日本人は、ジョージ・ハリスンが好きです。ビートルズ時代にジョージの曲は、英国では「THE INNER LIGHT」と「OLD BROWN SHOE」と「SOMETHING」の3曲しかシングルになっていませんが、米国では「FOR YOU BLUE」も加わり4曲です。ところが、日本ではソレに更に「WHILE MY GUITAR GENTLY WEEPS」と「HERE COMES THE SUN」も独自でシングルになっていて6曲です。まあ、A面は「SOMETHING」だけで、他の5曲はB面なんですけれどね。しかしながら、ジョージの曲がシングルに選ばれたと云う事は、ソノ分「レノン=マッカートニー」の曲がハブにされたと云う事なので、山本小鉄風に云えば「コレは大変な事ですよ!」(猪木がアンドレ・ザ・ジャイアントからギブアップ勝ちした時の解説)なのです。天才「レノン=マッカートニー」の陰で、サー・ジョージ・マーティンが云った「ジョンとポールは二人だったが、ジョージはひとりだった」状態で精進して解散間際に開花したのが、日本人には気に入られているのでしょう。サー・ジョージ・マーティンはブライアン・ウィルソンに関しても「ジョンとポールは二人だったが、ブライアンはひとりだった」と発言しているので、コノ云い回しが気に入っているんでしょうね。ドキュメンタリー「GET BACK」では、ポールが席を外した途端にジョージがジョンに「このままじゃ、出来た曲を全部発表するのに10年掛かってしまうから、ソロ・アルバムを出したい」とお願いする場面があって、観ている方は「おいおい、10年掛かるって、ジョージ盛ってんなあ」と思えるものの、実はソレは本当だったのです。
ビートルズ時代には、ジョージの曲はアルバムに2曲か3曲しか収録されなかったのですが、1970年11月27日にアップルからリリースされたジョージの実質的なファースト・ソロ・アルバム「ALL THINGS MUST PASS」は、3枚組で箱入りで、1枚は「APPLE JAM」のジャム・セッションなので2枚組にオマケなのですが、ソノ2枚には17曲18ヴァージョンが収録されていて、ソノ全てがシングル・カット出来る様な名曲ばかりで、勿論、更に他にも楽曲があったわけで、確かにビートルズが存続していてアルバムに2曲とか3曲では10年掛かったでしょう。オリジナルの「ALL THINGS MUST PASS」の内容は、A面が、1「I'D HAVE YOU ANYTIME」、2「MY SWEET LORD」、3「WAH-WAH」、4「ISN'T IT A PITTY(Version One)」で、B面が、1「WHAT IS LIFE」、2「IF NOT FOR YOU」、3「BEHIND THAT LOCKED DOOR」、4「LET IT DOWN」、5「RUN OF THE MILL」で、C面が、1「BEWARE OF DARKNESS」、2「APPLE SCRUFFS」、3「BALLAD OF SIR FRANKIE CRISP(Let It Roll)」、4「AWAITING ON YOU ALL」、5「ALL THINGS MUST PASS」で、D面が、1「I DIG LOVE」、2「ART OF DYING」、3 「ISN'T IT A PITTY(Version Two)」、4「HEAR ME LORD」と、ここまでの2枚17曲18ヴァージョンが歌モノで、E面が、1「OUT OF THE BLUE」、2「IT'S JOHNNY'S BIRTHDAY」、3「PLUG ME IN」で、F面が、1「I REMEMBER JEEP」、2「THANKS FOR THE PEPPERONI」で、「IT'S JOHNNY'S BIRTHDAY」はジョン・レノンのお誕生日用の多重録音で、他の4曲はジャム・セッションです。
コノ内「I'D HAVE YOU ANYTIME」はボブ・ディランとの合作で、「IF NOT FOR YOU」はボブ・ディランのカヴァーで、「IT'S JOHNNY'S BIRTHDAY」が「CONGRATURATIONS」の替え歌で、他は全てジョージ・ハリスン作です。演奏にはエリック・クラプトンを中心にしたデレク&ザ・ドミノスのメンバー(ボビー・ウィットロック、カール・レイドル、ジム・ゴードン )、デイブ・メイスン、ピート・ドレイク、ビリー・プレストン、ゲイリー・ライト、ピーター・フランプトン、リンゴ・スター、クラウス・フォアマン、ジンジャー・ベイカー、アラン・ホワイト、ボビー・キーズ、ジム・プライス、ゲイリー・ブルッカー、トニー・アシュトン、マル・エヴァンス、エディ・クレイン、バッドフィンガー(ピート・ハム 、トム・エヴァンズ 、ジョーイ・モーランド、マイク・ギボンズ)などが参加していて、ジョンとヨーコも手拍子で参加して、ポールはハブにされて、オーケストラとコーラス・アレンジはジョン・バーハムで、プロデュースはジョージとフィル・スペクターで、オリジナルのLPや初期のCDでは正に1970年式の「WALL OF SOUND」が味わえる出来栄えです。3枚組と云うボリュームながらアルバムは全英・全米で首位を獲得して、シングル・カットした「MY SWEET LORD」も全英・全米で首位、英国では「MY SWEET LORD」のB面だった「WHAT IS LIFE」を米国ではA面でシングルにして10位と、大ヒット作となって、レノン=マッカートニーよりも早くソロとして大成功したジョージ・ハリスンは「ビートルズが解散して、最も得をした男」と呼ばれる事となりました。コノ名盤は何度かリイシューされていて、あたくしもブートレグではない「正規盤のCD」だけでも4セット持っています。
(小島イコ)
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