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2011年08月28日

「ALL TOGETHER ALONE」

ハース・フロム・アース


昨日(2011年8月27日)に、東日本大震災復興支援として、二つの大きなプロレス興行が開催されました。其れは、「東スポ」主催でメジャー三団体が結集した武道館での「ALL TOGETHER」と、アントニオ猪木が主催し、ちゃっかり「東スポ」も後援した両国での「INOKI GENOME」です。どちらも「震災支援」との名のもとに、所謂ひとつの「オールスター戦」とも云える贅沢な布陣でした。32年前に「東スポ」主催で「夢のオールスター戦」が行われて以来の、団体の垣根を越えた大会と謳われた「ALL TOGETHER」ですが、御馴染みの「猪木」がハブにされ「だったらオレは両国でやるっ」と同日大会を発表!一時は「すわっ!猪木と東スポ、絶縁かっ」とのアングルで進みましたが、正に「底が丸見え」で御座いました。

「INOKI GENOME」は「ニコ生」で生放送されたので、あたくしも中盤の「猪木パフォーマンス」からは観ました。キムケンに介錯役をさせながら白装束で切腹した猪木は「ちゃんと斬れ!そんなんじゃ死ねね〜だろ。え〜、木村が下手なので死ねませんでした(今や議員なのに、間抜けな役を演じさせられたキムケンが哀れなり)」なんぞとヌカし、勝手に馬場さんの代役と決めた「チェ・ホンマン」を呼び込み、伝説の「夢のオールスター戦」を再現しようとします。「タイガー・ジェット・シン」がたっぷりと盛り上げて入場するも、「アブドーラ・ザ・ブッチャー」はニタニタ笑ってラフな私服姿でリング下に居ます。「今日は震災支援だから、仲良くしよう」みたいな事を云って猪木と握手したブッチャーは、其の侭リング下に猪木を引きずり落とし襲い掛かります。すぐさま「怒りの鉄拳制裁」でブッチャーを粉砕した猪木に、当然の如くシンが挑むものの、矢張り「完全なる反則」である「ナックルパート」の連打でやられてしまいました。観客は大喜びでしたけど、何にも出来なかった「チェ・ホンマン」の立場って何だ?

全試合がシングルマッチで行われた「INOKI GENOME」は、観戦した後半だけでの感想ですけど、なかなか面白かったです。蝶野はやはり上手いと思ったし、メインの藤田は「大丈夫なのか?」と心配していたけど、ちゃんと観客の前でやれる状態に戻していました。小川は弟子を相手で余裕たっぷりの復帰戦でしたが、明らかに「橋本戦」を思い起こさせるムーブを多用し「小川、強し!」を再び印象付けるパフォーマンスでした。別にプロレスなんかやらなくとも充分に安泰なのでしょうけど、ようやく「やる気」が出たのかもしれません。バンナやアーツなど「K1難民」の受け皿にもなっていて、今回もセミとメインにはバンナとアーツが出て勝ったわけですが、猪木としては「してやったり!」でしょう。「INOKI GENOME」で行われたのは、「異種格闘技戦」と云う名でかつて猪木が創造した「プロレス」でした。元々、総合やK1の源流は猪木の「異種格闘技戦」だったのですが、結局は本家に呑みこまれてしまったと思えます。大会の最後も、当然乍ら猪木の「ダァーッ!」で大団円で御座いました。

一方「ALL TOGETHER」は、日付が変わった本日(8/28)テレビ朝日「ワールドプロレスリング」と日本テレビの特番で放送されました。どちらも深夜で、日テレは午前4時からの放送でしたが、放送されただけでも好かったんじゃまいか。同じ素材を使った二番組は、結論から云えば日テレの圧勝でしたね。と申しますのも、「ワールドプロレスリング」で放送されたのはセミとメインのダイジェスト版のみで、日テレでは其の二試合も含め四試合を放送したわけで、尺の長さだけでも圧倒しています。日テレならではの「かつての外人大物レスラー」のコメントが入る演出も好かったです。こちらの大会は総勢82名ものレスラーが出場し、全てがタッグマッチやバトルロイヤルと云う「お祭り」です。「INOKI GENOME」には、まだ「勝負論」が成り立ったものの、「ALL TOGETHER」は正しく「ショーとしてのプロレス」を見せ付ける興行だったと思います。

アングルも在るとは云え、こうした記念すべき大会に猪木が居ないのは変です。でも、猪木は両国で独自の興行をやらかしました。そして、武道館には馬場が居たのです。セミでの武藤と小橋によるムーンサルトの競演とか、メインでのKENSOが裏切り孤立無援になった時に三大チャンピオンが必殺技を三連発!とか、おいおい、こりゃもう大昔の全日じゃん。いえ、まぁ、あたくしはこーゆープロレスも好きですけどね。正にお得意の技のお披露目会で、観客も其れを望んでいるわけです。でも、其処には「猪木イズム」の欠片もないよ。個人的には、「INOKI GENOME」のリングアナがケロだった事や「ALL TOGETHER」のメインを京平が裁いた事とか、色々と気になった点も多いですし、未だ両大会とも全てを観たわけではありませんので、迂闊に結論は出せません。でも、率直な感想は「馬場・猪木の遺恨は続く」です。


(小島藺子)


posted by 栗 at 17:23| KINASAI | 更新情報をチェックする