作詞:秋元 康
作曲:後藤次利
編曲:Shoichiro Hirata
オリジナル:工藤静香(1987年、オリコン1位)
品番:AVCD-30567
発売日:2004年3月31日(オリコン最高38位)
片瀬那奈の6枚目のシングルで結果的にラスト・シングルとなった「禁断のテレパシー」は、前作同様に三曲入りの低価格通常盤のみの発売となりました。
カヴァー企画だった「EXTENDED SESSIONS」は先行シングル2枚とミニアルバムの三種で発表されます。其のジャケットでのビジュアルも統一されていて、片瀬のスタイリングはまるでグラビア時代に回帰した様な露出過多なモノでした。歌手転向以来、グラビア展開をヤメて女性ファッション誌へと活動の場を移し、明らかに女性ファンに対して積極的にアピールしていたスタッフですが、迷いが生じた様です。
かつての男性ファンにも再び目を向けてもらおうとの姿勢は良いのですけど、低価格盤にしてピクチャー・レーベル多種封入りやDVD付きをヤメたのは頂けません。ミニアルバムの「Extended」では再度その商法へ戻りますが、其処には先行シングル曲も収録されているのです。タイトル曲と其のリミックス及びカラオケのみが収録され通常盤しか発売されないシングルで、一ヶ月もせずに収録アルバムが出ると予告されていたのでは、余程のファンでなければ購買意欲は湧きません。
更に、那奈曲発表されたカヴァー作品の中でも、此の「禁断のテレパシー」は最も完成度が低い作品だと思えるのです。片瀬自身が「カヴァーするまで原曲を聴いた事がなかった」と発言した通りに、正に「歌わされた」感が其の情感の無い歌唱から伝わります。かつてのアイドル歌謡を「エレクトリック・ダンス・ポップ」にアレンジする試みにしても、最も面白味に欠ける出来映えです。もう此れは「選曲ミス」と云うしか在りません。其れまでのオリジナル路線で常にポジティブな詩を歌い続けた片瀬に、何故こんなネガティブな男性目線の下らない詩を歌わせたのでしょう?
カヴァー企画自体は意義のある試みだったとは思います。然し乍ら、余りにもプロダクションが出鱈目だ。確かに、根底に流れる片瀬的な音楽観は一貫しています。されど、特に片瀬の様にトータル・コンセプトで音楽活動を進めて来たアーティストにとって、中途半端な路線変更は迷走へと向かわせます。ファン拡大どころか、其れまで育てたファンすらも失った結果がチャートにも明らかに出ています。片瀬那奈のラスト・シングルがこんな凡庸な作品になってしまったのは、誠に遺憾に存じます。
(小島藺子)