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2009年12月05日

「夢みる歌謡曲」第那奈章: 片瀬那奈がきこえる
#085:「Rock'n Rouge」

EXTENDED(初回)(CCCD)(DVD付) EXTENDED (CCCD) Rock’n Rouge(CCCD)


 作詞:松本 隆
 作曲:呉田軽穂
 編曲:Nao Tanaka

 オリジナル:松田聖子(1984年、オリコン1位)

 品番:AVCD-17426/B、AVCD-17427(ミニアルバム「Extended」04)

 発売日:2004年4月21日(オリコン最高24位)


アルバム中盤で「Extended」の世界観は一転し明るくなります。丁度真ん中の四曲目に松田聖子のカヴァー「Rock'n Rouge」が登場し、前半の明菜的な負のオーラを一瞬にして消してしまうのです。1980年代の女性アイドル、いや日本の歌手を一人選ぶなら、其れは「松田聖子」です。「1980年代の松田聖子」とは彼女自身だけを指すのではなく、其のプロダクションの総称でした。作詞の松本隆も作曲の大瀧、細野、ユーミン等も、そして創られた楽曲をも含めて僕らは「松田聖子」と認識しました。

「松田聖子」がオリコン連続首位記録を続けて居た時代の楽曲は、パワーが段違いです。後に彼女の記録は破られましたが、彼女が塗り替えた「ピンク・レディー」と彼女の楽曲は別格です。其れは「オリコン首位」=「誰もが知っている歌」と云う時代の出来事だったからです。

兎に角、元の楽曲がしっかりとしていますので、此の片瀬那奈によるカヴァーも楽曲に引っぱられる様に好い作品になりました。個人的には、ようやく四曲目にして明るい歌を片瀬が歌っている事に救われました。アレンジも「ブラス・ロック風の派手な感じで典型的な80年代前半のアイドル歌謡だった原曲」とは違う「片瀬式なモノ」に変わっていて、片瀬の歌唱も丁寧で溌剌としています。矢張り、片瀬にはポジティブな歌が似合います。

編曲を担当した「田中 直」サンは「BOA」との仕事で有名ですが、片瀬と同い年(1981年生まれ)で当時は新鋭でした。彼は「ミ・アモーレ」等の「Extended」の半数以上をアレンジした「平田祥一郎」サンや、「Shine」や「Necessary」の編曲で御馴染みの「土肥真生」サンと同じ「SUPALOVE」に所属するサウンド・クリエーターです。「土肥さん→平田さん→田中さん」の流れでの抜擢だったのでしょう。片瀬は同世代の新鋭とも多くの仕事を遺しました。私生活でもクラブ・シーンで現役バリバリだった(ま、現在でも普通に遊んでますが)片瀬の鋭い嗅覚が、新たな才能を発掘する事に繋がっていたのです。其れは、自らもDJとして活動する片瀬ならではの感覚です。片瀬が尊敬する「MADONNA」の様に「スーパーDJアーティスト」の領域に片瀬は居たのです。

マドンナの凄さとは、昨今「DJ、サウンド・クリエーター、プロデューサー」等が主導権を握る音楽界で、自分を貫いて居る事です。例えば「SASHA」がリミックスしたら、現在では其れは「SASHAの作品」と認識されるのですが、マドンナは其れを許さないのです。アーティストを料理するDJすらも、更に手のひらに乗せてしまうのがマドンナです。片瀬がマドンナを敬愛するのは、其の絶対女王的な生き方への憧憬ゆえなのです。片瀬那奈の本質は、実は「女王気質」なのだと、あたくしは確信しています。


(小島藺子)



posted by 栗 at 04:01| YUMEKAYO | 更新情報をチェックする