nana.812.png

2010年10月16日

「ホワイト・アルバム」全部で5,800円、の三回目

White Album


結局、9枚全部聴くのに半日以上掛かりました。ほとんど聴いたことがあると思っていたのですけど、例えば「I WILL」のセッションで「CAN YOU TAKE ME BACK」(公式盤では「REVOLUTION 9」の前に入っているポールの鼻唄みたいな曲)がフルで演奏されていたり、同じく「I WILL」のセッションで「アンソロジー2」に収録されている「LOS PARANOIAS」もポールが悪ノリ全開で4分近くも歌い続けていたりと、初めて聴けた部分も結構ありました。こーゆーのって、永遠に公式盤にはならないんでしょうね。

「ホワイト・アルバム」を制作する前に、ビートルズはインドに行きまして、収録曲の大半はインドで書かれたと云われています。何も娯楽がなくって、曲を書くくらいしかやることがなかったらしいのですが、兎も角、1968年5月の終わりにジョージ宅でデモを録音しました。全27曲で、内19曲は「ホワイト・アルバム」に収録されます。「ホワイト・アルバム」は全30曲ですが、此のデモで披露されている19曲から派生した楽曲もありますので、所謂ひとつの「Kinfauns Demo」の段階で「既に十二分に曲は在った」わけです。

「Kinfauns Demo」で演奏されて「ホワイト・アルバム」に入らなかった8曲が、また興味深い楽曲群です。まず、ポール作の「JUNK」は、1970年の初ソロ・アルバムまでお蔵入りしますが、此の時点で少なくともメロディーは完成しています。ジョージの3曲は、「SOUR MILK SEA」がジャッキー・ロマックスへの提供曲となり、「NOT GUILTY」は1979年の「慈愛の輝き」で発表、「CIRCLES」も1982年の「ゴーン・トロッポ」で発表と、当時のジョージの扱いの低さが伺える感じです。

余談ですが、「NOT GUILTY」って曲は、あたくしが初めて買った海賊盤に入っていて、それはラビ・シャンカールのサントラから持ってきた全く別の曲だったんですけど、昔はそーゆーインチキが普通だったのですよ。あたくしが其の「インデアン・ループ・トリック」って海賊盤を買った時には、もう「慈愛の輝き」が出た後だったので「おいおい、違うじゃん!」と気付きましたけど、みんな騙されたんです。其れにはニール・イネスがTVで歌った「チーズ&オニオンズ」(後にラトルズで発表)も入っていて「John Lennon OUT TAKE '74?」とか書かれていました。ホント、信じられないでしょうけど、昔の海賊盤ってそんなんばっかだったのですよ。

さて、残りの4曲はジョン作でして、ジョンはインドへ行く前の1968年2月のシングル用セッションでも「ACROSS THE UNIVERSE」をボツにしちゃって、挙げ句にシングルになったポール作の「LADY MADONNA」のプロモ撮影時に録音した「HEY BULLDOG」もお蔵入りさせておりました。此の時も、まぁ「WHAT'S THE NEW MARY JANE」は兎も角、「MEAN MR. MUSTARD」と「POLYTHENE PAM」を「ABBEY ROAD」まで寝かせます。そして、もう1曲は「CHILD OF NATURE」なんですけど、此れは御存知の通り、後にソロで1971年に発表した「ジェラス・ガイ」の原曲です。曲は完成していて、歌詞を全面的に書き直して三年後に発表したのですけど、此の原曲デモは未だに公式音源として陽の目を見ていません。

芳醇な「ホワイト・アルバム」ですら、「JUNK」や「CHILD OF NATURE」と云った超名曲をボツにした上に成り立っているのです。そして、此のアルバムのセッションでは「HEY JUDE」も録音されていますが、ビートルズは其れをシングルでのみ発売し、アルバムには収録しませんでした。二枚組30曲なのに「HEY JUDE」はシングルだから入れないのだよ。う〜む、敵わんナァ。


(小島藺子)


posted by 栗 at 22:33| FAB4 | 更新情報をチェックする