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2023年03月06日

「ナイアガラ考」#44「FLAPPER」



1976年3月25日には「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」と同時に、吉田美奈子さんのアルバム「FLAPPER」がRCA/RVCから発売されました。大瀧詠一師匠の提供曲の中でも最重要作である「夢で逢えたら」のオリジナル歌唱ヴァージョンが収録されている事で有名ですが、バックはティン・パン・アレー(細野さん、茂、林さん、松任谷さん)で、コーラスはタツローとター坊と伊集加代子さんと美奈子で、ベーシックなリズムアレンジは多羅尾伴内(大瀧師匠の変名)でストリングスアレンジはタツローと、ティン・パン・アレー系とナイアガラ系の集大成とも云える超豪華絢爛な作品です。元々「夢で逢えたら」はアン・ルイスさん用に書かれてボツになった楽曲で、美奈子としては余り乗り気ではなかった様です。それでも作家の人選は美奈子が自らやったとの事で、大瀧師匠の「シャックリ・ママさん」のアンサーソングである「ケッペキにいさん」を自ら書いて収録しているので、其れほどには嫌だったわけでもないでしょう。美奈子は大瀧師匠のファーストアルバム「大瀧詠一」に収録されている「指切り」に参加しているので、大瀧師匠との付き合いはタツローよりも長いのです。「ナイアガラ音頭」と「夢で逢えたら」が同時に発表された1976年3月25日こそが、ナイアガラ記念日と云えます。

兎角「夢で逢えたら」ばかりがクローズアップされる事となったアルバムですが、細野さんが書いたトロピカル路線の「ラムはお好き?」や、アッコちゃんが書いた「かたおもい」、佐藤博さんが書いた「朝は君に」と「チョッカイ」、そして自作の「愛は彼方」と「ケッペキにいさん」と「忘れかけてた季節へ」と云った他の楽曲も素晴らしく、「夢で逢えたら」と「かたおもい」以外は詞も全て美奈子が書いています。そして最重要なのはラストの2曲で、美奈子とタツローによる「ラスト・ステップ」と「永遠に」です。SUGAR BABE時代に書かれた此の2曲は、解散後のタツローのファーストアルバム「CIRCUS TOWN」にも収録されているので、同じ曲で美奈子とタツローの両方のヴァージョンが聴けます。そして「NIAGARA TRIANGLE Vol.1」と「FLAPPER」で始まったタツローと美奈子の共作は、1982年の「FOR YOU」まで続いてゆく事となります。個人的にはSUGAR BABEからRCA/RVC、AIR/RVC時代のタツローが好きで、詞も圧倒的に美奈子が書いたものが好きなので、1982年のベスト盤「GREATEST HITS! OF TATSURO YAMASHITA」辺りまでです。別にタツローの詞がダメとは云っておりませんけれど、まあ、云っているのと同じかもしれません。

(小島イコ)

posted by 栗 at 21:00| ONDO | 更新情報をチェックする