
ポール・マッカートニーの楽屋に居る。どうやら、僕ともうひとり(知って居る様で知らない、友人の様で他人みたいな人)と二人でバックステージに招待された様だ。ポールが「君たちは楽器は弾けるの?」と云うので、僕ももう一人も「ええ、少し、、、」と応えたら、いきなりだナァでポールが「じゃあ、来てくれ」と僕をステージに引っ張り出した。
会場は宮崎県のグラウンドで、グラウンドには観客を入れず、スタンドが満席。ドラムのアブラハムが「ラスティーが食あたりでプレイ出来なくなっちゃったのよ。だから代わりに演奏してネ」と巨体を揺さぶらせながら、赤ら様なオネエ言葉で云った。(勿論、会話は全部英語で進行中。)ベースが在ったので、取ろうとしたらブライアンが「おいおい、此れは俺が弾くんだよ」と云って、レスポールのエレキ・ギターを渡された。曲は「GETTING BETTER」、ガクブルで全く弾けない。なんとかカッティングすると、ポールが「違う!お前は高い音を出すんだよっ。使えないナァ」と怒鳴った。
「おまい、クビね」とポールに云われて退場すると、もう一人の奴が入って来て普通にラスティーの代役を務めた。「なんだ、あいつ、奥田民生じゃん」と、ようやく正体に気付いたけれど、傷ついた心は癒えない。「宮崎県なんだから、そのまんま東を探そう!」と涙を流し乍らスタンドの観客を観ている。ポールが「おい、こっち来い」と云ってふたたびステージに行くと「此れなら弾けるんだろ?」とウクレレを手渡した。これなら弾ける!と「RAM ON」を弾いた。いつの間にか、場所は楽屋に変わっていて、「そうか、夢だったんだな、僕はポールの楽屋で夢をみていたのだ」と認識する。すると「此れは、ジョージにもらったウクレレだ。お前にやるよ」とポールに云われ、サイン入りのウクレレを抱きしめて、僕は号泣した。
(姫川未亜)