w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ケン・スコット
2E:ジョン・スミス
録音:1968年10月13日(take 1-3)
MONO MIX:1968年9月26日(take 3 より 1)
STEREO MIX:1968年10月13日(take 3 より 1)
1968年11月22日 (「THE BEATLES」 B-9)
アップル(パーロフォン) PMC 7067-7068(モノ)、PCS 7067-7068(ステレオ)
ジョン・レノンがインドで書いた曲のひとつで、録音はジョンがドノヴァンに習ったスリー・フィンガーによるアコースティック・ギターの弾き語りを二回重ねただけでのシンプルなカタチで完成されました。つまり、此の楽曲にはジョン・レノンしか参加しておらず、彼のソロ作品と云えます。そして、ジョンがビートルズ時代に完全なるソロ作品を発表したのは、此の「JULIA」だけです。但し「アンソロジー3」で聴ける通り、レコーディングにはポール・マッカートニーが立ち会っていました。覚えたてのスリー・フィンガー奏法を上手く弾けずにいるジョンに、コントロール・ルームから見守るポールが励まし、其れに応えるジョン。何だかんだ云っても、ジョンとポールには他人が入り込めない特別な絆があると思わされる、感動的な光景が目に浮かびます。
「ジュリア」とは、ジョンの母親の名前です。ジョンが生まれた時に、父親のフレッドは船乗りで不在で、ジュリアも他の男性と同棲していたので、ジョンはジュリアの姉のミミにあずけられました。5歳の時に帰国した父親と数週間暮らすものの、ジュリアが取り戻しますが自分で育てる事は出来ず、ふたたびミミにあずけます。しかし、15歳になったジョンはジュリアがすぐ近くに住んでいると知り、交流が始まります。エルヴィスが好きなジュリアはジョンにギターを買い与え、ジョンはジュリアが得意なバンジョーのコードでギターを学んだのです。ところが、ジョンが17歳の時にジュリアは非番の警官が運転する車に轢かれて亡くなってしまいます。幼い頃に母と別れ、再会して良好な関係を築いた時に母を失ってしまった残酷な出来事は、ジョンに余りにも大きなダメージを与えました。
然し乍ら、此の楽曲で歌われているのは「Ocean Child」こと「小野洋子さん」です。ジョンは、亡くなるまでヨーコを「ママ」と呼んでいました。亡き母親にヨーコを重ねていた部分もあったのでしょう。「ホワイト・アルバム」で最後に録音された楽曲でありまして、「ドサクサ紛れにヨーコに捧げる歌を録音して捻じ込んだ」なんぞと意味不明な戯言をぬかす輩もおりますが、だったら此の前に入っている「I WILL」はどーなのよさ?アレも「ポールがリンダに捧げた曲」ではありませんか。てゆーか、ポールも14歳の時に母親メアリーを癌で失っておりまして、リンダを「ママ」と呼んでおりました。よーするに、レノマカは「真性マザコン・コムビ」なのだ。詩に関しては、ハリール・ジブラーンからの引用や影響があります。でもですね、そんな曲が書かれた背景は別にしても、「JULIA」は限りなく美しいのです。
ジョン・レノンがビートルズ時代に唯一ソロ・レコーディングしたと云う事実は、其れだけ此の楽曲に対する思い入れの深さを感じさせます。1970年に発表されたビートルズ解散後では初のソロ・アルバム「ジョンの魂」には曲調もアレンジも「JULIA」とソックリな「LOOK AT ME」が収録されていますが、「DEAR PRUDENCE」の項で述べた通り「ホワイト・アルバム」の頃に書かれた楽曲です。そして、「ジョンの魂」の冒頭を飾る「MOTHER」と最後の「MY MAMMY'S DEAD」に象徴される様に、其処に貫かれたテーマは明白でしょう。ジョンが初めて、たった一人で「JULIA」を録音した時に、もう「ジョンの魂」は始まっていました。レコーディングに立ち会ったポールが、其れに気付かないわけがありません。そして、ポールが出した答えは「THE GET BACK SESSIONS」でした。
(小島藺子)
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