w & m:STARKEY
P:クリス・トーマス(4/26-29)、ザ・ビートルズ(4/26)、ジョージ・マーティン(7/17-18)
E:ジェフ・ジャラット(4/26-29)、フィル・マクドナルド(7/17-18)
2E:リチャード・ランガム(4/26)、ニック・ウェブ(4/29)、アラン・パーソンズ(7/17-18)
録音:1969年4月26日(take 1-32)、
4月29日(take 32 に SI 「歌」)、
7月17日(take 32 に SI 「コーラス、ピアノ、効果音」)、
7月18日(take 32 に SI 「歌、打楽器」)
MONO MIX:1969年7月18日(take 32 よりラフ・モノ・ミックス 1-7)
STEREO MIX:1969年4月26日(take 32 より 1-4)、7月18日(take 32 より 10-14)
1969年9月26日 アルバム発売 (「ABBEY ROAD」 A-5)
アップル(パーロフォン) PCS 7088(ステレオ)
リンゴ・スターが単独名義で作者としてクレジットされたビートルズ作品で、其れは「ホワイト・アルバム」に収録された「DON'T PASS ME BY」と此の「OCTOPUS'S GARDEN」のたった二曲しかありません。「DON'T PASS ME BY」を作曲するのに四年も掛かったリンゴが、僅か半年後には其れなりの名曲を書けてしまったのにはカラクリがあります。元々、此の曲の発想は「ホワイト・アルバム」録音中にリンゴが脱退してブラブラしていた時(1968年8月下旬)に得たらしく、例によって単純なコード進行で雛型を作り、1969年1月の「THE GET BACK SESSIONS」でリハーサルが行われています。そして、其の様子は映画「LET IT BE」で観ることが出来るのです。リンゴがたどたどしくピアノを弾きながら歌うと、アコースティック・ギターでジョージ・ハリスンが合わせコーラスも付けます。そして、思いっ切りジョージが作曲を手伝っているのだ!よーするに、此の曲はリンゴとジョージの共作なのです。いや、曲はほとんどジョージが書いたと云っても過言ではありません。
ダンダンダンとカタチが出来たところに、ジョンがヨーコと共に現れ、煙草にをふかしながらジョンがドラムスを担当!三人による楽しげな演奏が展開されていると、ポール・マッカートニーが登場し、場の雰囲気が凍りつきます。其処でポールが「酷い演奏だ!」と言い放つわけですが、其れは編集で演出されたもので、ポールは「前日の演奏のプレイバックを聴いてどう思った?」と訊かれて「酷い演奏だった。マシだったのは、「GET BACK」くらいだね」と応えたのです。でも、映画の編集だと恰もポールは他の三人による演奏を酷評したとしか思えないのです。他にも、有名なポールとジョージの口論のシーンで、映画ではジョンが仲裁しているように編集されていますが、実際にはジョンが一旦収まりかけた口論を蒸し返すように、原因となった「TWO OF US」を「もういっかい演奏しようぜ!」と言い放つのでした。
兎も角、此の時期のビートルズの関係は冷え切った状態でした。然し、此の曲が正式レコーディングされた1969年4月26日のセッションは、ビートルズの四人で実に仲良く楽しげに行われています。オーヴァーダビングされる前の其の日のテイク(take 2)は「アンソロジー3」で聴けますが、既にアレンジがしっかりと出来上がっています。作者のリンゴもノリノリで、実質的には共作者であるジョージも演奏面でも大活躍しています。効果音を多用したアレンジは、リンゴが歌った代表曲「YELLOW SUBMARINE」を思い出させる演出です。全体的に重いムードのアルバム「ABBEY ROAD」の中では、和やかで楽しい楽曲となっています。然し、詩の内容は「オラ、海のタコさんたちのお庭に行ってのんびりしたいだ」と云う「現実逃避願望」を歌っており、当時の最悪だったビートルズから逃げ出したいリンゴの心境を表しています。
尚、此の曲は、1969年12月2日に「ベース、ピアノ、リード・ギター」を除いた新たなステレオ・ミックスが作られました。12月8日にリンゴの新たなリード・ヴォーカルと外部ミュージシャンによる「ベース、ピアノ、リード・ギター」を録音し、ミックスします。其れは、12月24日に放送されたジョージ・マーティンが主役の特番「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」にリンゴが出演し、此の曲を歌う為に作られたものです。英国ではテレビでの擬似演奏が禁じられていたので、実際に出演する外部ミュージャシャンの演奏に差し替えたわけです。てか、其れでも「クチパク」で「マイム演奏」じゃまいか。
(小島藺子)
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