かつてのバンド仲間であるタツローこと山下達郎さんが売れて、ブレイクした楽曲「RIDE ON TIME」と同じマクセルのカセットテープのCMに、ター坊こと大貫妙子さんと吉田美奈子さんとRAJIEさんの3人が楽曲提供ばかりかご本人が出演しました。其の時の楽曲が1981年10月21日にリリースされたシングル「黒のクレール」で、ソレをA面1曲目にして、シングルカットの「ピーターラビットとわたし」をA面3曲目にした6作目のアルバム「Cliché」が、1982年9月21日にRCA/RVCからリリースされました。シングル「黒のクレール」のB面は前作「AVENTURE」からの「アヴァンチュリエール」で、シングル「ピーターラビットとわたし」のB面は「Cliché」のB面1曲目の「光のカーニバル」です。此のアルバムはA面1曲目から4曲目まで(「黒のクレール」「色彩都市」「ピーターラビットとわたし」「LABYRINTH」)が教授こと坂本龍一さんのアレンジで、A面5曲目とB面5曲全て(「風の道」「光のカーニバル」「つむじかぜ」「憶ひ出」「夏色の服」「黒のクレール(reprise)」)がジャン・ムジーさんのアレンジで、フランスでレコーディングしています。「風の道」は、RAJIEさんへの提供曲のセルフカヴァーです。
後半がジャン・ムジーさんのアレンジなので、「romantique」と「AVENTURE」と合わせて「ヨーロピアン3部作」とも云われた作品ですが、個人的には前半の教授によるアレンジの4曲が重要です。まずもって、4曲共に教授がキーボードだけではなく、ドラムも叩いています。4曲共にギターを大村憲司さんが担当して、「黒のクレール」では細野晴臣さんがベースを弾いていて、「色彩都市」では浜口茂外也さんがパーカッションを叩いていますが、其れ以外は全て教授が演奏しているわけです。「色彩都市」と「ピーターラビットとわたし」を初めて聴いた時には、其のあまりにもポップな音に驚きましたし、此の4曲はター坊と教授の長く続く共同楽曲の中でも、ひとつの到達点だったと思います。「ピーターラビットとわたし」から始まった「可愛いもの路線」は、提供曲の作家としてのター坊にも繋がっていて、此の後には原田知世ちゃんへ楽曲提供(「地下鉄のザジ」「星空の円型劇場」「紅茶派」など)したり、安田成美ちゃんのアルバム「ジィンジャー」をプロデュースする事にもなるのでした。ちなみに、知世ちゃんも成美ちゃんも、お誕生日がター坊と同じ「11月28日」です。
(小島イコ)