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2023年03月02日

「ナイアガラ考」#40「僕は天使ぢゃないよ」



1975年には、大瀧詠一師匠はSUGAR BABEの「SONGS」をプロデュースして、2枚目のソロアルバム「NIAGARA MOON」も発売しました。同年には、かまやつひろしさんへ「お先にどうぞ」を、吉田美奈子さんへ「わたし」を、沢田研二さんへ「あの娘に御用心」をと、プロデュース作にも名曲が多いのですが、其の辺は後年に「EIICHI OHTAKI Song Book」に収録されたので、後に語ります。そんな中で、1975年12月5日にベルウッド(キング)から発売されたのがサントラ盤「僕は天使ぢゃないよ」で、あがた森魚さんと大瀧師匠の連名となっておりますが、インストゥルメンタルはティン・パン・アレーが担当していて、云ってみれば、はっぴいえんど、はつみつぱい、ティン・パン・アレーが参加しているオムニバス盤です。大瀧師匠の曲は、アルバム「大瀧詠一」からの「びんぼう」「それはぼくじゃないよ」「乱れ髪」の3曲が再収録されています。サントラ盤と云う事はあがた森魚さんが監督した同名の自主制作映画があるわけですが、大瀧師匠が役者としても登場しております。まあ、役名も「大滝」だったし、大昔にレンタルビデオで借りて観たのですけれど、チョイ役でした。

そもそも映画「僕は天使ぢゃないよ」は、ジャケットを担当している林静一さんが「ガロ」に連載したマンガ「赤色エレジー」が原作で、其れに影響されたあがたさんは同名の楽曲を発表してヒットしています。林さんははっぴいえんどの通称「ゆでめん」でもジャケットを担当していたので、此の辺のURCやベルウッド人脈とは繋がりがあったのでしょう。其れで「ガロ」の長井社長も社長役で出ていたりします。内容は四畳半で同棲しているアニメーターの一郎と恋人の幸子を描いた重苦しい物語で、一郎の情けなさが充満していますが、林さんのポップな画力で読ませます。マンガだと最後の方でモップスの「朝まで待てない」がバックに流れると云う、当時としては斬新な手法を使っています。前述の通り大瀧師匠の楽曲は既出音源ばかりですが、此のアルバムはティン・パン・アレーの隠れた名盤とも云えます。「赤色エレジー」が連載されたのは1970年から1971年で、此のアルバムが出た頃には、林さんはロッテの「小梅ちゃん」のアニメで有名になっておりました。「ガロ」を卒業すると売れると云うジンクスの、初期の例です。

(小島イコ)

posted by 栗 at 21:00| ONDO | 更新情報をチェックする