTNEY」が売れたものの、評論家からは酷評されていたし、リンゴ・スターは「BEAUCOUPS OF BLUES(カントリー・アルバム)」なんて呑気なアルバムをリリースして相手にされていなかったわけでして、それこそレコスケくんが云う「ジョージの一人勝ち」状態となったのです。シングル・カットされた「MY SWEET LORD」も全英・全米で首位となり、日本のオリコンチャートでも4位まで上がっていますが、まあ、ソノ、盗作問題にも触れておかなくてはならないでしょう。1971年5月21日にカントリー歌手のジョディ・ミラーがシフォンズの「HE'S SO FINE」のカヴァーをリリースするのですが、コレが「MY SWEET LORD」に酷似したアレンジだったのです。そして、1975年にはシフォンズが「MY SWEET LORD」をカヴァーしていて、1976年1月に訴訟となり、結果的にはジョージが「潜在意識での盗用」と云う訳が分からない理由で敗訴するのです。確かに「MY SWEET LORD」は「HE'S SO FINE」に似ていますけれど、大瀧師匠は「アノ裁判官は、音楽の事を何も分かっていない」と語っています。「MY SWEET LORD」が盗作なら、大瀧師匠の楽曲制作法が全否定されたも同然ですから、まあ、そう云いますわな。
そもそも「MY SWEET LORD」はジョージとフィル・スペクターの共同プロデュースであって、かつてロネッツなどのガールズ・グループを手掛けていたスペクターが、同時代の大ヒット曲であるシフォンズの「HE'S SO FINE」を知らないわけがないのですよ。当然ながら「HE'S SO FINE」と似ているよ、とアドバイスするところですが、イントロのアコースティックギターの重ね録りから徐々に盛り上がってゆく1970年式「WALL OF SOUND」の独自性に、大いに自信を持っていたからこそ、そんな野暮な事は云わなかったのでしょう。ちなみに「MY SWEET LORD」は、現在でも、作詞作曲はジョージ・ハリスンの侭です。オリジナルLPや初期CDでの「音の壁」は、ソレはソレで良いのですが、2001年1月24日に、ジョージ本人の監修で、ケン・スコット(エンジニア)、ジョン・アストリー(リマスタリング)で「ALL THINGS MUST PASS」~new century edition~がEMIからリリースされました。CDサイズの箱入りで出たコノ新たなヴァージョンは、オリジナルの3枚に加えて5曲のボーナス・トラック入りです。まずは、ジャケットがカラーに変わっていて、中のCD2枚は紙ジャケ入りで、解説書も付いていますが、そちらのジャケットは何もなかったフライアー・パーク(ジョージのお城みたいな広大な自宅)が、紙ジャケでは背後に高層ビルが建ち、解説書では高速道路まで出来ています。此の辺は、ジョージらしいユーモアや環境問題への皮肉が現れています。ジョージとケン・スコットはオリジナルのテープを聴いて、フィル・スペクターによる過剰とも云えるリバーブの量に驚き、リマスターだけではなく、リミックスもすべきだと考えたものの、EMIに反対されてリマスターのみとなっています。
CD1は、オリジナルの1枚目と同じ9曲に、ボーナス・トラックとして、未発表の「I LIVE FOR YOU」、「BEWARE OF DARKNESS」と「LET IT DOWN」のデモ音源、「WHAT IS LIFE」のラフ・ミックス、そして「MY SWEET LORD(2000)」の5曲が加わっていて、「I LIVE FOR YOU」は何故オリジナルでボツにしたのか分からない名曲です。問題の「MY SWEET LORD(2000)」は、オリジナルのベーシック・トラックに新たに楽器のオーバーダビングと新たなジョージのヴォーカルを乗せたヴァージョンで、サム・ブラウンも一緒に歌っています。これらの5曲は、以後のリイシュー盤CDにも収録されています。わざわざ新たなヴァージョンを作ったのは、ジョージ自身が「MY SWEET LORD」はオリジナルだと認識しているからでしょう。ジョージは「MY SWEET LORD」の元ネタは「HE'S SO FINE」ではなく、エドウィン・ホーキンス・シンガースの「OH HAPPY DAY」だと発言していて、確かに歌詞のテーマや後半で繰り返される「ハレ・クリシュナ」などのコーラスは、ゴスペル調だし、ビリー・プレストンによるリリース順だとオリジナル・ヴァージョンを聴くと「HE'S SO FINE」とはあまり似ていません。CD2は、オリジナルの2枚目9曲と3枚目の「APPLE JAM」5曲を収録していますが、「APPLE JAM」の曲順が変わっていて、オリジナルでは1曲目だった「OUT OF THE BLUE」が最後に移動されています。「APPLE JAM」でギターを弾き捲るジョージを聴くと、ビートルズ時代に散々ポールにギターに注文を付けられていた長年の鬱憤を晴らしているかの様です。リマスターされているので音は良くなってはいますが、此のアルバムの肝はフィル・スペクターによる過剰な音作りにもあって、オリジナルだと音が団子状態で、グワーッと迫って来るところにもあるので、リイシューされる度にソレが薄くなってもいます。
(小島イコ)
さて、本日8月18日は、櫻坂46の三期生の村井優ちゃんのお誕生日です。おめでとうございます。ようやく顔と名前が一致する様になった三期生は、推しメンの天ちゃんと同世代の方が多いので、将来は天様をエースとしたグループになるのでしょうね。
(小島イコ/姫川未亜)
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