nana.812.png

2023年05月29日

「ポールの道」#023「BEATLES ’65」「ビートルズ No.5 !」

BEATLES '65 / LTD.EDIT


ビートルズのアルバムが米国のキャピトルでも英国のEMIパーロフォンと同じになるのは、1967年の「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」からですし、其の後もキャピトルは独自の編集盤をリリースし続けます。特に1964年から1966年までは、英国では1枚に収められた音源から2枚に水増ししておりました。そんな中で、1964年12月15日にキャピトルからリリースされたのが「BEATLES ’65」です。コレはですね、ジャケットはなかなかイカしていますけれど、内容は英国盤の「BEATLES FOR SALE」から、「NO REPLY」「I'M A LOSER」「BABY'S IN BLACK」「ROCK AND ROLL MUSIC」「I'LL FOLLOW THE SUN」「Mr. MOONLIGHT」「HONEY DON'T」「EVERYBODY’S TRYING TO BE MY BABY」の8曲に、「A HARD DAY'S NIGHT」から「I’LL BE BACK」と、英国ではシングルのみだった「I FEEL FINE」「SHE'S A WOMAN」の3曲を加えた全11曲入りなんですよ。それでですね、シングル曲は当時はモノラルしかミックスしていなかったので、「I FEEL FINE」と「SHE'S A WOMAN」は疑似ステレオで、其れを誤魔化す為にエコーをかけ捲っている別ミックスなんですけれど、何故かモノラルもエコーがかかっているのです。此の奇怪な編集盤は、1970年に日本でキャピトル盤をリリースした時にはラインナップから外されておりますが、其の理由は後で書きます。2004年に「THE CAPITOL ALBUMS VOL. 1」にモノラルとステレオのオリジナルが2in1で収録され、ようやくどんなトンチキ盤であったのかが判明しましたが、2014年の「THE U.S. BOX」では2009年リマスター音源に差し替えられているので、エコーがかかったヴァージョンは入っていません。

さて、日本で此のビートルズが傘をさしているジャケットと云えば「ビートルズ No.5 !」でございます。1965年5月5日にオデオンからリリースされた此のアルバムは、タイトル通りに日本では5枚目のアルバムでした。ところが、ところがですよ、既に日本では3作目の「A HARD DAY'S NIGHT」から英国オリジナルと内容が同じになっていてですね、4作目の「BEATLES FOR SALE」も英国盤と同内容でリリースしちゃっていたので、米国盤みたいな水増しは不可能だったのです。其れで、此の「ビートルズ No.5 !」は、EP「LONG TALL SALLY」から全4曲「LONG TALL SALLY」「MATCH BOX」「SLOW DOWN」「I CALL YOUR NAME」と、アルバム「PLEASE PLEASE ME」から「ANNA」「ASK ME WHY」「CHAINS」の3曲と、アルバム「WITH THE BEATLES」から「YOU REALLY GOT A HOLD ON ME」「ALL I’VE GOT TO DO」の2曲と、シングルB面の「THIS BOY」に、最新シングルだった「I FEEL FINE」「SHE'S A WOMAN」のシングル3曲に、なんと、まあ、ドイツ語の「シー・ラヴズ・ユー」と「抱きしめたい」の2曲を加えた全14曲入りでモノラルのみでのリリースだったのです。バラエティーにとんだ内容と云えば宜しいのでしょうが、つまりは日本独自で「ビートルズ!」と「ビートルズ No.2 !」を出しちゃったから、其の余りものをかき集めてアルバムにしてしまったと云う、ハッキリ云って米国のキャピトルよりも酷い荒技を使っているわけです。1970年にキャピトル盤の日本盤がリリースされた時に「BEATLES ’65」が外されたのは、後の「RUBBER SOUL」や「REVOLVER」同様に余りにも節操がない選曲ゆえだったのでしょうが、タイトルもジャケットも中途半端にキャピトル仕様で既に2枚を出してしまっていたからでもあるのでしょう。2014年の「ミート・ザ・ビートルズ <JAPAN BOX>」に収録された復刻盤CDは、2009年のモノラル・リマスターに差し替えているので、音源としては面白味がありません。

(小島イコ)

posted by 栗 at 21:00| FAB4 | 更新情報をチェックする