作詞:及川眠子
作曲:尾関昌也
編曲:CMJK
オリジナル:Wink(1989年、オリコン1位、レコード大賞受賞)
品番:AVCD-17426/B、AVCD-17427(ミニアルバム「Extended」02)
発売日:2004年4月21日(オリコン最高24位)
二曲目に登場するのは、「ミ・アモーレ」同様にレコード大賞を受賞した「Wink」の代表曲「淋しい熱帯魚」です。あまりにも有名な楽曲を連発して来ました。
アレンジを担当したのは元「電気グルーブ」の「CMJK(北川潤)」で、彼は次の「TANGO NOIR」の編曲(クレジットはないが、両曲共にプログラミングも彼だと思われる)も担当していてアルバム前半に大いに貢献しています。日本のテクノ・シーンの先駆者で在る彼の手腕は、特に元々が「和製ユーロビート歌謡」だった此の楽曲では見事に活かされていると思います。
片瀬自身も積極的にカヴァーしようと望んだ楽曲だった様で、原曲がデュエット(ま、ほとんどユニゾンですが)の曲を敢えてソロ中心の歌唱で意欲的に挑戦しています。アルバム発表後の実演でも定番メニューとなりましたし、後にバラエティー番組で相田翔子サンと共演した際には「子供の時からファンで、カヴァーもさせていただきました」と挨拶していましたので、かなり思い入れがある曲だったのでしょう。(余談ですが、片瀬は女優らしく「コトノハを聴き取れる様に丁寧に歌う」ので、此のカヴァーを聴いて初めて「ハート・オン・ウェーヴ」と云う歌詞だと分りました。オリジナルを聴いてて、ずっと「はろーえ〜」って何だべさ?と思っていたのよさ。)
されど、世の中には好意的な方々だけが存在するのでは無いのです。作詞を担当した及川先生は、同時期に同じく此の曲をカヴァーした「W(辻ちゃん&加護ちゃん)」と片瀬の双方を聴き「アレンジが酷い!船山基紀は偉大だ!」と感情的に怒り一刀両断しました。彼女の意見に代表される様に、カヴァーとは原曲と比較される運命に在り、特に原曲に愛着を持つ者からは厳しい目で見られるのです。
個人的には、片瀬のカヴァー企画の中では未だ出来が好い方だと思います。片瀬は正直なので、カヴァー企画では出来不出来がハッキリしています。「情感を込めて歌っているか、楽譜をなぞって平坦に流しているか」の違いで完成度が違うのです。簡単に云えば「自分が望んでカヴァーしたか、スタッフに歌わされたか」が明確に分ってしまう程に「歌唱の差」が在ります。たった那奈曲なのですから、片瀬主導で選曲させればもう少しはマシになったでしょう。そもそもカヴァー企画は、歌い手が原曲を愛していなければ基本的に成立しません。片瀬が聴いた事もない楽曲を選曲し歌わせたスタッフは、音楽を愚弄していますよ。
和製カイリーと称された片瀬那奈が「其のカイリーがユーロビートのアイドル時代に放ったヒット曲を翻訳した Wink を、21世紀型カイリーのアレンジでカヴァーする」と云う輪廻転生的なカヴァーとしても「淋しい熱帯魚」は捉える事が出来ます。そんな意味でも意義のある作品ですが、気になるのは矢張り「詩」です。先行シングルの二曲も、此の楽曲も「ネガティブで弱い女の子」の歌なのです。其れが1980年代の女性アイドル的な世界観でした。2004年では明らかに時代錯誤ですし、特に一貫して前向きな歌を歌い続けて来た片瀬には全く似合わないと思えてなりません。そもそもあたくしはカヴァー企画自体が気に入らないのでナンダカンダと文句を云ってますけど、実演で此の曲を歌う片瀬は「可愛らしかった」と正直に云いましょう。此れと「C-Girl」の実演は、萌えました。
(小島藺子)