w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:フィル・マクドナルド、ジェフ・エマリック(7/30)
2E:クリス・ブレア(7/2)、ジョン・カーランダー(7/30)
録音:1969年7月2日(take 1-3)
STEREO MIX:1969年7月30日(take 3 より 1)
1969年9月26日 アルバム発売 (「ABBEY ROAD」 B-11)
アップル(パーロフォン) PCS 7088(ステレオ)
ポール・マッカートニーがエリザベス女王に捧げた、たった23秒の「世紀のトンデモ楽曲」です。何せ「女王陛下は可愛いから、いつかモノにしてやる」なんぞと歌っているのです。録音はポールのアコースティック・ギター弾き語りで行われ、他の三人は参加していません。アルバム「ABBEY ROAD」B面メドレーは、当初「MEAN MR. MUSTARD」と「POLYTHENE PAM」の間に此の「HER MAJESTY」が入っていました。「MEAN MR. MUSTARD」に「マスタードが妹のパンに連れられて女王陛下を見に行く」との件があるので、三曲はストーリー的に繋がっています。然し、ラフ・ミックス段階でポールが「HER MAJESTY は余計だから、捨てちゃっていいよ」とジョン・カーランダーに伝え、カーランダーはカットします。でも、「ビートルズの音源は、どんなクズでも決して捨ててはならぬ!」と上司に云われていたので、メドレーの終わりに20秒ほどのブランクを入れて繋いでおいたのです。
其れを聴いたポールが「こりゃ、面白い」と思い、そのまんま正式盤の最終ミックスにも残されてしまったのでした。ゆえに、いきなりだナァと大音響で始まるのは「MEAN MR. MUSTARD」のエンディングで、最後が中途半端に途切れるのは元々は次の「POLYTHENE PAM」のイントロと同じコードで重なっていたからぶった切られてしまったからです。偶発的なアクシデントもビートルズは利用したと云われますが、実質的な最後のアルバムである「ABBEY ROAD」でまで、こんな悪戯をやらかしてしまったのだ。発売当初は曲名表記がなく、所謂ひとつの「シークレット・トラック」として収録されました。女王陛下を揶揄した内容ですから、大いに問題視されたものの、なな、なんと、ビートルズはバッキンガム宮殿に「ABBEY ROAD」を献上しやがりました。更に、ポールは2002年6月の「エリザベス女王戴冠50周年コンサート」で、女王が見守る前で此の曲を嬉々として歌いやがったのだ!ポールよ、日本で同じ事をやらかしたら「死刑!」ですよっ。
さて、元々はメドレーの一部だったとの話は有名で、「だったら最初のラフ・ミックスが聴いてみたい」と思うでしょう。それがですね、海賊盤で公開されております。本当に、バッチリと「MEAN MR. MUSTARD」と「POLYTHENE PAM」の間にピッタリと収まっています。が、然しだ、ポールはメドレーのラフ・ミックスに立ち会って、其の場でジョン・カーランダーに「HER MAJESTY は気に入らないから、切って捨てちゃって」と云ったわけですよ。其れで、カーランダーはテープを切っちゃったわけです。勿論、試聴盤が作られる前にマスター・テープを切ってしまったので、元々のラフ・ミックスは存在しないはずです。其れなのに、何ゆえ最初期のメドレー音源が海賊盤に収録されたのでしょう?答えは簡単で、勝手に捏造したのだ。さて、ビートルズの四人が揃って最後にレコーディングしたアルバム「ABBEY ROAD」が終わりました。ところが、ビートルズ物語はオマケの「HER MAJESTY」でも終わらないのです。
(小島藺子)
【関連する記事】