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2011年09月25日

「ポールは天才なのだ」

NIAGARA TRIANGLE Vol.2 20th Anniversary Edition


ビートルズのプロモーション映像は、なかなかテレビで流されなかったり、キチンとしたカタチで商品化されていません。でも世の中には「海賊盤」とか「ようつべ」とかも在りますので、結構容易く大抵の映像を観る事は可能です。「ベストヒットUSA」で二週続けて貴重なビートルズの映像が放送されたので、他の映像も観たくなって妖しげな「PV集」と映画「LET IT BE」及び関連映像なんかを観ました。

其れで思ったのは「ポールは、やっぱり天才バカボンのパパ」です。元祖「KY」とも云えるかもしれません。確かにレノンは現場に小野洋子さんを帯同すると云う暴挙を犯しましたし、彼女に影響されたのか「前衛音楽」をビートルズに持ち込もうとしました。エマリック本で、既に「HEY JUDE」がシングルに確定した時点でレノンがいきなりだナァと「Revolution 9」をシングルにすると云い出し「おい、此れからのビートルズはこーゆー革新的な音楽を演るんだ!」とイカレポンチ爆裂発言をぶちかます下りには大爆笑しましたが、志としては間違ってない気もするのです。

結局はビートルズ名義としては「Revolution 9」しか発表しなかったものの、ジョンはヨーコと数々の前衛作品も出しましたし、ジョージの「電子音楽の世界(Electronic Sound、1969年)」とかも出鱈目で聴いてられません。ポールも虎視眈々とそーゆーガラクタ音源の発表を狙っていて、ザップルが潰された時に最も怒ったのはポールだと云われています。ポール曰く「ジョンとジョージが出したから、次はボクが出すはずだったのにぃ!」なのだ。ん?リンゴですか、まあ、ポーカーでもやっていたのでしょう。

勿論「Revolution 9」のシングル化など大反対され却下されますが、ポールは「反対の賛成なのだ」みたいな曖昧な態度を取ります。「HEY JUDE」のカップリングは録音し直した「Revolution」となり、初期ヴァージョンは「Revolution 1」と「Revolution 9」に変貌し「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」に収録されました。其れで「Revolution」のPVが制作されます。此の楽曲にはニッキー・ホプキンスが鍵盤で参加しているのですが、当時の英国では「口パクや音パクはイカン」と決められていてですね、ビートルズはレコードを下敷きにして音を重ねるって手法を試みました。う〜む、片瀬那奈ちゃんの先取りですね。

其れで、普通にレコードみたいに演奏すれば好いのに姑息な改変を加えてしまったのです。簡単に云えばシングルの「Revolution」に「Revolution 1」を足した様な感じで、ポールとジョージがコーラスを加えています。レノンは歌詞を変えて歌ってますし、冒頭のシャウトはレコードではレノンなのにPVではポールが喜色満面で決めております。「ドゥワップ・ヴァージョン」とも云われる此の「PV」でコーラスを加えたのは明らかにポールでしょう。いえ、此の映像はかなり格好良くって、裏で鳴っている元の音源をベーシックトラックのみにしたなら最高レベルだったと思えます。1968年のビートルズを伝える映像としては「HEY JUDE」のPVを遥かに凌駕しているでしょう。なんてったって、ジョンとジョージがギターで、ポールがベースで、リンゴがドラムなんですから、そんでもってジョンが歌ってポールとジョージがコーラスなんですよ。もう、完璧です。

其れで味を占めたのか、1969年の「ゲバ」でポールはやらかします。シングルになったレノンの「Don't Let Me Down」はシンプルで力強く美しい楽曲です。完成版ではジョンが歌い、ポールとジョージは決めの「どんれみだーん!」でハモリますが、制作過程を聴くと全編に渡ってコーラスを付けようとするポールが居ます。♪あいみんらーふぉざふぁすたい♪とレノンが歌うと、ポールが♪ららら、なんたらかんたら♪と対位法で別メロを歌い、ジョージに「お前も一緒にハモるのだ」と命令します。楽曲が破壊されてゆく様を堪能出来ますし、ジョージがキレて脱退騒動になるのも音源だけで伝わって来ますので「ゲバ」はやめられませんね。

映画「LET IT BE」や其れに関連する「THE GET BACK SESSIONS」が面白いのは、こんなにも克明に記録されたビートルズの録音現場が他には無いからです。おそらく他の時でもトンデモな事は沢山在ったのでしょう。多くの伝記本などで其れに触れられますが、映像と音源で遺されてしまい擬似体験が出来るのは「ゲバ」だけです。そして、其処で観られるポールは「莫迦丸出し」なのだ。映画がDVD化されないのは、ポールが許可していないからなんじゃまいか。だって、映画「LET IT BE」のポールって「美男ですね」の「柊」なんだもの。但し、ヨーコが「廉」で、ジョンが「美男(ホントは美子)」だから、ややこしいのだ。


(小島藺子)


posted by 栗 at 02:56| FAB4 | 更新情報をチェックする