さて「いきなりだナァ」で、また新連載を開始します。とりあえず「ONDO」カテゴリでのスタートになりますが、好評ならば独立させる予定です。
此の連載で語るのは「アイドル歌謡に影響を与えた THE BEATLES 論」です。2009年9月9日、実に22年振りに THE BEATLES 音源が公式でリマスターされ公表されました。元々の音源は、1962年〜1970年に発売され実質的には「たったの那奈年間」に録音された大昔の音楽が「所詮は単にリマスターされただけの再発商品」に過ぎないのに全世界で爆発的に売れてしまいました。此れでは現役のアーティストは「くぅ〜、、、」と云うしか在りません。今年(2009年)は、マイケル・ジャクソンの夭折も在り、昨今の「CDが売れない時代」を救ったのは、正に前世紀の遺物で在る「THE BEATLES」とマイコーの旧譜だったのでした。
いよいよ、ロックとかポップスと呼ばれる「かつては若者の文化で在った芸術」も、気が付けば「クラシック」や「ジャズ」と同様に愛される「オッサンの慰みもの」と化したのでしょうか?然し乍ら、オヤジの懐古趣味だけで片付けるには「THE BEATLES 2009」の狂想劇は説明出来ません。事実、少なくとも彼等の現役時代には「ビートルズを聴けば不良になる」と云われ、あたくしよりも一回り位年長の当時からのファンで在った諸先輩は異口同音に「クラスでビートルズを聴いていたのは一人か二人のマイノリティーだった」と云います。「赤盤青盤(1973年発売のジョージ・ハリスン選曲による解散後初の総体的なベスト盤)世代」で、10代前半にソロ作品全盛時代の洗礼(驚くべき事に、1970年代前半はジョン、ポール、ジョージ、リンゴの元ビートルズ全員が代わる代わるに全米チャートで首位を獲得する「夢の様な日々」だったのです!)をリアルタイムで受けたあたくしも証言しますが、1970年代ですら「ビートルズを聴いて居るのはクラスで一人か二人」だったし、当時のポールを真似た「一寸後ろ髪が長い髪型」をしただけで「不良」と呼ばれました。
ビートルズが認知されたのは、1980年12月8日の悲劇以降です。ジョン・レノンが殺されて、初めて世間は彼等を「安全なモノ」と認定したのです。でも、其れ以前から「ロックの人」だった連中は納得しなかった。彼等は其の「ロック魂」をいびつなカタチで露呈し、其れに依ってビートルズを後世に遺そうと、もがきました。現役時代から彼等は多くの邦人アーティストにも影響を与えましたが、其れがより大衆化してゆくのは解散後です。
「えっ。こんな処にビートルズ?」と云う珍現象は、2009年も止まるどころか新たなリマスターの登場で益々露見するのです。例えば、かつて大場久美子が「SGT. PEPPER'S」の替え歌で実演を始めたり、菊池桃子が「ペパーランド」そのまんまのインストでアルバム冒頭を飾った事実など、屁の河童!な摩訶不思議な「アイドルによるビートルズ」は存在します。
例えば、此処に「1990年アイドル冬の時代に咲いた徒花」と呼ばれる「増田未亜ちゃん」のシングル盤「アブナイ CANDY」が在ります。全体的にモータウンのリズム・パターンを借用したお手軽なアイドル歌謡に過ぎないのですが、間奏に注目して下さい。其れはビートルズのサイケ時代最高傑作と謳われる名曲「A DAY IN THE LIFE」の間奏と寸分に違わない旋律なのです。例のジョンのAメロからポールの中間部に移行し、ふたたびジョンのパートへ戻る時に流れるオーケストラに合わせて「あ〜ああ、あ〜〜」とユニゾンでも歌われるフレーズが「チープなシンセ」で再現されて居るのです。
何故?どーして此処で「A DAY IN THE LIFE」が出て来るのか?作曲した佐藤健サンと編曲した戸塚修サンを小一時間問い詰めたい程に「いきなりだナァ!」で増田未亜ちゃん楽曲は「一瞬だけサイケデリックになる」のでした。「おいおい、アブナイ CANDYって、もしかしてアレ?」とでも示唆したかったのでしょうか?1990年と云えば「バブル崩壊前後」ですから、そんな穿った見方もしてしまいますが、モータウン風のシュープリームス「恋はあせらず」あたりを下敷きにした曲で現れるビートルズ、しかも「A DAY IN THE LIFE」って展開に何か深いモノを感じてしまうのです。
てなわけで、枕は此の位にしまして本論に入りましょう。連載中断中の「FAB4」等の「旧コピコン派記事」と、此処のメインで在る「片瀬那奈論」を繋ぐ「ミッシング・リンク」のひとつとして展開してゆきますので、ま、コアな片だけ楽しんで頂戴。
(小島藺子/鳴海ルナ)