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2011年09月06日

「ロッキーは階段を駆け上がるのだ」

「ロッキー」30周年記念エディション


テレビ東京が、先週の月曜日から本日まで真昼間に「ロッキー・シリーズ 一挙放送!」なるトンデモ番組を放送しやがったので、全六作を録画してしまいました。挙句に、一作目と二作目はそれぞれ「30分」くらいカットされていたので、オリジナルをレンタルしてしまったじゃまいか。こーゆーのは、ドドンガドン!とやって頂きたい。かつて新春に一日中「猿の惑星」を全作ぶっ通しで流しやがった快挙を、あたくしは生涯忘れません。

1976年に公開された「ロッキー」は、アカデミー賞を受賞した名作です。脚本を書き主演したシルベスター・スタローンは、長い不遇時代を経て一躍大スターとなったのです。確かに、最初の「ロッキー」は良く出来ています。テレビドラマ並みの低予算で撮影されたらしいのですが、クライマックスの試合までの展開が実に好い。ボクシング映画なのだけど、実際にロッキーが試合をする場面は多くなく、ゆえに、溜めに溜めてアポロと対戦し「エイドリア〜ン!」が効くのです。

其れで終われば伝説になったのですが、大ヒットしちゃったのでシリーズ化されました。アポロと再戦しチャンピオンになる「ロッキー2」、常勝チャンプとなり贅沢三昧で若手に惨敗しマネジャーのミッキーも死んでボロボロになったものの、ライバルだったアポロの手助けで再起し再びチャンピオンに返り咲く「ロッキー3」、其の盟友アポロをソ連のサイボーグ・ボクサーに殺されて、復讐に燃え敵地ロシアで勝利する「ロッキー4」、遂に引退してマネジャーに活路を見出すものの、育てた若造に裏切られストリート・ファイトで打ち負かす「ロッキー5」と来て、やっと終わったと思ったら「ロッキー5」からでも16年後、「ロッキー」からは30年後に蘇り、還暦なのに現役世界チャンピオンと互角に戦うファンタジー「ロッキー・ザ・ファイナル」と続いたのでした。

シリーズ化される映画は大抵は「どんどん腐ってゆく」のですけど、此の「ロッキー」ほど第一作目の名声に自ら泥を塗り捲った作品はないかもしれません。でも、あたくしはこーゆーシリーズ化されて堕ちてゆく作品が大好きなのです。個人的には、ホーガンとミスターTが大活躍する「ロッキー3」なんかツボですし、興行的には最も成功した「ロッキー4」のスットコドッコイ振りも笑えます。スタローンも「ロッキー4」まではイケイケドンドン状態で莫迦丸出しになってゆきますが、流石に「ロッキー5」では原点回帰を試み大失敗!それじゃ終われないと長年脚本を描き直し続けて、何とか「ロッキー・ザ・ファイナル」で決着をつけました。毎回のお約束で「階段を駆け上がる場面」も好いですね。完全なる「持ちネタ」です。

改めて全作を観ると、矢張り最初の「ロッキー」は名作で、他は大したことない凡作ばかりとも云えます。特に「ロッキー4」は酷いですね。丸っきり「MTV」じゃまいか。此れが最も受けたんじゃ、スタローンもマトモな映画なんか撮らなくなりますよ。30年に渡って活躍した「ロッキー」は、最早「ボクサー」ではなく「プロレスラー」です。「ロッキー5」や「ロッキー・ザ・ファイナル」を観る時、あたくしは「晩年の猪木」や今でも現役を続ける「藤波、長州、天龍、佐山」などを重ねてしまいました。そして「ロッキー・ザ・ファイナル」のクライマックスでは泣けちゃうわけですよ。ファンタジーでもいいじゃん。元々、最初から「ロッキー」は夢見るファンタジー映画です。


(小島藺子)


posted by 栗 at 23:14| KINASAI | 更新情報をチェックする