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2011年11月27日

「AFTER THE BEATLES」其の拾参

想いは果てなく~母なるイングランド Stop & Smell the Roses Tug of War


悪夢の1980年12月8日が、ポール、ジョージ、リンゴの三人の其の後を大きく変えてしまいます。三人共、新しいアルバムを制作中でした。ジョージは完成していました。されど、ジョンの死が新作の発表を遅らせます。ジョージは「Somewhere In England」を1981年6月に発表しました。先行シングルとして5月に出たジョンの追悼曲「All Those Years Ago」は、全英9位、全米2位のヒットとなりましたし、ポールとリンゴも参加しています。でも、此のアルバムは1980年12月にリリースされるはずだったのです。ところが、ワーナーから「こんな地味な内容じゃ売れん!」と却下され、四曲を差し替えジャケットも別にして発売されたのでした。現在では当初のジャケットで発売されていますが、曲の差し替えを強要された時にジョンの悲劇が起こったのです。ジョージは、当初リンゴに提供する予定だった曲の歌詞を書き換え「All Those Years Ago」にしたのでした。ジョージは以前から名曲を惜しげもなく他人に提供する人で、アノ「SOMETHING」や「MY SWEET LORD」や「YOU」なども実は提供曲として書かれた作品でした。此の時も、うっかりリンゴにあげるトコでした。

其のリンゴは、1981年11月に「Stop & Smell the Roses」を発表します。ポールとジョージも楽曲を提供していますが、当初はジョンも参加する予定で四曲のデモをリンゴに渡していました。再びリンゴのアルバムでビートルズが集まり、再結成の狼煙を上げる構想も在ったと云われています。然し、ジョンが殺された事でリンゴは「ジョンの曲を歌えない」と彼らしい追悼の意を表したのでした。商売上手かと思えば、肝心な時には頑固に意志を通したリンゴは天晴れですが、アルバムは売れませんでした。リンゴは1981年4月27日に元「ボンド・ガール」のバーバラと再婚しポールとジョージも祝いましたが、同日にデニー・レインが「WINGS脱退宣言」をしました。

ポールは当初「WINGS」の新しいアルバムとして録音をしていましたが、ジョンの死に計り知れないショックを受け活動を休止しました。下僕だったデニーの脱退で「WINGS」は崩壊し、ポールはソロ作品を作る事となったのです。プロデューサーはジョージ・マーティン、エンジニアはジェフ・エマリックと云う「ビートルズ最強の布陣」と再び組み、リンゴ、スティーヴィー・ワンダー、エリック・スチュワート(10cc)、スタンリー・クラーク、カール・パーキンスなどなど豪華なゲストを迎えてのアルバム「TUG OF WAR」を1982年4月に満を持して発表しました。ジョンの死から一年以上も経て、悲しみの中から立ち上がったポールの渾身の大傑作です。矢張り、ここぞと云う時にポールはやってくれますね。此の時だけは、どうしてもポールは傑作を出さなければならなかったのです。大きなプレッシャーもあったのでしょうが、文句なしの名盤を出してしまうのですから、ポールは凄いです。スティーヴィーとの共演先行シングル「エボニー・アンド・アイボリー」も、アルバムも、堂々の首位を獲得する大ヒット作となりました。此の作品を初めて聴いた時の感動は忘れられません。特に二曲目の「TAKE IT AWAY」がカッコよく、しかも哀愁を帯びていて泣けてしまいました。ポールにしか出せない味です。

ジョンは本気でビートルズ再結成を考えていたらしいのですが、永遠に叶わない事となりました。リンゴは「アル中」となり、ジョージは映画製作に没頭し、ポールが孤軍奮闘で頑張る展開となります。此の頃も、ビートルズの作品は多くの編集盤が発売されていました。別ミックスを多く収録した「THE BEATLES BOX」(1980年12月発売)や、映画に使われた曲を集めた「REEL MUSIC」(1982年2月発売)など、ドドンガドンドン!と出捲くっておりますが、売れるんだから仕方ないですね。当時のメドレー・ブーム(そもそも其れも「Stars On 45」の「ショッキング・ビートルズ」から始まった)に便乗して「ムービー・メドレー」なんてシングルまで出て、此れがまた全英10位、全米12位のヒットを記録しちゃうんです。少なくとも、リンゴよりは売れてますし、ジョージだって追悼曲で売れたわけで「現役で過去のビートルズに立ち向かえるのは、もうポールだけないんじゃまいか?」と思われました。ぐるっと回って元に戻っちゃったのかもしれません。やっぱ、才能が違うんだよナァ。


(小島藺子)



posted by 栗 at 02:43| FAB4 | 更新情報をチェックする