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2012年07月08日

FAB4-134:ALL YOU NEED IS LOVE(愛こそはすべて)

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 w & m:LENNON / McCARTNEY

 P:ジョージ・マーティン
 E:エディ・クレイマー(6/14)、ジェフ・エマリック(6/19〜26、11/1、'68-10/29)、
   マルコム・アディ(6/21)
 2E:ジョージ・チアキンス(6/14)、リチャード・ラッシュ(6/19〜26、11/1)、
   フィル・マクドナルド(6/21)、マーティン・ベンジ(6/25)、グレアン・カークビー('68-10/29)
 録音:1967年6月14日(take 1-33、take 10 を編集)、
    6月19日(take 10 に SI 「歌、コーラス、ドラム、ピアノ、バンジョー」)、
    6月23日(take 10 を編集し SI 「オーケストラ」take 34-43)、
    6月24日(take 10 に SI 「オーケストラ」take 44-47)、
    6月25日(take 48-58、take 58 へ SI 「ドラムロール、歌」)
 MONO MIX:1967年6月21日(take 10 より 1、番号なしのデモ)、6月26日(take 58 より 2-10)、
      11月1日(take 58 より 11)
 STEREO MIX:1968年10月29日(take 58 より 1-6)

 1967年7月7日 英国シングル発売(最高位:英米1位)
 パーロフォン R 5620(モノ)


1967年6月1日にアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEART'S CLUB BAND」を発表したビートルズですが、4月にはもうすでに次の作品へ向っていました。そして、6月25日に初めて宇宙通信衛星を使って世界31カ国同時生中継されるTV番組「OUR WORLD」で英国代表として新曲を披露することが決定します。ところが、放送まで僅か十日余りとなった6月14日に、ようやくセッションが開始されます。ビートルズは遊んでいたわけではなく、ずっと他の曲の録音をしていたのです。此の曲はギリギリになって、ジョン・レノンが書いて歌っています。「曲は30分くらいで書けたけど、歌いこなすのに一週間掛かった」とジョンが語る様に、変拍子を使って長いフレーズを音節に無理矢理押し込んで語る様に歌う「Aメロ」はレノン節が炸裂で難易度が高いのですが、すんなりと聴かせ見事な大衆音楽として成立させています。ベーシック・トラックでは、リンゴがいつも通りドラムを叩いていますが、ジョンはハープシコード、ポールはダブルベース、そしてジョージはバイオリンを弾いています。

6月25日の生中継(take 58)では、そのベーシックトラックに合わせて、ジョンがヴォーカル、ポールがベースとコーラス、ジョージのリードギター、リンゴのドラム、そしてオーケストラが生演奏しています。レコードになったのは、其の「take 58」にリンゴのドラムロールを加え、ジョンのヴォーカルの一部も録音し直したものです。生中継の翌日にはモノラル・ミックスが速攻で完成され、7月7日に英国でシングル発売される早業でした。尚、此の曲はシングル用だったのでモノラルしか作られず、1969年1月17日に発売されるアニメのサントラ盤「YELLOW SUBMARINE」へ収録する為に、1968年10月29日にようやくステレオ・ミックスが行われます。ゆえに、1967年11月27日に発売された米国編集盤「MAGICAL MYSTERY TOUR」のステレオ盤には擬似ステレオが収録されました。さらに、アルバム「YELLOW SUBMARINE」のモノラル盤は「ステレオ盤をモノラルにしただけ」でしか発売されなかったのでシングル盤のモノラル・ミックスとは違っています。

番組の主旨にも合わせ、1967年の所謂ひとつの「フラワー・ムーブメント」にも呼応した「愛と平和の賛歌」は、ジョン・レノンを「愛と平和の聖人」と祭り上げるキッカケともなりました。アニメの「YELLOW SUBMARINE」でもジョンが此の曲を歌って悪のブルー・ミーニーズを退治しちゃうわけで、正に「愛こそはすべて」なのですけど、シングルのB面は「BABY YOU'RE A RICH MAN」なのだよ。衛星生中継で生歌を披露したジョンは、ガチガチに緊張しガムを噛みながら目を閉じて歌っています。一方、リッケンバッカー・ベースを弾くポールは、最初からノリノリです。オーケストラは、イントロのフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」に始まり、エンディングには、バッハの「インヴェンション8番」、グレン・ミラー楽団の「イン・ザ・ムード」、イングランド民謡「グリーンスリーヴス」から引用して演奏しています。ジョンとポールも最後に「SHE LOVES YOU」を歌いますが、エンディング間近になってジョンも緊張感から解放されたのかノリノリになっております。

スタジオには、ミック・ジャガー、マリアンヌ・フェイスフル、キース・リチャーズ、キース・ムーン、エリック・クラプトン、パティ・ハリスン、ジェーン・アッシャー、マイク・マクギア、グラハム・ナッシュ、ゲーリー・ウォーカー、ハンター・デイヴィスなど大勢のゲストが招待されコーラスや手拍子で盛り上げています。キース・ムーンは、リンゴの隣でドラムを叩いている姿が確認できます。ビートルズやゲストはカラフルな衣装を着て、全体に花が飾られていました。然し、残念ながら放送はモノクロで収録されたのです。現在では「アンソロジー」の映像版などで「CGで総天然色に着色したヴァージョン」を観ることが出来ます。1978年に制作されたビートルズのパロディTV映画「THE RUTLES in ALL YOU NEED IS CASH」は、当然乍ら此の楽曲をもじっております。ラトルズによる此の曲のパロディ「LOVE LIFE」では、きちんとエンディングで「HOLD MY HAND」と云う初期ビートルズのパロディ曲(主に「ALL MY LOVING」を元にしている)を歌い込むなど、徹底的に茶化しておりました。エリック・アイドルが脚本と監督を務め、ニール・イネスが音楽を担当した此のTV映画には、ミック・ジャガー、ポール・サイモン、ロン・ウッドが客演し、なな、なんと、ジョージ・ハリスン本人も白髪で眼鏡姿のTVリポーター役で出演しています。


(小島藺子/姫川未亜/鳴海ルナ)



posted by 栗 at 02:34| FAB4 | 更新情報をチェックする