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2023年05月01日

「ナイアガラ考」#99「カイエ」



1984年6月6日にター坊こと大貫妙子さんの8作目のアルバム「カイエ」がDear Heart ⁄ RVCからリリースされ、同名のヴィデオ作品もリリースされました。つまり此のアルバムはサントラ盤とも云えて、同年6月20日にはタツローこと山下達郎さんもサントラ盤「BIG WAVE」をリリースしておりましてですね、やはりター坊とタツローは、同じバンドにいただけはあって、ソロになっても発想は似ています。さて、まずはオリジナル・アナログ盤の「カイエ」は、A面が、1「カイエ I」、2「Amour levant 〜若き日の望楼」、3「輪舞」、4「La courant de mecontentment (不満の暗流)」、5「カイエ II」、B面が、1「宇宙みつけた」、2「ラ・ストラーダ」、3「雨の夜明け」、4「夏に恋する女たち」の全9曲入りで、アレンジは「カイエ II」と先行シングル「宇宙みつけた」が教授こと坂本龍一さんで、「輪舞」が清水靖晃さんで、「La courant de mecontentment (不満の暗流)」が清水信之さんで、他の5曲はジャン・ムジーさんです。更に「Amour levant 〜若き日の望楼」はフランス語の歌詞に変わっていて、「La courant de mecontentment (不満の暗流)」と「宇宙みつけた」の3曲は歌入りですが、他の6曲はインストゥルメンタルと云う、サントラ盤ならではの構成となっております。同名のヴィデオ版は、「宇宙みつけた」(NHKで放送された「おしゃべり人物伝」の主題歌)以外の8曲に「幻惑」の歌入りと、「黒のクレール」と「夏色の服」のインストが加わっています。

ター坊はシンガーソングライターですから、アルバムで現行CDだと「メトロポリタン美術館」が加わって全10曲となったものの、歌入りがたったの4曲で他の6曲はインストゥルメンタルと云う構成にははぐらかされた感じもするでしょう。更に、NHKの番組のテーマ曲だった「宇宙みつけた」とNHKの「みんなのうた」用の曲だった「メトロポリタン美術館」の居心地の悪さも不可思議な感想を持つでしょう。其れを除くと純粋な新曲も更に少ないわけでして、此のアルバムはサントラ盤であって、同名のヴィデオ作品を観ないと完成形が理解出来ないのでした。映像作品の方は全編がモノクロで、ター坊が歌っている姿を拝めるのは「Amour levant 〜若き日の望楼」と「La courant de mecontentment (不満の暗流)」だけです。後はパリの街頭風景とかが映し出されていて、かなりの問題作だったと思います。「Amour levant 〜若き日の望楼」のフランス語は、滅茶苦茶発音を直されてヘトヘトになったとか云っていました。其れで完全なる新曲で歌っている「La courant de mecontentment (不満の暗流)」が一番の見どころではあったのですが、其れが結構カッコよくて、其れでも発売当時はヴィデオは高価だったので、何だかなあ、と云う感じでした。「カイエ」が発表された当時のター坊のライヴでは、アンコールで「メトロポリタン美術館」を歌っていたら歌詞が飛んでしまい、それまでミサの様に「シーン」としていた客席の人々が、一斉に手拍子して合唱し始めたなんて事もありました。

(小島イコ)

posted by 栗 at 21:00| ONDO | 更新情報をチェックする