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2023年05月03日

「ナイアガラ考」#101「B‐EACH TIME L‐ONG」「SNOW TIME」



今、考えてみれば大瀧師匠は、1984年の「EACH TIME」を最後に引退する心算でいたと思えます。同年4月1日には「NIAGARA BLACK VOX」をアナログ5枚組でリリースして、翌1985年には、ライヴではっぴいえんどが一度だけ再結成しますし、1981年の「ロンバケ」以降の曲での準ベスト盤「B‐EACH TIME L‐ONG」を1985年6月1日にリリースするし、同年12月にはプロモ盤のみの冬向けコンピレーション盤「SNOW TIME」を出しています。更に其の翌年の1986年6月1日には、元祖「NIAGARA CD BOOK I」を、そして其のまた翌年の1987年6月21日には「NIAGARA BLACK BOOK」をリリースしました。つまり、ナイアガラの旧譜を全てまとめに入ったのです。当時は、そんな事とは露知らず、来るべき「1991」とか、「NIAGARA TRIANGLE Vol.3」とか、「2001年ナイアガラの旅」とかが出るもんだと思っていたのです。さて、「B‐EACH TIME L‐ONG」ですが、此のアルバムはCDとカセットテープのみの発売で、アナログ盤は存在しません。カセットテープは片面30分で両面で丁度1時間になる様に編集されています。コレは、大瀧師匠が福生から東京都心へ車で来るのが1時間位掛かったのでそうしたらしいです。

楽曲は、1「カナリア諸島にて」、4「恋するカレン」、7「雨のウェンズデイ」、10「Velvet Motel」の4曲が「ロンバケ」から、2「オリーブの午后」、5「白い港」、8「Water Color」の3曲が「トライアングル2」から、3「夏のペーパーバック」、6「ペパーミント・ブルー」、9「銀色のジェット」の3曲が「EACH TIME」から、そして11曲目は当時は新曲扱いだった「Bachelor Girl」、更に「NIAGARA SONG BOOK」から12「夢で逢えたら」のインストゥルメンタルの全12曲なのですが、全曲に「NIAGARA SONG BOOK」と「NIAGARA SONG BOOK 2」でのインストが前奏として追加されていて、此の編集には賛否ありました。其の後、1989年6月1日には「Velvet Motel」と「Bachelor Girl」をカットした全10曲のリマスター盤が出て、1991年3月21日にはオリジナルの全12曲で選書盤が出て、大瀧師匠の死後に2015年3月21日に「NIAGARA CD BOOK II」にオリジナル通りで収録されました。残念ながら、現在は廃盤なので、箱を買うかサブスクで聴くかしかありません。オーケストラと本編の繋ぎは、リイシューする度にリミックスし直されております。タイトルは「ロンバケ」から「EACH TIME」までからの選曲なので、単純に繋げただけだそうです。

そして、同年1985年12月にプロモ盤として配布されたのが「SNOW TIME」でして、こっちは冬向きの曲を集めて、前奏は付けず、前半は歌入りで後半はインストゥルメンタルが収録されています。楽曲は、当時は最新シングルだった1「フィヨルドの少女」、2「さらばシベリア鉄道」と4「スピーチ・バルーン」の2曲が「ロンバケ」から、3「レイクサイド ストーリー」と5「木の葉のスケッチ」の2曲が「EACH TIME」から、更に6曲目は森進一さんへの提供曲「冬のリヴィエラ」のセルフカヴァーで英語詞の「夏のリビエラ」で、アナログ盤はここまでがA面です。B面は全曲がインストゥルメンタルで、1「FIORD」(「フィヨルドの少女」のインスト)、2「SIBERIA」(「さらばシベリア鉄道」のインスト)、3「RIAS」、4「AURORA」、5「TUNDRA」、6「LAKE SIDE STORY」(「レイクサイド ストーリー」のインストで「NIAGARA SONG BOOK 2」より流用)の全12曲でした。1996年3月21日に選書盤で初めてCDが市販されて、アナログ盤のA面だった歌入り6曲は其の侭で、「木の葉のスケッチ」だけが別ヴァージョンになり、B面だったインストは、「FIORD / 哀愁のフィヨルドの少女」「SIBERIA / 哀愁のさらばシベリア鉄道」「RIAS / リアスの少年」「AURORA / オーロラに消えた恋」「TUNDRA / 雪のツンドラ」と邦題が付いて、最後は「LAKE SIDE STORY」の代わりに「YOKAN / うれしい予感」(渡辺満里奈さんへの提供曲のインスト)となりました。

2015年3月21日に「NIAGARA CD BOOK II」にオリジナル・プロモ盤仕様で収録されましたが、「B‐EACH TIME L‐ONG」同様に選書盤は廃盤となったので、箱を買わないと聴けません。そもそもこっちがプロモ盤のみだったのは、同年に2作もベスト盤的なコンピレーションアルバムを出すのは悪手だと思ったからで、10年以上が経過してナイアガラ作品の選書盤化が進んでいる時に、プロモ盤が中古市場で値上がりしていたのを止める為に出してくれたのかとは思います。しかしながら、現在では「B‐EACH TIME L‐ONG」も「SNOW TIME」も揃ってバラ売りのCDは廃盤なわけで、大瀧師匠が亡くなってから勝手に編集したベスト盤とかリミックス盤とか箱とかドンドンドンガラガッタと毎年リリースしているのに、存命中に御本人が編纂したコレらのコンピレーションアルバムの方は廃盤にしてしまうって、そりゃないでしょ。例えばビートルズなんかは、最近はジャイルズ・マーティン(サー・ジョージ・マーティンの息子)たちがリミックス盤を出しているのですが、それでオリジナルは廃盤にしちゃったならば全世界的に非難轟轟でしょうけれど、そんなバカな事はしないわけですよ。オリジナルのリマスターは残っているから、リミックスも許されているわけですよ。そう考えると、今のソニーとナイアガラがやっている事って、かなり危ういのです。

(小島イコ)

posted by 栗 at 22:00| ONDO | 更新情報をチェックする