

w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ジェフ・エマリック、フィル・マクドナルド
2E:ジョン・カーランダー(7/24-30)、アラン・パーソンズ(8/14-21)
録音:1969年7月24日(「Here Comes The Sun-king」 take 1-35)、
7月25日(take 35 に SI 「歌、ピアノ、オルガン」)
STEREO MIX:1969年7月30日(take 35 より 1)、8月14日(take 35 より 20-24、メドレー編集)、
8月21日(メドレー再編集)
1969年9月26日 アルバム発売 (「ABBEY ROAD」 B-4)
アップル(パーロフォン) PCS 7088(ステレオ)
ジョン・レノンが書いた楽曲で、当初は「HERE COMES THE SUN-KING」と呼ばれていて、B面一曲目のジョージ・ハリスン作「HERE COMES THE SUN」と混同させますが、関連性は全くありません。フリートウッド・マックの「Albatross」に影響されてジョンが書いたと云われ、確かに雰囲気がよく似ています。A面最後の「I WANT YOU(SHE'S SO HEAVY)」も「Black Magic Woman」からの影響が感じられますので、ジョンはピーター・グリーン時代のフリートウッド・マックがお気に入りだったのでしょう。ゆったりとして穏やかな楽曲ですけど、歌詞は後半が出鱈目なスペイン語とイタリア語が混じっていて意味不明です。此の頃のジョンはラリラリパッパラパーでしたから、意味なんてないのでしょう。
アルバム「ABBEY ROAD」の片面をメドレーにする事は、1969年7月1日に録音が再開された時点では決定していたようで、此の「SUN KING」と次の「MEAN MR. MUSTARD」は最初からメドレーとして録音されています。演奏は、ジョン(ギター、マラカス)、ポール(ベース)、ジョージ(ギター)、リンゴ(ドラムス、ボンゴ)のビートルズ四人に鍵盤でジョージ・マーティンが加わった、初期から御馴染みの布陣です。ジョンのリード・ヴォーカルにポールとジョージがコーラスをつけるのも、デビュー当時からの定番スタイルでありまして、恰も過去の自分たちを模倣するかの様な展開が此の後のメドレーでも顔を出します。
「THE GET BACK SESSIONS」とは違ったカタチで、ビートルズは過去の総決算を「ABBEY ROAD」で試みていたのかもしれません。デビュー当時に戻ろうとした「THE GET BACK SESSIONS」は頓挫します。ビートルズがメジャー・デビューした1962年から経た7年間は、目まぐるしい変化の足跡でした。ビートルズは原点回帰するのではなく、其の歴史の全てを飲み込んで「ビートルズを演じる」事で決着をつけようとしたのでしょう。此の曲のセッション中には、ジーン・ヴィンセントの「Ain't She Sweet」も演奏されジョンが歌っておりますが、其れはビートルズがトニー・シェリダンのバック・バンドとして初めて正式にレコーディングした際(1961年5月)に、シェリダンの計らいでビートルズのみで演奏されジョンが歌った曲でした。現在では、どちらも「アンソロジー1&3」で聴けます。20歳の荒々しく瑞々しい歌声と、28歳となった余裕の鼻歌の違いは、時の流れの残酷さを感じさせます。
(小島藺子)
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