作詞:康 珍化
作曲:松岡直也
編曲:Shoichiro Hirata
オリジナル:中森明菜(1985年、オリコン1位、レコード大賞受賞)
品番:AVCD-30566
発売日:2004年3月10日(オリコン最高39位)
日本テレビ系「汐留スタイル!」Stylish Play
前作から五ヶ月近く経過し、ようやく片瀬那奈の5枚目のシングルが発売されました。内容は既に年頭から告知され、2月頭の「777 Vol.1」から公開されていた中森明菜のカヴァー曲「ミ・アモーレ」でした。
オリジナルからカヴァー路線への方向転換だけでなく、其れまでの「売り」だったピクチャーレーベルもDVD付属も撤廃し、単に「ミ・アモーレ」と其の別ミックスとカラオケの三曲入りでスリムケース仕様の低価格通常盤のみの発売となりました。更に、ジャケットでの片瀬は「ほとんどビキニ」と云える程に露出過多な格好で、此の「キャバ嬢路線」はカヴァー企画で一貫したビジュアルとなります。
数在る中森明菜の楽曲の中でも1985年のレコード大賞を受賞した代表曲を、片瀬サイドは選びました。誰もが知っている超有名曲であり、オリジナルと比較されるのは必須です。其のコンセプトはカヴァー企画全体にも貫かれます。みんなが原曲を知っている事が重要だったのです。
片瀬那奈のカヴァー路線とは、片瀬が始めた新たなる音楽をより大衆化する試行でした。楽曲こそカヴァーですが、其のアレンジは其れまでの路線と変わらぬ「カタセ式電子音楽」だった。スタッフサイドはより多くのセールスを目論んでカヴァー路線へと向かったのでしょう。片瀬自身もTV音楽番組へも積極的に出演し、露出の多い衣装で歌い踊りプロモーションに務めました。然し乍ら、低価格の通常盤のみと勝負を賭けた此のシングルは最高39位とかろうじて「トップ40」入りした「片瀬那奈シングル史上最低ランク」を記録してしまいます。其れまでの四枚のオリジナル路線シングルはすべて「トップ20」入りしました。スタッフは其れでは満足出来ず「トップ10」入りを目指してカヴァー路線へ向かったのだと思います。でも、其れは完全に裏目に出てしまいました。
片瀬が当時自信満々で「カヴァーというより曲を借りてアレンジしてる感じ。(原曲と)別々に聞いてギャップを感じて貰えれば…」と語った通り、ラテンのアレンジでサルサを取り入れたダンスパフォーマンスは後の舞台「フラガール」での熱演の発芽を感じさせますし、片瀬の歌唱も低音を中心とした其れまでの「テレパシーヴォイス」とは違う声域を披露していて、革新的なカヴァー第壱弾だったとは思います。結果的には其の挑戦は商業的には失敗しますが、後のアイドル歌謡界の確かな指針となりました。片瀬那奈は、早過ぎたのです。
(小島藺子)