w & m:HARRISON
P:ジョージ・マーティン
E:ジェフ・エマリック
2E:リチャード・ラッシュ('67-2/13-4/21)、グレアム・カークビー('68-10/29)
録音:1967年2月13日(「Not Known」take 1-9)、
2月14日(take 3 を編集し take 10-12、take 12 に SI 「歌」)、
4月20日(take 3 に SI 「ベース、トランペット、グロッケン」、take 11 に SI 「歌」)
MONO MIX:1967年2月14日(take 12 より 1-3)、4月19日(take 12 より 4)、
4月21日(take 3 & 11 より 1-11)
STEREO MIX:1968年10月29日(モノ・ミックス 6 より 1、擬似ステレオ)
初出:1969年1月13日 アルバム発売 (「YELLOW SUBMARINE」 A-2)
アップル(キャピトル) SW 153(ステレオ)
1969年1月17日 英国アルバム発売 (「YELLOW SUBMARINE」 A-2)
アップル(パーロフォン) PMC 7070(モノ)、PCS 7070(ステレオ)
ビートルズ後期のアルバムは、録音時期と発表時期が異なっており混沌としております。簡単に云えば、録音順だと、「YELLOW SUBMARINE」→「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」→「LET IT BE」→「ABBEY ROAD」なのですが、発表順だと、「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」→「YELLOW SUBMARINE」→「ABBEY ROAD」→「LET IT BE」となります。アルバム「YELLOW SUBMARINE」は同名アニメ映画のサウンドトラック盤として、1969年1月に発表されますが、映画の公開は1968年6月でした。ビートルズのオリジナル・アルバムとされているものの、アナログ盤ではA面の6曲のみがビートルズの楽曲で、新曲はたったの四曲しか収録されていません。B面は、ジョージ・マーティンによるスコアです。マーティンは、わざわざレコード用に録音し直しておりますので、映画で使われた音源ではありません。そして、ビートルズの新曲も、1967年2月から1968年2月に録音されたものでした。ビートルズは「ホワイト・アルバム」の録音や発表を優先させ、アニメのサントラ盤なんか眼中になかったのです。
「ONLY A NORTHERN SONG」はジョージ・ハリスンが書いた楽曲で、元々はアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEART'S CLUB BAND」のセッションで録音された曲です。結局、ジョージの作品は完全なるソロと云える「WITHIN YOU WITHOUT YOU」が選ばれ、「ONLY A NORTHERN SONG」はボツとなります。然し、ビートルズはアニメ映画の契約も済ませていた為に「出来の悪い曲は、アニメに回そうぜ」となり、完成から二年近く経ってようやくレコード化されました。内容は、ビートルズの楽曲を管理する音楽出版社「Northern Songs」を皮肉ったものです。ブライアン・エプスタインとディック・ジェイムズが作った会社で、ジョン・レノンとポール・マッカートニーはチャッカリと株主になっていましたが、ジョージ・ハリスンは単なる専属ライター扱いだったのです。ゆえに、ジョージは自分の楽曲出版権を持つ「Harrisongs」を立ち上げ、「ホワイト・アルバム」以降の楽曲は自己管理します。アルバム「YELLOW SUBMARINE」に収録されたジョージ作品の「ONLY A NORTHERN SONG」と「IT'S ALL TOO MUCH」は共に1967年の楽曲なので「Northern Songs」管理となっているのでした。
演奏は、ジョージ・ハリスン(ヴォーカル、オルガン、効果音、ノイズ)、ジョン・レノン(ピアノ、グロッケン、効果音、ノイズ)、ポール・マッカートニー(ベース、コーラス、トランペット、効果音、ノイズ)、リンゴ・スター(ドラムス)、のビートルズの四人で行われ、如何にも1967年のビートルズらしいサイケデリックな音に仕上がっています。其れでも、ビートルズはジョージしか参加していない「WITHIN YOU WITHOUT YOU」を選んだのでした。「ボツ曲を回せばええべ」と舐めていたアルバム「YELLOW SUBMARINE」の新曲である四曲中半分の二曲がジョージ作品と云うトコに、当時のジョージの立場があからさまに出ております。二曲とも、名曲なんだけどナァ。ビートルズは流石に新曲が四曲だけではイカン!と思い、更にいくら映画で使われているからと云って「二度売り」もしたくない(「YELLOW SUBMARINE」と「ALL YOU NEED IS LOVE(愛こそはすべて)」は、テーマ曲だから外せなかった)ので、コンパクト盤での発売も検討し、「ACROSS THE UNIVERSE」を加えた五曲で出す案もあったそうです。
此の「ONLY A NORTHERN SONG」は、モノラル・ミックスの際に二つのテイクをシンクロさせて完成させた為にステレオ・ミックスを作る事が出来ませんでした。ところがアルバム「YELLOW SUBMARINE」はステレオのみの発売となり擬似ステレオが作られます。英国でのモノラル盤は「擬似ステレオをモノラル化した音源」で、リアル・モノラルは、なな、なんと2009年の「MONO-BOX」まで発表されません。リアル・ステレオはそもそも存在しませんが、1999年のリミックス盤「YELLOW SUBMARINE SOUNDTRACK」でステレオ化されています。映画に使われた楽曲をリミックスして発表したアルバムは賛否両論で、個人的には「ピーター・コビンはイラネ!」と大批判する立場です。シンクロ・ミックスされる前の「take 12」はステレオで「アンソロジー2」に収録されていますが、完成版とはジョージのヴォーカルが違いますし効果音などもダビングされていません。オルガン(ジョージ)、ベース(ポール)、ドラムス(リンゴ)のみの演奏で、なかなか味わいがあります。こーゆーベーシック・トラックを聴くと、ポールとリンゴのリズム隊の凄さがよく分かりますね。
(小島藺子)
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