米国のキャピトルは勝手にビートルズのアルバムを編集していて、まあ、ソレはソレで英国ではシングル盤やEPのみでリリースされていた楽曲も含んでいてビートルズの流れが分かり易かったりもするのですが、ビートルズ側としても本意ではないカタチでのリリースには苛立っていて、後の「ブッチャー・カヴァー」へと繋がってゆきます。1964年11月23日にはアナログでは2枚組だった「THE BEATLES' STORY」をリリースしていますが、コレはですね、ほとんど全編がナレーションとメンバー4人とブライアン・エプスタインとジョージ・マーティンへのインタビューで構成されたアルバムで、曲は既発曲を雑な編集でのメドレーと「ハリウッド・ボウル」でのライヴ音源から「TWIST AND SHOUT」のサワリだけが収録されているだけです。こんなもんまでモノラルとステレオで発売して、こんな内容でも7位まで上がって、発売後1週間で100万枚を突破しちゃったのですから、キャピトルとしてはホクホクで、益々、アルバムを乱造する事となるのです。英国ではリリースされていませんが、日本では1966年8月5日にオデオンから日本盤がリリースされているのです。箱入り2枚組で、当然ながら対訳は付いていますが、来日公演の一か月後にどさくさ紛れにリリースした感もありましてですね、買ってしまって内容を聴いて愕然としたファンも多かったと思われます。そもそも英語圏である米国ならば内容も聴いて理解出来ますが、日本でコレをリリースするって、一体、何を考えていたのでしょうか。日本においてビートルズのオリジナル・アルバムでグループが活動中に一番売れたのは1970年の「LET IT BE」で、其れも実質的には解散後であって、1966年の来日公演当時には「クラスで一人か二人しかファンがいなかった」と云われているのです。
キャピトルの乱造は続いて、1965年3月22日には「THE EARLY BEATLES」がリリースされます。こっちはですね、元々はキャピトルが相手にしなかった英国でのデビュー・アルバム「PLEASE PLEASE ME」を、米国ではヴィー・ジェイから「INTRODUCING…THE BEATLES」としてリリースされていたのですが、其のヴィー・ジェイが倒産してしまったのでキャピトルでリリースし直したのです。内容は「PLEASE PLEASE ME」から「I SAW HER STANDING THERE」「MISERY」「THERE'S A PLACE」を抜いた11曲入りで、ジャケットは「BEATLES FOR SALE」の裏ジャケットの写真を使っています。「I SAW HER STANDING THERE」は「MEET THE BEATLES」に収録されていましたが、他の2曲「MISERY」「THERE'S A PLACE」は宙に浮いてしまい、米国キャピトル盤では1980年3月24日発売の「RARITIES」まで聴けなかったのでした。此のアルバムは、そんな滅茶苦茶な内容なのに、1970年に日本盤もリリースされています。米国盤の「THE EARLY BEATLES」は2006年に「THE CAPITOL ALBUMS VOL. 2」にモノラルとステレオのオリジナルが2in1で収録されましたが、こんな内容だったので「YESTERDAY AND TODAY」を収録した方がマシでした。2014年の「THE U.S. BOX」には「THE BEATLES' STORY」も「THE EARLY BEATLES」も収録されているのですが、楽曲は2009年リマスター音源に差し替えられています。「THE BEATLES' STORY」がCD化されたのには驚きましたし、「THE EARLY BEATLES」もキャピトル以外には意味がないアルバムです。そして、何度か書いていますが、2014年の「THE U.S. BOX」での音源の差し替えは、一体、何故だったのでしょうか。「THE CAPITOL ALBUMS」の段階では米国オリジナル音源だったのですから、幾ら2009年にリマスター盤がリリースされたからと云って、キャピトル盤までソレに統一しちゃったのは、明らかに悪手だし、そう云う中途半端な事を本家本元のアップルがやるから、ブートレグはなくならないんですよ。
(小島イコ)
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