キャピトルのアルバム乱造は止まらず、1965年6月14日には「BEATLES VI」がリリースされました。内容は、英国でのアルバム「BEATLES FOR SALE」から「BEATLES ’65」には未収録だった「KANSAS CITY / HEY-HEY-HEY-HEY!」「EIGHT DAYS A WEEK」「I DON'T WANT TO SPOIL THE PARTY」「WORDS OF LOVE」「WHAT YOU’RE DOING」「EVERY LITTLE THING」の6曲に、まだ英国では未発売だったアルバム「HELP !」から「YOU LIKE ME TOO MUCH」「DIZZY MISS LIZZY」「TELL ME WHAT YOU SEE」の3曲と、シングルB面で英国ではアルバムには未収録だった「YES IT IS」に、アルバム「HELP !」のセッションで英国では1966年12月10日にリリースの「A COLLECTION OF BEATLES OLDIES」まで聴けなかった「BAD BOY」の全11曲入りです。英国での発売よりも早く新曲を収録していて、其の辺にはキャピトルの力技が伺えますが、アルバム単位での制作を行い、シングル曲はなるべくアルバムには入れないと云うビートルズ側の意図とは全く違って、選曲も曲順も滅茶苦茶なアルバムを勝手にリリースされ捲ったのですから、当然ながら不満だったでしょう。ジャケットの写真やデザインも、当時のビートルズが意図していたのとは異なりますし、タイトルもキャピトルで6枚目だから「BEATLES VI」と云う、何の捻りもないものです。6枚目とは云うものの、ヴィー・ジェイの「INTRODUCING…THE BEATLES」と、ユナイテッド・アーティスツの「A HARD DAY'S NIGHT」のサントラ盤と、キャピトルからとは云えインタビュー中心の「THE BEATLES' STORY」はノーカウントなので、米国ではなんと9作目で、此の時点で英国では4作しか出していなかったのですから、如何に水増しし捲っていたのかお分かり頂けるでしょう。
「BEATLES FOR SALE」と「HELP !」を混ぜてしまった選曲は、英国盤でのオリジナル仕様とは違っていて、ビートルズの流れが急激なものではなかったと思える様にはなっていますが、其れは別にキャピトルが良い編集をしたからではなく、急いで新曲を要求したから「HELP !」のセッションから早くレコーディングした曲を入れただけであって、全くの偶然なだけで、そりゃあ、緩やかな流れにもなります。名カヴァーである「BAD BOY」は、これまた英国ではボツ音源だったので、結果的に「A COLLECTION OF BEATLES OLDIES」まで残ってしまっただけなのです。シングルB面の「YES IT IS」はジョン作の名曲ではありますが、英国ではアルバムには未収録だった為に、モノラル・ミックスしかなかったので、例によってキャピトルは疑似ステレオを制作してエコーで誤魔化しています。此のアルバムは2006年の「THE CAPITOL ALBUMS VOL. 2」にモノラルとステレオのオリジナルが2in1で収録されましたので、其のエコー・ヴァージョンも聴けたのですが、2014年の「THE U.S. BOX」では2009年リマスターに差し替えられています。「YES IT IS」と、やはり疑似ステレオのみだった「THIS BOY」のリアル・ステレオは、1988年の「PAST MASTERS」で初めてリリースされるのですが、其の「THIS BOY」のステレオ・ミックスが作られたのが、実は1966年に「A COLLECTION OF BEATLES OLDIES」を出す時だったのです。ソレはですね、なんと「BAD BOY」のステレオ・ミックスを作るはずが、スタッフ(サー・ジョージ・マーティンとジェフ・エメリックではない)が「THIS BOY」と「BAD BOY」を間違えて「THIS BOY」のステレオ・ミックスを作ってしまい、間違いに気づいて「BAD BOY」もステレオ・ミックスをしようとして間に合わず、「BEATLES VI」のステレオ・ミックスを入れたと云う、トンデモなエピソードがあるのでした。
(小島イコ)
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