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2011年02月02日

「コピコン・リマスターズ」#09(2006年1月)

Let It Be [DVD] [Import]


THE GET BACK SESSIONS で最も精力的に曲を書いていたのは、ジョンでもポールでもなく、ジョージでした。しかし「All Things Must Pass」「Let It Down」「Hear Me Load」「For You Blue」「I Me Mine」「Isn't It A Pitty」「Old Brown Shoe」「Something」などなど、湯水の如く沸き上がる名曲の数々の中から、結果的にアルバム「GET BACK」に採用されたのは「For You Blue」だけです。たったの一曲。

「LET IT BE」になって「I Me Mine」も追加されましたが、それは一年後にレコーディングされたテイクです。「ゲバ」での正式録音でまともに取り上げてもらえたのは「For You Blue」と「Old Brown Shoe」くらいで、「Old Brown Shoe」はシングルB面で「Something」は「ABBEY ROAD」で発表出来たのだけど、他はどーなってんだ?って感じでしょう。

あのルーフ・トップではジョージの曲は一曲も演奏されませんし、バック・ヴォーカルすらほとんど取らせてもらえません。翌日のスタジオでは、ポールの曲しかやりません。「I Me Mine」を最後に捩じ込んだのも、「やってらんねーよ」ってことだったのでしょう。そしてソロ三枚組へと爆走してしまうのだけど、そのほとんどはビートルズ時代にビートルズの曲として書いた作品です。「Art Of Dying」なんて「REVOLVER」の頃に書いたらしく、それだけ長年虐げられていたわけですよ。ま、だからこそソロになって爆発出来たわけですけどジョージのピークがよりによって「ゲバ」の時に来たってのも、解散の要因になりましたね。(ヨーコがジョージのビスケットを黙って食べたからって話もあるけど。)

ビートルズの最後のライヴと云われる1969年1月30日の「The Rooftop Session」は、THE GET BACK SESSIONS のハイライトであり、映画「LET IT BE」にもクライマックス・シーンとして大きく取り上げられています。(あの映画は色々と云われていますけど、屋上だけで「神」作品なのですよ。)但し、これはコンサートではなく、ゲリラ的な公開ライヴ・レコーディング・セッションです。彼らは46分間17takeを演奏しますが、即興も多く、同じ曲を何度もやっています。

マトモに演奏されたのは「Get Back」「Don't Let Me Down」「I've Got a Feeling」「One After 909」「Dig a Pony」の5曲で、それぞれ2テイク以上やっています。「ゲバ」では、100曲以上もの楽曲がセッションされたのだけど、ビートルズはライヴ用に5曲しか選ばなかったのです。もうね、これは掛け値なしに素晴らしいライヴでありまして確かに完全版は観たいけれど、とりあえず半分(勿論5曲すべて収録)が観れる映画を一刻も早くDVD化して欲しいですね。

さて、翌31日にライヴ向きではない曲での「The Studio Performance」が敢行されます。ここで演奏されるのは、やはり即興曲や未完成を除けば3曲のみです。それが「Two of Us」「The Long and Winding Road」そして「Let It Be」なのです。この3曲のパフォーマンスも映画「LET IT BE」の中盤で観ることが出来ますが、実際には何度もテイクを重ねているのでこちらも完全版の映像を観たいですね。無いもの強請りではないのですよ。すべて正式にレコーディングされ撮影されていたのです。この二日間こそ「ゲバ」の本番だったのですからね。「ゲバ」でビートルズが選んだのは、これら計8曲だったのです。それは、どれもが素晴らしい作品ばかりではないですか。映画もこの最後の二日間だけで構成したなら、印象は大きく違っていたでしょう。

彼らが望んだ姿には、「LET IT BE... NAKED」が一番近いのかもしれません。しかし、「LET IT BE... NAKED」仕様のDVD(以前も書きましたが、そんな労作?も存在します)を観ると、「これは違う、、、」と思うのです。時系列では「Let It Be 」で終わった30daysではあるけれど、やっぱり警官がやって来ても「Get Back」を演奏しつづけて、ジョンのジョークで締めなきゃなぁ。みんなで、げらげら笑って終わりたいじゃないか。

どっかでやんなきゃなんないんだよ、じゃあいっそのこと、屋上でやろーじゃないか、さあ、屋上へ行こうぜ。


(小島藺子)



初出「COPY CONTROL」
 「Elmore James go nothin' on this baby」(2006-1-27)
 「Why Don't We Do It On The Rooftop Again」(2006-1-31)


posted by 栗 at 00:45| FAB4 | 更新情報をチェックする