出演作:『ミラクルボイス』(TBS系)
放映日:2008年1月3日(木曜日 23:15〜24:39)視聴率 4.9%
(撮影:2007年12月12日〜23日)
2008年の片瀬那奈ちゃんからのお年玉は、久しぶりの主演ドラマでした。毎年新春早々にTVで那奈ちゃんを観れる素敵な世界に生きている僕たちですが、其れはお正月向けのバラエティ番組と云うのが定番です。しかし、2008年は「片瀬那奈が片瀬那奈になって10周年」となる記念すべき年でしたので、気合い充分に女優として堂々の謹賀新年となったのです。W主演を務めるのは塚本高史くんで制作がドリマックスと来れば、そりゃアータ「西豪寺エレナ様物語、ふたたび」じゃまいか。こいつは初春から縁起が好いや。撮影は「暴れん坊ママ」のクランクアップ(2007年12月11日)の翌日から開始されております。「倫子ママ、一夜明ければ、モモコちゃん」だったわけで、恐るべきカメレオン振りです。どんだけ働いてんのよさ。余りの多忙さゆえ、片瀬クンは「暴れん坊ママ」の打ち上げにすら出席出来なかった様です。
物語は、女心が分らない小説家志望の「鳥山充(塚本高史くん)」と、男心が分らず美人なのに無意識に相手を傷つけ振られ捲くっている「手塚モモコ(片瀬那奈ちゃん)」が、異性の心の声を聞ける妖しげな薬を入手し、そのチカラを利用してそれぞれの野望を実現しようとする顛末を描いたものです。充とモモコは偶然に知り合い同じ薬屋で其れを一緒に手に入れますが、其の後は二人別々のストーリーが同時進行してゆきます。
此処では、当然ですが「モモコのお話」を語りましょう。結婚相手を見つけないと実家に連れ戻されお見合いさせられる事になったモモコは、心を読める様になった為に「親友・千鶴(木下あゆ美さん)」の幼馴染みで誠実なイケメンの「古屋秀則(阿部力くん)」と急接近します。ところが、偶然いつもの居酒屋で千鶴の心の声を聞いた充から「千鶴が子供の頃からずっと秀則を想い続けていた事」を知らされてしまい悩んだ末に、「キスしたくらいで彼氏ヅラするのはヤメて下さい!」と残酷に古屋くんを振って、千鶴との仲を取り持つキューピッド役を演じてしまうのです。エレナ様モード全開での弾けた演技と、恋と友情に揺れ動く切ない女心を魅せるシリアスな演技を、自然に「手塚モモコ」の中で両立させた名演です。雨に濡れてのしっとりした熱演あり、一転してオッサン度777%な塚本くんとの楽しく愉快なコンビネーションあり、と振り幅が激し過ぎる役柄を難なく演じ切ってしまった姿を観て、2008年も片瀬那奈クンは益々大活躍して下さると確信出来たドラマでした。
スタッフが「鉄板少女アカネ!!」とほとんど一緒で、塚本くんと共演なのですから、明らかに「西豪寺エレナ様の逆襲」と呼ぶべき作品でしょう。志半ばで打ち切られたアカネの無念を、スッキリと晴らして頂きましたよ。豊かな表情で振り切れ捲る演技には圧倒されますが、エレナ様からの壱年が片瀬那奈を更なる高見へと導いていた事実をも大いに感じさせられる作品となりました。音楽にはビートルズ・ナムバーが使われており、余りにもベタな「ヘイ・ジュード」や「レリビ」をクライマックスに持って来る一方で、マニアック過ぎる仏蘭西語カヴァーなども流している遊び心にもニヤリとさせられたものです。此れを書く為に録画したDVDを観たらCMがカットされていなかったので、何故かしらん?と思えば、劇中に明治のチョコレートとかスズキの車とかスポンサーの商品をこれ見よがしに多用されてて、千鶴役の木下あゆ美さんがスズキのCMにも出てたりしてたのね。此処まで堂々とやらかすのが面白いと思って遺したのか、当時は地デジが壱回しかダビング出来なかったからCMカットを回避したのかは定かでは在りません。
此処に来て「片瀬クンって、深夜枠ドラマの方がより自由奔放で面白いナァ」とも思えて参りました。更に、此の作品は主演ですが、塚本くんとのW主演でして、ハッキリ云って「もう別に主演じゃなくっても好いよ」とも思えたのです。例えば「月9」とかに出て誰にでも出来る様なお人形さんみたいな役で主演されるよりは、奇抜な演技を許される助演の方がずっと片瀬クンの魅力を伝えてくれると思えました。本来なら、片瀬那奈は主演女優の道を歩んでいたのでしょう。「歌手時代がなければ、危なかったナァ」と、此の頃にはハッキリと分りました。全く以て、御本尊様は「記録し甲斐が在り過ぎる御方」ですよ。
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(小島藺子/姫川未亜)