w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ジェフ・エマリック(9/5、6、11/6、17)、ケン・スコット(9/27〜29)
2E:ケン・スコット(9/5、6、11/6、17)、リチャード・ラッシュ(9/5、27、28)、グレアム・カークビー(9/29)
録音:1967年9月5日(take 1-16)、
9月6日(take 16 を編集した take 17 に SI 「歌、ベース、ドラムス」)、
9月27日(take 17 を編集し SI 「管弦楽」し take 18-24)、
9月27日〜28日(take 20 を編集した take 25 に SI 「管弦楽、コーラス」)、
9月28日(take 25 を編集し take 17 に SI)
MONO MIX:1967年9月7日(take 17 より 1-4)、9月28日(take 17 より 2-5)、
9月29日(take 17 より 6-22、10&22 を編集し 23)、
STEREO MIX:1966年11月6日(take 17 とモノ・ミックス 23 より 1-7)、
11月17日(take 17 より 25、25&7 を編集)
1967年11月24日 英国シングル発売
パーロフォン R 5655(モノ)
1967年12月8日 英国EP発売 (「MAGICAL MYSTERY TOUR」 B-1)
パーロフォン MMT-1(モノ)、SMMT-1(ステレオ)
ジョン・レノンの傑作。TV映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」の為に提供した楽曲で、劇中でもセイウチなどの奇妙なマスク姿で演奏するサイケデリックな映像が観れます。録音はマネジャーのブライアン・エプスタインが亡くなった(8/27)の直後に開始されますが、レノンの彼に対する哀悼が込められたとも思われる魂の熱唱が聴けます。詩はルイス・キャロルの「鏡の国のアリス」の影響が強く、後に「GLASS ONION」や「GOD」にも歌い込まれる程にジョン・レノンの自信作でした。しかし、前述の通りポール作の「HELLO, GOODBYE」のB面になってしまい、ジョンは「HELLO, GOODBYE」を貶し捲くりました。ちなみに、ポールは此の曲をジョンの最高傑作のひとつと語っており、「TV映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」は「I AM THE WALRUS」が収録されているだけでも充分に価値がある!」とまで大絶賛しております。ま、確かに其の通りだ。
ベーシック・トラックではビートルズ四人によるシンプルな演奏でしたが、多くのオーバーダビングを経て摩訶不思議な音楽となりました。ジョージ・マーティン渾身のスコアによる管弦楽とコーラスに加え、9月29日の最終モノラル・ミックス時にラジオで放送されていた「リア王」をモノラル・マスターにそのまま挿入してしまったのです。其の為、ステレオ・ミックスでも後半のラジオ音声が被る部分は擬似ステレオもしくはモノラルになってしまいます。更に、ステレオ・ミックスは前半部をやり直してもいて、二種類が発表されました。完全なるステレオ・ミックスは「アンソロジー」の映像版やマッシュアップ版の「LOVE」まで公開されていません。ゆえに、様々なミックス違いを公式盤で楽しめる楽曲でもあります。
「I AM THE WALRUS」でビートルズが提示した音世界は、其の後の音楽界に多大なる影響を与え続けています。ビートルズ風の作品を発表している後追いのバンドの多くは、明らかに「I AM THE WALRUS」をお手本としているのです。TV映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」もポール主導で進められ、ジョンの作品は此の曲だけなのですが、正に「一曲入魂」の凄まじい才気が爆裂しています。ジョージ・マーティンやジェフ・エマリックはTV映画「MAGICAL MYSTERY TOUR」の制作過程を「無秩序で好い加減だった。あんな状況でよくレコードに出来たもんだ」と評価していませんが、「I AM THE WALRUS」に関しては胸をはって「素晴らしい傑作だし、自慢できる仕事だったよ」と自画自賛し捲くっております。
ジョン・レノンが過剰な装飾を加えて曲を成立させる様になった事に対して「いい曲が書けなくなって誤魔化した」なんぞと批判する意見もありますが、「I AM THE WALRUS」の様な奇妙奇天烈な音楽なんて、ジョンがやらかさなかったら誰も思いつかなかったのです。「僕らの音楽を理解しているのは、世界で百人もいない」と云ってのけたジョン・レノンの此の快作は、2012年の現在でも平気でパクられています。ジョン自身が発表当時に「I AM THE WALRUS は、百年は残る!」と断言しただけある、恐るべき作品です。でも、何度でも云いますけど、「HELLO, GOODBYE」のB面なのだ。其れが、ビートルズ。
(小島藺子/姫川未亜)
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