w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:フィル・マクドナルド、ジェフ・エマリック(7/30-8/19)
2E:クリス・ブレア(7/2-4)、ジョン・カーランダー(7/30-31)、アラン・パーソンズ(8/15-19)
録音:1969年7月2日(take 1-15)、
7月3日(take 13&15 を編集した take 13 に SI 「歌、ギター」、編集し take 16-17)、
7月4日(take 17 に SI)、
7月30日(take 17 に SI 「歌」)、
7月31日(take 17 に SI 「歌、ドラムス、ティンパニー」)、
8月15日(take 17 に SI 「オーケストラ」)
STEREO MIX:1969年7月30日(take 17 より 1)、8月18日(take 17 より 1-2)、8月19日(メドレー編集)
1969年9月26日 アルバム発売 (「ABBEY ROAD」 B-9)
アップル(パーロフォン) PCS 7088(ステレオ)
ポール・マッカートニーが書いた楽曲で、前曲「GOLDEN SLUMBERS」とは最初からメドレーとして録音されました。ゆえに、ジョン・レノンは参加していないと思われます。コーラスにジョンが参加したとの説もありますが、リンゴの声がやけに目立っていて聴き取れません。たぶん、ジョンは全く関わっていないのでしょう。「お前は、重荷を背負い続けるのだ!」と歌われる内容は、「ポールがジョンに向けて歌った(ヨーコに現をぬかして、ビートルズを蔑ろにしている事への恨み節)」とも、「ポールがエプスタインの死後にリーダーシップを取って、慣れないマネジメントなども背負い込み疲れ果てた事を歌った」とも云われています。どちらにせよ、余りハッピーな歌とは云えませんね。
中間部で「YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY」のメロディーがふたたび登場するので、どちらかと云えば、やはり「アップルの経営困難に直面したポールの辛い気持ち」を歌ったとも思われます。でも、ジョンは「アレは俺に向けて皮肉を云っているんだろ」と発言しています。映画「イマジン」でラリったヒッピーの青年がジョンの家にやって来て、あろうことか、ジョン本人が対応し説得する「トンデモ場面」があります。其の時に青年が「あなたは、Boy, you're gonna carry that weight と書いたよね?オレはアレを聴いて、、、」と云うと、ジョンはアッサリと「ん?アレはポールが書いたんだ。俺は書いてないぞ」と返し、青年が「ええっ。ポールが書いた?」と呆然となると、畳み掛ける様に「あんなのは、只の歌詞だ。俺が書いたのもポールが書いたのも、ビートルズの曲には深い意味なんてないんだ。只の歌だよ」と優しく諭すのです。挙句の果てに「腹へってないか?」と自宅へ招きいれて、一緒に食事して満足させて帰すのでした。
其の場面を初めて観た時に猛烈に感動しましたが、「ああ、ジョンはこんなにも無垢で無防備な人だから、イカレた野郎に撃ち殺されてしまったんだナァ」と、やりきれない気持ちになりました。天下無敵のビートルズのリーダーともあろう御方が、わざわざ一寸いっちゃったファンと向き合って真摯に話す必要などないのです。ガードマンに追っ払ってもらえば済む事なのです。でも、ジョン・レノンは自分で対応しちゃうのだ。彼は、自分の曲を聴いて影響を受けたと云うファンに対して責任を持っていました。それこそ「重荷を背負って」生きていたのでしょう。「CARRY THAT WEIGHT」は、ジョージ・マーティンが指揮するオーケストラも加わって盛り上がり、いよいよ最後の「THE END」へと繋がります。ビートルズの終焉が近づいてまいりました。
ところで、アルバム「ABBEY ROAD」が発売されて、所謂ひとつの「ポール死亡説」が語られるようになります。ジャケットで、ポールが裸足で、左利きなのに右手で煙草を持っているとか、停車しているワーゲンのナムバーが「28 IF」(実際には「281F」だし、ポールは「28歳」ではなく「27歳」ですけど)とか、「COME TOGETHER」で「One and one and one is three」と歌っているからとか、色々と云われ、過去の曲やジャケットなどにも多くのヒントがあったとされました。それで、「ポール・マッカートニーは、1966年に交通事故で死んでおり、ビートルズは替え玉を用意してポールを演じさせて来た」なんぞと云われたのです。えっと、だったら、アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEART'S CLUB BAND」以後は替え玉だったわけでしょ?おいおい、いよいよポールの脂が乗って来た時期からじゃん。此のアルバム「ABBEY ROAD」B面メドレーを仕切った輩も、ポールのニセモノなのですか?そんなスゴイ奴だったら、もうニセモノじゃないじゃん。
(小島藺子)
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