
「今日は映画サービス日で、壱阡円で観れる」と云う噺を、僕は失念していました。僕は単純にともだちが「自分も観たいので一緒に行きませんか?」とのお誘いに乗った。
だって、そうじゃないか。僕は正々堂々と、
「きみにしか聞こえない」
は「素晴らしい映画だった」と宣伝したのだもの。そして、ひとりでも多くのひとに観て欲しいと心から願ったのだもの。
其れで、僕はふたたび「苦手な池袋」へ行きました。初日とは違う、約半分の150人弱しか入れない3番館に変わっていました。其れでも、サービス日で日曜日なので、立ち見も出る満員盛況。
上映前の予告も初日とは全く違っておりました。嬉しかったのは「L」の予告が観れたことです。高田清美さまが、バッチリ登場されていましたよ。ま、前作のカットを流用しただけなんだけど、此れから全く別の「原田リョウさん」に出逢う前振りとしては「素敵な演出」です。
さてさて、ふたたび観た「きみにしか聞こえない」に、あたくし、
「初見より、号泣してしまいました」
人それぞれ、モノの見方は違います。僕は、原作を読んでいたからこそ、初見で泣きました。結末まで分っていたからこそ、心に響いた。そして、今回は、映画を既に観てしまったからこそ、泣けて仕方無かった。
例えば「アノ手の動きが意味すること」を初見時には僕は知らず、其れが明かされる終盤でカラダが震えるほど衝撃を受けました。だから、もう、僕は全部分った気になっていた。けど、其れは間違っていました。其の意味を知っているからこそ、あの場面でのシンヤさんに心を撃たれた。
シンヤさんみたいなひとなんて、いない。けど、決して、彼は魔法を使ったんじゃない。ひとは、誰も彼になろうと思えば出来るんだよ。あんなにも純粋に生きるなんて出来ないかもしれない。でもね、あの心を失ったら、僕たちはひとじゃなくなっちゃうんだ。
僕は、泣いた。「きみはひとりじゃない」
僕が「片瀬那奈全記録」を書く理由は、正に其れなのだから。
(小島藺子/姫川未亜)