
Paul McCartney - 'New' Teaser #1(YouTube 9/4)
ポール・マッカートニー、新作『NEW』のティーザー映像を公開(RO69 9/4)
ドラマとしては壊滅的に「ダメ!ダメ!ダメダメダメ!」に乗せて♪だーめだーめだーめだめ♪と「丸出だめ夫」のテーマソングを捧げたくなる駄作「ショムニ 2013」ではございますが、片瀬那奈ちゃん演じる壇上さんだけは「底抜け脱線」に面白いから困ったもんですナァ。「ニセ変態仮面」は「ホンモノ」なので磐石の変態丸出し演技ですけど、もしかしたら未だ片瀬那奈ちゃんの事を単なる「きれいなおねえさん」とか「クールビューティー」とか勘違いしていらっしゃる方々には、衝撃的な姿かもしれません。おっと、ついつい「かたちん噺」を枕にしてしまいましたが、此の記事の本題はポールです。
「これは“バック・トゥ・ザ・ビートルズ・アルバム”なんだ」
そう堂々と予告した「サー・ポール・マッカートニーの覚悟」を感じます。其れは決して「過去の栄光を焼き直しますよ」なんぞと云う意味ではありません。そうであるなら「NEW」と云うタイトルを冠するわけがない。ポールは「自分がザ・ビートルズである事実」を、ようやく完全に認識したのです。ビートルズが解散して、最も苦しんだのはポールです。最後まで解散を阻止しようとしたのに、計らずも自分の脱退宣言で解散したと世間には思われました。ジョン、ジョージ、リンゴがソロになって伸び伸びと「ポール抜き」で評価されたのに、ポールだけボロクソに貶されました。ジョンにはケチョンケチョンに叩きのめされ、尻馬に乗ったジョージとリンゴにまで罵られ、ひとりぼっちのロンリーナイトを過ごしたのです。解散後の作品は、決してクオリティーが落ちたわけではなかったし、セールス的にも成功していたのに、「ビートルズの出来損ない」なんぞと過小評価されました。何故なら、ポールこそがビートルズの音楽的な要であり、「ポールの音楽」こそが「ビートルズの音楽」だからです。
意地っぱりのポールは敢えてビートルズを封印して荒削りな「一発録音」とか「ゲリラ・ライヴ」とかやったのだけど、そんな事をすれば「ビートルズ最高のメロディーメイカーも堕ちたもんだ」と云われ、アフリカで録音しようとすればメムバーに逃げられ、其れでも孤軍奮闘し(リンダとデニーの立場なんぞ、ポールの前では無きに等しい!)世間を認めさせ、WINGSで大成功!となるまで、解散から4年も掛かってしまったのだ。其の後も常に新たなる挑戦を続けながら、ファンが望むならとライヴではビートルズを多く演奏する様になりました。其れでも、やはり頑なに新作アルバムでは「時代の流行に迎合したかの様な姿勢」を崩さなかった。ポールとしては「自分は現役なのだ!」との自負があるのです。でもですね、ポールは時代の音楽を切り拓いたひとなのよさ。別に若造に合わせなくたって、やりたいようにやれば好いのです。だって、みんなポールを聴いて音楽を志したのではありませんか。新作も新鋭の有名プロデューサーを多く起用しているみたいですが「ビートルズに帰る」と云ったポールの決意は、新曲「NEW」だけでもビッシビシ!と伝わって来ます。「ポール・マッカートニー 71歳」、まだまだ現役バリバリです。
かつて「ザ・ビートルズは、世界最強の盗作集団さ!」と呆気羅漢とぬかしたポールは、確かに様々な音楽をパクリンコし捲くりました。でも、ビートルズ時代には、何もかもを「自分のリングに引きずり上げてしまった」のだよ。ロックンロールだろーが、ポップスだろーが、ミュージカルだろーが、民謡だろーが、モータウンだろーが、クラシックだろーが、ジャズだろーが、スカだろーが、カントリーだろーが、フォークだろーが、ゴスペルだろーが、前衛音楽だろーが、インド音楽だろーが、全てを飲み込んで、其れでも「ザ・ビートルズ」にしてしまったのです。アントニオ猪木が「異種格闘技戦」で勝ち続けたのは、常に相手を「プロレス」のリングに上げてしまったからです。後に総合格闘技でプロレスラーが惨敗を繰り返したのは、相手の土俵にホイホイと上がってしまったからなのよさ。ポールは、アノ頃の様に全てを自分の中へ包み込んでしまおうと決めたのでしょう。自分自身がやらかした開拓精神に、ようやく立ち返ったのです。「71歳にもなって、何をやらかしてんだ?もう充分過ぎるほどやったんだから隠居したら?」なんて苦言は、ポールには通じません。此の怪物は「ボクは、永遠に音楽を創り続けるよ。だって、他にやることないじゃん!」と云っておるのよさ。ハイハイハイ、もう、好きなだけやって下さい。
(小島藺子)