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2023年01月14日

「ナイアガラ考」#01「Best Always」



大瀧詠一師匠は、2013年12月30日に亡くなりました。そして、其の後には毎年と云ってもよい程に新作が発売されております。2014年3月21日に出た「EACH TIME」30周年記念盤が最初ですが、其れはリマスター作業などを師匠が自ら行って完了していたので、師匠が関わらなくなったのは2014年12月3日発売のベスト盤「Best Always」からです。出た当時はオールキャリアからの選曲で2枚組に初回盤のみボーナスで3枚目の純カラオケが付いていて、なかなか良い出来だと思ったものですが、其の後の暴走気味なリリースを考えると問題は既に此処から始まっていたと云えます。最大の問題は、マニア向けなのかライトなファン向けなのか初心者向けなのか、対象が全く分からない滅茶苦茶な選曲である事です。

そもそも師匠はありきたりなベスト盤を出す事を生前は拒んでいて、ライヴ音源やセルフカヴァーによる「DEBUT」や、曲の頭にインストを加えた「B-EACH TIME L-ONG」や、後半がインストの「SNOW TIME」と云った変則的な技を使った準ベスト盤しか発表していません。其処でコレなんですけれど、確かに多くのシングル・ヴァージョンを含むものの、まずもって統一したリマスターを師匠自らが行えないわけで、バラバラなのです。師匠は生前に「幸せな結末」を「EACH TIME」に組み入れようと試みて、音が違い過ぎて断念したと語っております。商品としても多くの一般的な方々は2枚目の「ロンバケ」以降しか知らないわけでして、1枚目を聴いて「何じゃこりゃ」と困惑してしまうでしょう。コレでも割と「ロンバケ」以降のメロディアス路線に近い選曲であるにも関わらずです。

シングル・ヴァージョンを多く含むとは云え、其の全てを収録したわけでもなく、はっぴいえんど時代の「12月の雨の日」なんか逆に浮きまくっていて、こんなんじゃ収録しない方が良かったとも思えてしまいます。最大の売りである「夢で逢えたら」の師匠自らが歌ったヴァージョンは感涙ものだったものの、此の後に延々と続いている「墓場荒らし」の発端となったわけで、兎も角、コレ以降の乱発されている師匠名義のアルバムの酷さは増してゆく一方なのです。ナイアガラについて書いてゆく上で何処から始めようか迷いましたが、師匠が亡くなってからとしようと思ったのは、悪口ばかりになるから先に書いてしまおうって事です。「ロンバケ」以降が好きならば、大人しくオリジナル盤だけ買えば良いわけで、「ロンバケ」こと「A LONG VACATION」と「NIAGARA TRIANGLE Vol.2」と「EACH TIME」の3枚しかないんですからね。「幸せな結末」も聴きたい方には「EIICHI OHTAKI Song Book I -大瀧詠一 作品集 Vol.1 (1980-1998)- 」がオススメです。

(小島イコ)

posted by 栗 at 18:07| ONDO | 更新情報をチェックする