w & m:Phil Spector
録音:1962年1月1日(デッカ・オーディション)
1962年12月28日(スタークラブでの家庭用テープレコーダーによる実況録音)
1963年7月16日(1963年8月6日放送「Pop Go The Beatles」)
1977年4月8日発売 (「LIVE AT THE STAR-CLUB」) スタークラブ音源
1982年9月10日発売 (「THE COMPLETE SILVER BEATLES」) デッカ・オーディション音源
1994年11月30日発売 (「LIVE AT THE BBC」 disc1-24) アップル (1963年版)
デッカ・オーディションの五曲目は、フィル・スペクターが書いて彼が所属したテディ・ベアーズのデビュー・ヒットである「TO KNOW HIM IS TO LOVE HIM(会ったとたんに一目ぼれ)」のカヴァーで、ジョン・レノンが歌っています。デッカ・オーディションでの録音も前述の通り、かつては普通に公式盤で聴けました。1962年12月下旬に行われたハンブルグのスタークラブでのライヴ音源も劣悪な録音状態ですが公式盤で聴けます。そして、1963年8月6日に放送された音源が「LIVE AT THE BBC」で比較的良好な音質で聴けます。ビートルズとフィル・スペクターには浅からぬ因縁がありまして、其れは散々と書いて来ました。此の楽曲も、後にジョン・レノンが1973年の「ROCK'N'ROLL」のセッションでフィル・スペクターのプロデュースで再演しておりますが、色々とありまして未発表となります。然し、ジョンの死後の1986年に「MENLOVE AVE.」に収録されました。
楽曲は文句なしの名曲でありまして、多くのアーティストにカヴァーされています。でも、デッカ・オーディションでのジョン・レノンは「15曲」中でたったの「4曲」しか歌っておらず(ポールが「7曲」、ジョージが「4曲」)、本来の調子が全く発揮できていません。ジョンは初めてのオーディションに、ガチガチにあがっていたのでしょう。ポールもあがっていて、思いっ切り声が上ずっております。そしてジョージが最も落ち着いていて、好い感じで歌っているのです。其れは兎も角、ビートルズ時代にもライヴの定番曲としており、ソロになって本家であるフィル・スペクターと組んでレコーディングしたのですから、ジョンにとって大のお気に入りナムバーだったのでしょう。「ロケンロール一直線!」と思えるジョンが、こうした優しい楽曲も好んでいた事実が、後の作曲法にも現れています。
(小島藺子)
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