2002年は、今後もつづく長い「片瀬那奈歴」に於いて最初のエポック・メーキングとなった時でした。簡潔に云えば、片瀬那奈は其れまでの四年間で築き上げたグラビア・アイドルやアイドル女優のキャリアを捨てたのです。
「プリティガール」を最後に、唐突に片瀬は女優活動を休止しました。そして、其れは後になって解った事実です。「プリティガール」終了後の2002年の春に、これまた突然の「グラビア卒業宣言」が発せられます。そして、此の年限りで「きれいなおねえさん」も降板します。そんな不穏な動きの中で、女性向けファッション誌を飾る那奈ちゃんの姿を多く見掛ける様にもなりました。明らかに、那奈ちゃんが変わってゆく予感が在ったのです。
ハッキリ云っちゃうと、どんなにシークレットで進行していても、片瀬那奈が歌手デビュウするってのはファンには衆知の事実でした。問題は「歌手に専念する」なんてトンデモな事を企んでいるなんて、小指の先ほども想定していなかった事なのだよ。僕は「那奈ちゃんが歌もやるのか。そりゃ好いね!プロモとか楽しみだナァ」なんぞとお気楽に考えていました。イベントも沢山やりそうだって情報も得て、本人に逢えるかも?なんてウキウキ気分でいたのです。よもや、女優活動を休止してまで音楽活動に専念していたとは、、、。
2002年12月4日、片瀬那奈は歌手デビュウします。そして、其れは「女優・片瀬那奈の封印」をも意味していました。トリプルA面と云う破天荒なデビュウ盤を前にして、僕は底知れぬ怒りが込み上げて来るのを押さえ切れませんでした。確かに、那奈ちゃんが歌ってくれたのは嬉しかった。でも、だからって女優をヤメちゃうなんて有り得ないじゃん!「歌手活動をするので、グラビアや女優は休止して専念します」って、アノですね、そんな事をヌカして実行した芸能人なんて居ないっす。何を考えてんのよさ、片瀬クン!と叫びたいっ。ボキの大切な「グラビア・アイドル女優・那奈ちゃん」を返して下さいっ。
そんな那奈ヲタの勝手な期待を完全無欠に叩き潰して、片瀬那奈は音楽活動に専念してしまいました。こんな風にファンを置いてけぼりにする存在を、僕は初めてリアルタイムで体験したのです。「おいおい、此れってビートルズがライヴをヤメちゃったとかゆー感じなんじゃまいか?」とドキドキしてしまったのです。でも、其れは冗談半分なお遊び気分でも在りました。
「歌手専念とか分け分んない事を云ってないで、女優も併行して、普通にアイドルでいて頂戴!」ってのが本音でした。ズバリと云いますけど、当時の僕は那奈ちゃんに「音楽活動専念」なんて誇大妄想的な期待なんかしていなかったのです。アイドルの余技として歌も歌うって感じの、よく有りがちなお気楽な企画だと思っていました。だって、歌手デビュウ当時の片瀬那奈は21才ですよ。そんな崖っぷちに立つ様な「歌手専念宣言」なんてする必要がないじゃありませんか。多くのファンだって、おんなじ気持ちだったと思います。勝手に活動の場を完全に変えてしまったのですから、其れまでに培ったファンに対する明らかな裏切り行為です。なのに、片瀬那奈は我を通してやってしまいました。よくもまぁ、事務所が許したもんです。那奈ちゃんは、恵まれてるよ。そして、其れも才能です。
(小島藺子/姫川未亜)