ビートたけし(北野武)は、1947年1月18日生まれの芸術家です。ツービートとしての漫才から始まり、「オールナイト・ニッポン」でのディスク・ジョッキー、俳優、歌手、数々の冠番組での司会、大学教授、東スポ客員編集長、そして「世界のキタノ」と称される映画監督など、多方面で活躍する才人です。
片瀬那奈ちゃんとは、ビートたけしが司会するバラエティ番組で何度も共演していますが、北野武監督映画作品への出演は実現していません。筆者にとっては「師匠であるナンシー関さんの師」とも云えるタケちゃんの存在は大きく、かつては「オールナイト・ニッポン」を録音し何度も聞いたり、レコードも愛聴し、主演作や監督作品はほとんど観ています。でも、何となく片瀬クンとは合わない感じがするので、其れ程にはガチンコ共演を望んではいません。
其の数々の足跡は「Wikipedia」でも参照して頂くとして、矢張りプロレス者といたしましては「TPG(たけしプロレス軍団)」に関して言及しておかねばなりますまい。アノ伝説の両国国技館大暴動を引き起こしたのは、猪木とたけしのタッグだったのです。其の日のメインエベントは「猪木 vs 長州」でした。時は1987年12月27日、約一ヶ月前に前田の顔面キックで戦線離脱した長州の復帰戦です。猪木との頂上対決も全日からUターンして以来初めてで三年振りの事でした。
ところが、セミファイナルで組まれていた「ドラちゃん、稲妻ケンゴ vs マサ斎藤、謎の強敵:ビッグバン・ベイダー」に「TPG」が意義を申し立てたのです。リングに土足で踏み込んだ「たけし」は黙して語らず、弟子のガダルカナル・タカとダンカンが観客を煽りました。曰く「ベイダーと闘うべきなのは、猪木さんじゃないですか?」「猪木、逃げるのかっ!」もう、藤波も長州もポカ〜ンです。猪木劇場が始まってしまい「どーですか?お客さん」の名文句で勝手にメインを「猪木 vs ベイダー」に変えてしまいましたから、さあ大変。
可哀相だったのは変更されて「ドラちゃん、稲妻ケンゴ vs 長州、マサ斎藤」になったセミで闘った四人です。怒号渦巻き、リングに物が投げ込まれ「ヤメロ!ヤメロ!」と前代未聞のコールを受けて、涙ながらに闘いました。勝った長州が「頼むから、試合だけはやらせてくれ」とマイク・アピールしても観客は納得しません。すると、何を思ったのか猪木が登場し「だったらオレが長州とやればいいんだろうっ!どーですか、お客さん」と再度のカード変更を強引に決めて、二試合目の長州を倒し、ベイダーとの初対決に挑みました。
今度は猪木が二試合目とのハンデがあり、なな、なんと秒殺でベイダーに負けます。あっ。タケちゃん達は、とっくに居ません。そもそもベイダーをスカウトしたのはマサ斎藤ですし、ピーター本によれば「本当はセミで『藤波がベイダーに負けるシナリオ』を藤波が拒否したので、猪木が『だったらオレがジョブやればいいんだろっ』と云い放ち、其の後の展開を考えた」らしいです。ピーターは藤波がキライだったみたいで、信憑性は如何なものか?って記述も多いのですけど、たぶん此れは本当でしょう。
猪木と長州の試合をサプライズで二試合も観れるって演出は「してやったり」と猪木は思っていたのでしょうが、当時の観客は過激でした。納得がいかない展開に、客席に火をつけ大暴動へと発展します。また、其れを諌めようとして現れた猪木の「みなさん、ありがとーっ!」とゆう究極の「KY発言」が、正しく火に油を注ぎました。翌日の東スポ一面には大きく「猪木が悪い!」と断罪される事となったので御座居ます。アレレ?タケちゃんの話は何処へ。ま、「Wikipedia」でも読んで頂戴。
此の連載は、それぞれの経歴を詳しく語るのが目的では在りません。片瀬クンとの関わりを繋いでゆく遊びです。其の相関図のど真ん中に居るのは片瀬クンですが、それぞれもまた繋がっている摩訶不思議な絵巻を紡いでゆきます。「えっ?此の人から其の人にゆくの?」ってギャップを狙って構築して居りますので「出落ち」芸なんですよ。繋いだトコが、壱番の笑いドコなのよさ。
さて、北野武監督作品「Dolls(2002年)」に主演したのが、(つづく)
(小島藺子)