1996年3月21日には「GO! GO! NIAGARA」「NIAGARA CALENDAR」「LET'S ONDO AGAIN」、そして「SNOW TIME」の初市販CDと4作を同時にリリースして、翌1997年6月21日にシリア・ポールさんの「夢で逢えたら」を、全てスリムケース廉価の選書盤形態でリリースした大瀧師匠は、此の時点で「1970年代のナイアガラが、今終わる」と完全にまとめに入りました。ところがですよ、同1997年11月12日にはシングル「幸せな結末 / Happy Endで始めよう」を発表したのです。コレは前作シングル「フィヨルドの少女 / バチェラー・ガール」以来、なな、なんと12年ぶりの新曲だったのです。ドラマの主題歌でもあったので、チャートで最高2位となり、97万枚も売れる特大ヒット曲となりましてですね、大瀧師匠にとっては最大のシングル・ヒット曲となりました。カップリングの「Happy Endで始めよう」もドラマの挿入歌で、2曲共に「はっぴいえんど」を意識した楽曲でありまして、つまりはコレもまとめに入った楽曲でした。普通のミュージシャンならば、続いてアルバムを発表するところですが、大瀧師匠はそんな当たり前の事はせずに再び沈黙して、2003年5月21日にやはりドラマの主題歌「恋するふたり」を発表して、こちらも最高7位のヒット曲となりました。それでも大瀧師匠はアルバムを作らず、同2003年10月29日にリリースされた竹内まりやさんのカヴァーアルバム「Longtime Favorites」で「恋のひとこと (SOMETHING STUPID)」をデュエットしたのが、存命中で最後の歌唱曲とされて来ましたが、前にも書いた通り、2005年にはとんねるず用でボツになった「ゆうがたフレンド (USEFUL SONG)」をレコーディングしていたし、2009年の「A LONG VACATION from Ladies」で「散歩しない?」で参加しています。
さてさて、其の後の大瀧師匠は「20周年記念盤」を終えて「30周年記念盤」で「ナイアガラ不滅シリーズ」を始めます。そんな中で、2010年3月21日には前回取り上げた「EIICHI OHTAKI Song Book I -大瀧詠一 作品集 Vol.1 (1980-1998)-」と同時に「EIICHI OHTAKI Cover Book 1 -大瀧詠一カバー集 Vol.1 (1978-2008)-」もリリースしたのです。大瀧師匠のカヴァー集は、其れまでも其れからも何作も発表されておりますが、生前に大瀧師匠がリマスターして監修した云わばお墨付き盤はコレだけです。内容は全17曲で、いきなり大瀧師匠のCM曲をモノマネしてメドレーにした「ナイアガラ・CM BOX」で始まり、そりゃあ、まあ、色んな曲が色んなアレンジで聴けます。しかしながら、如何に大瀧師匠の楽曲はアレンジによって生かされていたと、またしても認識させられる事となるのです。だってね、ロニー・スペクターやダーレン・ラヴが歌ってもアレンジが下手なら「違う」だったわけですよ。そんな中でも、小林旭さんの「アキラのさらばシベリア鉄道」と、植木等さんの「FUN×4」の2曲はスゴイです。他のCDでも聴けますが、こうして大瀧師匠作品のみのアルバムで師匠自らのリマスターで聴くと、素晴らしさも増します。まずは「アキラのさらばシベリア鉄道」ですけど、コレは大瀧師匠が「アキラの」を付けて欲しいと要望してそうなったのですけれど、本当に「アキラの」になっちゃっています。小林旭さんは詞にも重点を置いて歌う方なので、原曲の大瀧唱法を完全に解体してしまい、普通に日本語として歌っていて、もう、別の曲になっちゃっているんですよ。植木屋の「FUN×4」も、完全なる「無責任男の復活」となっていて、こんな男には歌詞にある様なハッピーエンドにはならず「お前みたいな奴に娘はやれん!」と云われるでしょう。コノ2曲の為に買っても、お釣りが来る位に絶品です。
(小島イコ)