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2012年09月04日

FAB4-192:BECAUSE

Music Garden How Late Do U Have 2B B4 UR Absent 電子音楽の世界(紙ジャケット仕様)


 w & m:LENNON / McCARTNEY

 P:ジョージ・マーティン
 E:フィル・マクドナルド、ジェフ・エマリック
 2E:ジョー・カーランダー
 録音:1969年8月1日(take 1-23、take 16 に SI 「コーラス」)、
    8月4日(take 16 に SI 「コーラス」)、
    8月5日(take 16 に SI 「モーグ・シンセサイザー」)
 STEREO MIX:1969年8月(take 16 より、詳細不明)

 1969年9月26日 アルバム発売 (「ABBEY ROAD」 B-2)
 アップル(パーロフォン) PCS 7088(ステレオ)


ジョン・レノンが書いた美しい楽曲で、ポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンも絶賛している名曲です。ヨーコがピアノでベートーヴェンの「月光」を弾いていた時に、ジョンが譜面をさかさまにしたら、ヨーコも面白がって逆進行で弾いて、其の旋律にピキ〜ン!と着想を得て書かれたと云われております。此の辺の捻りが、ジョン・レノンにはあってポール・マッカートニーにはないんですよね。ポールは普通に「モロパク」しちゃいますから。レコーディングはベーシック・トラックを、ジョン(ギター)、ポール(ベース)、ジョージ・マーティン(ハープシコード)、そしてリンゴがハイハットでリズムを刻んで行われました。でも、リンゴの演奏は録音されず、マーティンは「リンゴは私たちの、ドラム・マシンだったのです」とトンデモ発言をかましております。嗚呼、哀れなり、リンゴ・スター。

ベスト・テイクとなった「take 16」に、ジョン、ポール、ジョージの三人がそれぞれ三回、合計で九声によるハーモニーをつけました。初期から御馴染みの三人による美しいコーラスを、クラシック畑のマーティンがガッツリと指導しキメております。「アンソロジー3」などでアカペラ・ヴァージョンが聴けますが、其れはヴォーカル・トラックのみを抜き出したものでテイク違いではありません。そして、間奏にジョージ・ハリスンがビートルズ史上初となるモーグ・シンセサイザーを加えて完成しました。つまり、音源的には此の楽曲にリンゴ・スターは参加していない事となりました。デビュー・シングルでもハブにされ、ラスト・アルバムでポールとジョージが「アルバムのベスト・トラックだ!」と語る楽曲でも蚊帳の外とは、嗚呼、リンゴ・スターが余りにも不憫だっ。

ジョージ・マーティンはアルバム「ABBEY ROAD」に関して「A面はジョンの趣味でストレートなロックにして、B面はポールと私で交響曲的に仕上げた」と、かなり大雑把に語っております。確かにA面の最初と最後はジョンの曲ですが、ポールも二曲、ジョージとリンゴも一曲ずつ提供しています。B面も最初はジョージの曲で、次がジョンの此の楽曲で、其の後のメドレーはレノン・マッカートニーの、そしてビートルズの四人による総決算とも云うべき展開となります。メドレーに雪崩れ込む前の二曲が、ジョージの爽やかな傑作で始まり、続く「BECAUSE」はジョンが書いたものの、ジョン、ポール、ジョージの三人が重ねたコーラスが主役です。明らかに、ビートルズは「此れが最後のアルバムになるかもしれない」と覚悟してレコーディングに臨んでいたのでしょう。

アルバム「ABBEY ROAD」のB面は、まるでビートルズの歴史を自ら振り返った様な構成と感じられます。前述の通り、メドレーは既にB面の一曲目から始まっていました。「HERE COMES THE SUN」の軽快な響きから、哀愁が漂う「BECAUSE」をクオリーメンからの盟友三人が歌い、いよいよビートルズの最後がやって来ます。彼らは、自分たちがやって来た輝かしいビートルズの足跡を「THE GET BACK SESSIONS」で終わりにしたくはなかった。どうしても、最後にもう一度「天下のザ・ビートルズ、此処にあり!」と満天下に示したかった。いや、自らのプライドを賭けて、過去の自らの栄光の全てに挑戦したのです。何故なら、彼らはビートルズだからなのだ。他の誰でもなく、此の連中がビートルズを作ったからこそ、常に己を超えなければならなかった。此処から始まるメドレーは、天下無敵のビートルズが己自身と闘い、壮絶に自爆する最終決戦です。


(小島藺子)



posted by 栗 at 00:07| FAB4 | 更新情報をチェックする