昨年、ビートルズがリマスターされ、先月にはジョンの新装リマスターが出まして、前述の通りアップル・レーベルのリマスターまで出ている御時世ですが、遂に、化物が押っ取り刀でリマスター・シリーズを開始しましたよ。御存知、サー・ポール・マッカートニー。1962年にビートルズがメジャー・デビューして以来、なな、なんと半世紀近く常に現役バリバリの怪物です。
「頭の固い年寄りとは、もうやってらんねー!(ポールも68才で、充分に年寄りなのですけど、、、)」とレーベルを移籍し新作もライヴもバンバンと出しているのですが、「Paul McCartney Archive Collection」の名の元に、しっかりと旧譜の復刻も始めやがりました。第壱弾は、1973年発表の大傑作「BAND ON THE RUN」です。納得のいくセレクトでしょう。
しかし、やはり、天下のポール。通常盤CD、デラックス・エディション(CD2枚+DVD1枚)、スーパー・デラックス・エディション(CD3枚+DVD1枚+写真集など)、アナログ二枚組、と四種を一挙に発表です。さあ、どれを買う?音だけ考えたらアナログで決まりなのですけど、遂に公式化された「One Hand Clapping」も収録されたDVDは外せません。ならば「スーパー・デラックス・エディションで決まりだっ!」と云いたいトコですけど、確かに豪華なツクリだけど壱萬円超えちゃってますから悩みます。其れで、デラックス・エディションには入っていない三枚目のCDは何なの?と思ったら、25周年盤にボーナスで付いていた奴の拡大版だって事でして、結局はデラックス・エディション(CD2枚+DVD1枚、しかも輸入盤で3,590円)を買いました。
内容は、そりゃ、もう素晴らしいです。此の作品は、あたくしが初めて買ったポールのアルバムで、其れはつまりリアルタイムで最初に買ったビートルズ関係の作品だったのです。当時は、たぶん「ポール・マッカートニーとウイングス」のポールと、ビートルズのポールが同じ人だって認識は無かったかもしれません。でも、其の前に買ったビートルズの「ABBEY ROAD」と何だか似てるナァ、と思いました。其の後で、「ヤング・ミュージック・ショー」や1975年の来日中止事件の時のオーストラリアでのライヴをTVで観て「ポールってビートルズだったんだ!」と知ったのですよ。
時は1973年、先日リマスター盤が出た赤盤と青盤が出まして、ビートルズ再評価が始まります。ジョージもリンゴもジョンも、ソロで大活躍中!唯一新たなバンドを組んだポールも負けじと「MY LOVE」や「死ぬのは奴らだ」と名曲を大ヒットさせ、昇り調子になって来たウイングスでしたが、ワンマン・リーダーのポールは「アフリカで録音する!」なんてトンデモな事を云い出してですね、奥さんのリンダと下僕のデニー・レーン以外のメムバーがドタキャン!(マジで、ナイジェリアへ行く前日に抜けられたみたいです)バンド脱退って事になったのですけど、其処はもう流石は天下のポールです。何にも出来ないリンダと、まあ器用だけど所詮は下僕のデニーを従えて、ハッキリ云ってしまえば、ほとんどひとりで作ってしまったのでした。曲作りも歌もギターもベースもキーボードもドラムも、全部ポール。
えっと、此れはポールのソロじゃん。そうなのだ。ポールはレコードだったら、ひとりで作れちゃうのです。「バンド大好き!」な人だけど、其れはライヴを演りたいからでありまして、基本的には「ひとりぽっちの宅録野郎」ですよ。ポールは、「自分が絶対」なのよさ。あたくしは、かなりポールに近い性格ですので、よ〜く分ります。ポールには、あたくし如きが烏滸がましいのだけど、凄い近親憎悪があるのよさ。でも、ナンダカンダ云って、一番影響を受けた偉大な先生です。ビートルズはビートルズなんですけど、正直にひとりだけ選べと云われたなら、ポールです。
追い詰められた時に恐るべき力を見せ付けるのは、レノンとマッカートニーに相通じます。されど、レノンには「ビートルズを捨てた」と云う大逆転技(「ジョンの魂」)が在ったのです。其れは、カッコいいよ。でもね、ポールには、正攻法で自らの過去に相対するしか出来ないのです。何故なら、彼こそが「ビートルズの音楽を創った」からです。「ABBEY ROAD」を「クズだ」とレノンには云えるけど、ポールには決して云えません。此の作品で、ポールは自ら創造した「怪物ビートルズ」に真っ向勝負を挑み、勝ったのです。其の事実だけでも、余りにも感動的だ。
其れで、レコスケくんは「全部スーパー・デラックス・エディションで買う」なんて云ってますけど、アノですね、ポールがどんだけアルバムを出していると思ってんのよさ。デラックス・エディションを開封したら、小さなフライヤーが入ってて「此れからドンドン出すよ!」って既に6作も予告されてんじゃん。ずっと現役でコンスタントに作品を出しまくってるんだからさ、ソロになってからだって軽く30作位あるわけじゃん。毎月出しても二年以上掛かる大仕事なんだけど、何となく「次は一気に6作出す気マンマン!」な悪寒がするじゃん。最初にレコスケみたいに「スーパー・デラックス・エディション」を買ってしまったら、もう全部それで集めなきゃなんないじゃん。ポールで破産なんて、ヤダよ。
ま、片瀬那奈ちゃんの「TELEPATHY スーパー・デラックス・エディション」なら買うけどね。てか、通常盤、デラックス、スーパー・デラックス、アナログの全部買って、ピクチャー・レーベル違いもコンプリしますよ。
(小島藺子/姫川未亜)
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