オリジナル仕様の「EACH TIME」での「レイクサイド ストーリー」が「大エンディング・バージョン」となったのは、大瀧師匠が其れで音楽活動を休止する心算だったとか、松本隆さんとの再タッグを解消したからだとか、色々と意味があったと云われてはいますが、アルバムの最後に収録されていたオリジナル仕様ではやれても、以後の楽曲追加で曲順変更されたカタチでは最後の曲ではなくなったからの変更でしょう。1981年の「ロンバケ」ではっぴいえんど以来の再タッグとなったものの、次の「トライアングル2」と此の「EACH TIME」と続けてみて、お互いに煮詰まってしまったのでタッグ解消となるわけですが、其れを意識したのか松本さんの詞は「別れ」をテーマとしたモノが多くなり、尚且つ物語性が強くて長い詞となっていて、其れに準じて大瀧師匠による曲も長くなっています。「ロンバケ」や「トライアングル2」にはあった「リゾート感」みたいなモノはなくなり、ひたすら暗いテーマの楽曲が増えています。大瀧師匠も松本さんも当時は30代半ばだったので、年齢相応な楽曲なのですが、些か重いです。其の辺が「ロンバケ」程には売れなかった原因でしょう。更に、前述の通り、此のアルバムはリイシューされる度に内容が変わってしまったので、コレが決定盤!みたいな事にはならなかったのも要因のひとつでしょう。今回取り上げる「20周年記念盤」も、オリジナルとは大きく違った構成です。
「Complete EACH TIME」での全11曲を、1「夏のペーパーバック」、2「Bachelor Girl」、3「木の葉のスケッチ」、4「恋のナックルボール」、5「銀色のジェット」、6「1969年のドラッグレース」、7「ガラス壜の中の船」、8「ペパーミント・ブルー」、9「魔法の瞳」、10「レイクサイド ストーリー」、11「フィヨルドの少女」と並べ替えて、「魔法の瞳」はロング・ヴァージョンに、「夏のペーパーバック」も別ヴァージョンに変えられて、「レイクサイド ストーリー」も「大エンディング・バージョン」ではなくなって、更にはボーナストラックとして「Cider '83」と「恋のナックルボール (1st Recording Version)」と「マルチスコープ」の3曲が加えられている全14曲のお徳用盤ではあるのですが、何せオリジナルとは大きく変更されているので、「大エンディング・バージョン」ではないものの曲順がオリジナル通りで全9曲入りの選書盤も安いので宜しいのではないでしょうか。まあ、其の辺は来年(2024年)には確実に出るであろう「EACH TIME VOX」で何らかのカタチでまとめられるんでしょう。と申しますか、「レイクサイド ストーリー」の「大エンディング・バージョン」は、「NIAGARA CD BOOK II」に収録されたし、サブスクでも解禁されてはいるんですけどね。大瀧師匠は「メロディ路線もノベルティ路線も同じで、音楽は存在自体がコミカルだ」と云う結論に達したので、かなり重い松本さんの詞を感情を込めて歌ってはいますが、アレンジは滅茶苦茶に弾けていて、其の辺の謎解きは「30周年記念盤」の純カラオケ音源で明かされます。
(小島イコ)