w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:バリー・シェフィールド
2E:不明
録音:1968年10月4日(take 1)、
1968年10月5日(take 1 に SI 「ベース、ギター」)
MONO MIX:1968年10月5日(take 1 より 1)
STEREO MIX:1968年10月5日(take 1 より 1)
1968年11月22日 アルバム発売 (「THE BEATLES」 B-1)
アップル(パーロフォン) PMC 7067-7068(モノ)、PCS 7067-7068(ステレオ)
ポール・マッカートニーが書いた楽曲で、ジョージ・マーティンがスコアを書いたブラスとストリングス以外は全てポールが担当した完全なるソロ作品です。原題が「THE BEATLES」である「ホワイト・アルバム」B面一曲目と云う重要なポジションに、ポールしか参加していない曲を配すのが大胆不敵です。ちなみに、B面の最後はジョン・レノンのソロ作品「JULIA」で終わります。「マーサ」とは、ポールの愛犬の名前であり、ポールは後に特大名曲「JET」も書きますが、其の「ジェット」も愛犬の名前です。どちらも歌詞では女の子の名前になっていますが、タイトルは愛犬にちなんでつけたのでしょう。「MARTHA MY DEAR」の内容は、ポールが別れた婚約者であるジェーン・アッシャーに宛てたものと云われています。
ポールは、婚約者の美人女優ジェーン・アッシャーの実家に「マスオさん」状態で同居していました。「WE CAN WORK IT OUT」、「YOU WON'T SEE ME」、「HERE, THERE AND EVERYWHERE」、「FOR NO ONE」など、ジェーンに宛てて書いた名曲は他にもあります。義理の兄となる予定だったピーター・アッシャーが組んでいた「ピーター&ゴードン」には「A WORLD WITHOUT LOVE(愛なき世界)」、「NOBODY I KNOW」、「I DON'T WANT TO SEE YOU AGAIN」、「WOMAN」と名曲を提供し、ピーターをアップルに雇います。然し!何ゆえジェーンと婚約破棄してしまったのかと云いますとですね、アメリカで映画の撮影を終えて帰国したジェーンが自宅のベッド・ルームに行ったら、なな、なんと、ポールが女の子を連れ込んで裸で抱き合っていたからなのだ!おいおい、ポール「ANOTHER GIRL」そのまんまの事をやらかしてんじゃねーよっ。
完全にポールが悪いわけですが、ジェーンに婚約破棄された腹いせとばかりに、ポールはピーター・アッシャーをアップルで閑職に追いやってしまうのでした。非道過ぎるぞ、ポール・マッカートニー!ピーターはアップルを辞めアメリカに渡り、「アップル時代から担当していたジェームス・テイラー」や「リンダ・ロンシュタット」などのプロデューサーとなって大成功します。ポールがジェーンに婚約破棄されてから一年も経たずにリンダと結婚した事が、ピーターは兄として許せなかったのでしょうけど、うっかり別のリンダをアメリカで見つけてしまいます。人生、どう転ぶか分からないもんですね。そんな極悪非道なポール・マッカートニーですが、書いた楽曲は美しいのです。此の「MARTHA MY DEAR」も、文句なしの名曲です。そして、ジョージ・マーティンとの相性も抜群です。やはり、マーティンはこうしたシンフォニックな路線が気に入っているわけで、其れが翌年の「ABBEY ROAD」で炸裂します。「ホワイト・アルバム」から「THE GET BACK SESSIONS」でマーティンのやる気がないのは、明らかに自分が望んでいた路線から外れ捲くってしまったビートルズに呆れたからでしょう。
データでお分かりの通り、此の楽曲はたったの「ワン・テイク」で完成されています。ポールのワンマン・レコーディングですから「8トラック」を存分に使ってオーヴァー・ダビングされてはいますが、一回しか演奏していないのです。そして、ブラスとストリングスもレコーディング初日(10/4)に録音されているのです。つまり、ジョージ・マーティンは事前にポールから此の曲のデモを受け取り、しっかりとスコアを書いて臨んだわけですよ。ポールのソロなのに、マーティン「チカラ入れ捲くり」じゃん。ビートルズは譜面が書けませんから、管弦楽アレンジはマーティンに丸投げでした。マーティンも望むところでありまして、だからこそ「SHE'S LEAVING HOME」でポールの我侭でスコアを書かせてもらえなかった事(おいおい、やっぱりポールが悪いじゃん!)も、何十年経っても愚痴っております。「またポールの我侭で、此の私が外されたら堪ったもんじゃない!」とばかりに、張り切ったのかもしれませんね。
(小島藺子)
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