

w & m:LENNON / McCARTNEY
P:クリス・トーマス(9/11-26)、ジョージ・マーティン(10/10)
E:ケン・スコット
2E:ジョン・スミス(9/11-13、10/10)、マイク・シーディ(9/16、26)
録音:1968年9月11日(take 1-34)、
9月12日(take 33 に SI 「歌、タンバリン」)、
9月13日(take 33 に SI 「ドラム、ピアノ」)、
9月16日(take 33 に SI 「リコーダー」)、
9月26日(効果音)、
10月10日(take 33 に SI 「ストリングス」)
MONO MIX:1968年9月26日(take 33 より 1-2)、10月10日(take 33 より 10-11)
STEREO MIX:1968年10月10日(take 33 より 1-2)
1968年11月22日 アルバム発売 (「THE BEATLES」 A-3)
アップル(パーロフォン) PMC 7067-7068(モノ)、PCS 7067-7068(ステレオ)
ジョン・レノンが書いた楽曲で、歌詞に「STRAWBERRY FIELDS FOREVER」、「I AM THE WALRUS」、「LADY MADONNA」、「THE FOOL ON THE HILL」、「FIXING A HOLE」、などのビートルズ・ナムバーを歌い込んでいます。「THE FOOL ON THE HILL」が歌われるところには、ポールがリコーダーを吹いて盛り上げます。「The Walrus was Paul」と云うフレーズが「ポール死亡説」の根拠のひとつとなりますが、実際にセイウチの着ぐるみを着ていたのはジョンでした。ジョンは「ポールへの感謝の意味で、そう歌った」と云っております。「セイウチと俺の噺は前にしたよな。セイウチとは今でも仲良しだ。ヒントをやろう。セイウチはポールだ」ってなわけです。リンゴ・スターが戻って来てからの録音で、イントロもリンゴのドラムで始まります。「ホワイト・アルバム」の三曲目でようやくリンゴがドラムを叩いた曲となるのですが、正に「リンゴ復活!」を思わせる此の曲を配置したのが絶妙です。演奏はビートルズの四人で行われ、ポールが弾くリッケンバッカー・ベースがカッコイイ!ジョンによるアコースティック・ギター中心のデモ音源と比べると、ポールとリンゴのリズム隊による「アレンジの妙」が味わえます。
さて、リンゴは戻って来ましたが、ジェフ・エマリックは7月16日の「CRY BABY CRY」のセッションでビートルズの険悪な状況に耐えかねスタジオを出てしまい、約一年後の「ABBEY ROAD」セッションまで戻って来ません。そして、なな、なんと、ジョージ・マーティンまでプロデュースを放棄して休暇を取ってしまうのでした。代わりにプロデューサーの役目に就かされたのは、当時若干21歳のクリス・トーマスです。後にロキシー・ミュージックやセックス・ピストルズなどのプロデューサーとして名を上げる彼ですが、此の当時は新人で本人曰く「エンジニアはジェフ・エマリックやケン・スコットの仕事だし、マーティンが休暇中にはビートルズが自分たちでプロデュースもやっていたから、僕はただ居ただけ。なのに、ジョンがアルバムに僕の名前も載せようと云ったのさ」との事です。ジェフ・エマリックは、クリス・トーマスを嫌っていて自書でもボロクソに貶し捲くっているのですけど、出逢ったのが「ホワイト・アルバム」の時期だったのも影響しているのかもしれません。
初日(9/11)に、ジョン(アコースティック・ギター)、ポール(ベース)、ジョージ(ギター)、リンゴ(ドラムス)の布陣で「34テイク」のリズム・トラックを録音し、翌日から「33テイク」にオーヴァー・ダビングをして、ポールがリコーダーを加えた「9/16」には完成します。そして「9/26」にモノミックスが行われるのですが、ジョンが「何か足りない」と閃いてエンディングに効果音(「アンソロジー3」で聴ける「電話のベル」と「オルガンの継続音」と「サッカー中継でゴールを絶叫するアナウンサーと観客の歓声」と「ガラスの破壊音」を合わせた音源)を加える事にします。ところが、此処でノコノコと休暇から帰って来たジョージ・マーティンが其れを聴いて「ダメだ、こりゃ!」とジョンに苦言を呈し、「私に任せなさい!スコアを書こう」とストリングスのエンディングを提案し公式ヴァージョンとなったのでした。マーティンも「ホワイト・アルバム」は半分投げていて、二枚組にする事には大反対したのですけど、チャッカリと押さえるべきトコは押さえているのです。おそらく、マーティンが「半分は削りたい」と云うのは「自分がほとんど関わっていない楽曲」の事でしょう。
(小島藺子)
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