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2012年09月22日

FAB4-210:I'VE GOT A FEELING

Getback-1.jpg Encouraging Words フィル・スペクター 甦る伝説 増補改訂版


 w & m:LENNON / McCARTNEY

 P:ジョージ・マーティン('69-1/22、24、27、28、30、2/5、3/10、13)、フィル・スペクター('70-3/23)
 E:グリン・ジョンズ('69-1/22、24、27、28、30、2/5、3/10、13)、ピーター・ボーン('70-3/23)
 2E:ニール・リッチモンド('69-1/24)、アラン・パーソンズ('69-1/27、28、30、2/5)、
    ロジャー・フェリス('70-3/23)
 録音:1969年1月22日、
    1月24日(アルバム「GET BACK」に収録)、
    1月27日、
    1月28日、
    1月30日(アルバム「LET IT BE」に収録)
 STEREO MIX:1969年2月5日、3月10日、3月13日、
         1970年3月23日(1/30 のテイクより 1-6、1&2 を編集し 3、4&5&6 を編集し 4)
 
 1970年5月8日 アルバム発売 (「LET IT BE」 B-1)
 アップル(パーロフォン) PCS 7066(ステレオ)


アルバム「LET IT BE」B面一曲目を飾るのは、ジョン・レノンとポール・マッカートニーによる合作で正真正銘の「レノン・マッカートニー」作品である「I'VE GOT A FEELING」です。前半と中間部の「I'VE GOT A FEELING」をポールが書き、其の後でジョンが書いた「EVERYONE HAD A HARD YEAR」を繋いでいます。前述の通りジョンが書いた未発表曲「WATCHING RAINBOWS」の展開も流用されていると思えます。そして、それぞれ別に作り歌われたパートが実は対位法になっており、最後にポールとジョンが重ねて歌います。発売順だと此の楽曲が最後の「レノン・マッカートニー」新曲であり、此の展開は感動的すぎます。「THE GET BACK SESSIONS」ではリハーサルから演奏され、映画で観れるリハーサルではポールがジョンのギターに何度もダメ出しして、ジョンは勿論、ジョージとリンゴも嫌気がさしているのに、ポールだけノリノリで「Good Morning !」などと絶叫しています。

正式レコーディングとなり、ビリー・プレストンが加わってからも何度も録音され、幻のアルバム「GET BACK」には1969年1月24日のスタジオ・テイクが収録予定でした。然し、映画にはクライマックスの「ルーフトップ・コンサート」が使われたので、フィル・スペクターも1969年1月30日の最初のテイク(「ルーフトップ・コンサート」では二回演奏されました)を採用し、一切オーヴァー・ダビングは行っていません。スペクターは「ルーフトップ・コンサート」音源を多く採用しましたが、其れに関しては過剰なオーヴァー・ダビングなどやっていないのです。いや、もっとハッキリと云えば、アルバム「LET IT BE」に収録された全12曲でスペクターが新たにオーケストラなどを録音し加えたのは、「ACROSS THE UNIVERSE」「I ME MINE」、そして「THE LONG AND WINDING ROAD」の3曲のみなのですよ。

2003年の「LET IT BE...NAKED」には「ルーフトップ・コンサート」で二度演奏されたテイクを、複雑怪奇にひとつにまとめたリミックスが収録されました。えっと、どー考えたってフィル・スペクター版の方が「有りの侭のビートルズ!」ではありませんか。其れなのに、何ゆえ「フィル・スペクターによる過剰なオーヴァー・ダビング」なんぞと喧伝されるのでありましょうかしらん。其の理由は、「THE LONG AND WINDING ROAD」の項で語ります。「LET IT BE...NAKED」の制作には、ジョージ・マーティン、ポール・マッカートニー、リンゴ・スター(既にジョン・レノンとジョージ・ハリスンは他界していた)は一切関わっていないそうですが、彼らが許可しなければ公式発表などされないわけですから責任は十二分にあります。ポールなんか、ライヴのセットに「LET IT BE...NAKED」で自分が書いた曲(ジョンとの共作である此の「I'VE GOT A FEELING」も含む)を全曲加え、大いにプロモーションしやがりました。

其れは其れとして、「I'VE GOT A FEELING」はカッコイイ曲です。アルバム「LET IT BE」ではB面最初とおいしいポジションで、ドライヴ感のあるライヴ演奏が聴けます。リハーサル映像を観ると「どうなることやら」と不安になるものの、本番のライヴではビシッと決めるのがビートルズです。何より、ジョンとポールが対位法で歌を重ねる後半の展開にはゾクゾクします。「ビートルズ史上、最低最悪のセッション」と云われ四人の関係も険悪だった時でも、ジョンとポールはいざとなればバッチリと決めやがるのです。ポールは現在でも此の曲をライヴの定番として元気溌溂で披露しています。もういっその事、調子に乗って「Good Morning !」と叫んでも構いませんよ。今や、ビートルズをライヴで宣伝しえるのは、ポール・マッカートニーしか居ないのですからね。ん?リンゴも居るって?おいおい、リンゴはアルバム「LET IT BE」で一曲も歌ってないじゃん。公式213曲で歌ったのは、たったの11曲ですよっ。しかも其の中で有名な「YELLOW SUBMARINE」「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」を書いたのは、他ならぬポール・マッカートニーなのだよ。


(小島藺子)



posted by 栗 at 00:07| FAB4 | 更新情報をチェックする