出演作:『美少女H2』第18話「最後のデート」他(フジテレビ系)
放映日:1999年3月9日(1:20〜1:50)、他
映像作品:ヴィデオ「美少女H28 〜最後のデート〜 片瀬那奈」
(ポニーキャニオン PCVC-10905)1999年9月17日発売
片瀬那奈ちゃんの女優デビュー作品として紹介されている『美少女H2』第18話「最後のデート」ですが、果たして此れが本来の意味での「女優デビュー」と云えるのか?との疑問が在ります。御存知の通り「美少女H」シリーズとは、フジテレビが「未来の月9女優養成番組」として企画制作した深夜番組です。其のメムバーには、内山理名、水川あさみ、小池栄子、佐藤江梨子、しらたひさこ(現・白田久子)、等の片瀬クンと同世代の当時10代中頃だった新人が抜擢され、「全員、芸名の侭で登場する」と云う言わば「新人のお披露目」としての「プロモーション・ヴィデオ」的な演出でした。毎回、主演を務める新人の脇を固めるのも「美少女H」の面々で、片瀬クンも主演作「最後のデート」以外に二作(20話「夢のかなう場所」3/23放映、最終話「卒業旅行」3/30放映)で助演しています。公式記録との放映日に壱日の誤差が在るのは、業界時間を排除する此処の「リアリズム」ゆえにです。
つまり片瀬那奈ちゃんの女優デビュー作とされる「最後のデート」では、「片瀬那奈が片瀬那奈を演じる」と云う「不条理な事態」となりました。其れでも若干17才の片瀬那奈自身は真剣そのもので、「モデルの片手間ではなく、今後は女優として頑張ります!」などと大真面目に宣言して挑んだのでした。「架空の自分を演じる」との難役を、贔屓目抜きにドラマ初主演の片瀬那奈ちゃんは真摯に演じ、深夜に其れを観た僕たちの心を鷲掴みにしました。
17才の片瀬那奈ちゃんには「自分は出来るコだ」との自惚れに近い自信が在ったのでしょう。現に小さい頃から何度もスカウトされながらも「あたしはヘアメイクさんみたいな裏方になりたいのよ!」と固辞して来たのです。ようやくモデルとしてデビューした時ですら「将来ヘアメイクさんになった時に活かされる勉強だから。チョットやってダメならヤメれば好い。」とお気楽モードだったからこそ、ハプニングにも動じなかったのでしょう。「芸能界なんて、チョロイ、チョロイ。海外にも行けるし、メッチャ楽しい!女優?やります!そんなの簡単でしょ?」ってな気持ちで臨んで「やっぱ、あたしって天才じゃん。完璧な女優デビューまでしちゃったよ。がっはっはっは!」なんぞとタカを括っておったわけですよ。
されど、17才の片瀬那奈ちゃんは出来上がった作品を観て絶望したのです。「何て演技が下手で、ブスに映っているんだろう」と激しく落ち込み、其処で諦めずに「悔しくて、もっと演技が上手くなって、いい作品を残したい」と誓ったのでした。そして次作の「GTOドラマスペシャル」(1999年、関西テレビ)で「伝説の台本(シュガーちゃん命名)」と称される努力を重ね「眞なる女優道」を歩み始めたのでした。
個人的には片瀬那奈ちゃんの正式な女優デビュー作品は「GTOドラマスペシャル」だと認識しています。此の「美少女H2」で演じた「片瀬那奈」と云う役柄は、あくまでも「大いなる助走」期間を垣間見せてくれたと思っているのです。なのに、其れが事実とは云え、未だに片瀬那奈の女優デビュー作は「最後のデート」と公式データで記されています。此れは、深夜番組として流されヴィデオ化されたもののすぐに廃盤となりDVD化もされない映像作品です。多くのファンは「幻のデビュー作」と認識しているかもしれないマイナー作品なのです。「黒歴史」化しても、問題視すらされなかったでしょう。でも、此の作品には前述の通りに片瀬那奈本人の「大いなる挫折と屈辱」が在り、彼女が其れを「忘れてはいけない!」と思っているからこそ、敢えて「デビュー作」として明記しているのではないでしょうか?
さて、肝心の「最後のデート」での「片瀬那奈」が演じた「片瀬那奈」を語らねばなりませんね。17才の片瀬那奈ちゃんは、有無を云わさずに「可愛い!」です。正に「ダイアモンドの原石」と云うべき愛すべき「アイドル:片瀬那奈」が此処に居ます。ストーリーは単純で、地方在住の高校生カップルが大学に進学する事になって「彼女・片瀬那奈」は東京の短大へ進学し「彼・悟」は京都の大学へと離れ離れになるので「最後のデート」をして綺麗に別れる事にしたものの、女友達の横やり等で滅茶苦茶になってしまい、、、って「おいおい、勝手にやってろよ!」的な稚拙過ぎる「痴話喧嘩恋噺」です。こんな脚本じゃ、天下無敵の片瀬那奈サマが舐めてかかっても致し方無いでしょう。でも、本人が幻滅した程に酷いのか?と云えば、全くそんな事は無く「美少女H」を愛した面々(あたくしも含む)も「よくぞ、此処で片瀬那奈と云う逸材を抜擢したっ!異議無しっ!!」と絶賛したのです。
そう、片瀬那奈ちゃんは初期「美少女H」プロジェクトでは其の名前すら挙がっていませんでした。其れは当然で、彼女はモデル・デビューすらしていなかったのです。シリーズの終わりに現れた片瀬クンは正しく「今後、新たな逸材をオーディションし追加加入予定」と企画書に記された「隠し玉」でした。ニコニコ笑って歩く水着ショーでの16才の片瀬那奈ちゃんしか知らなかった僕たちの前に、17才の「片瀬那奈」は「片瀬那奈」を演じて躍動し話し出したのです。片瀬那奈のプロモーション映像としてなら、完璧な作品です。でも、此れはあくまでも女優「プレ・デビュー」作品と僕は捉えています。流石に此の作品を観て後の「大化け」を予測する事は出来ませんでした。僕が「おいおい、コノコって変じゃん!」と気付くのは、約半年後の「天国のKiss」を観た時だったのです。兎も角、此れは「片瀬那奈」の記念すべき「女優デビュー作品」です。多くの処女作が内包する「デビュー作」ならではの「初々しさ」や「可能性」を秘めています。那奈ヲタなら必見!のお宝映像です。てかさ「美少女H」をDVD化しないのは、何故?思惑通りに2009年の現在でも其の多くが第一線で活躍中じゃん。彼女達の貴重なデビュー作品が満載なんですよっ。お台場さん、箱で出してよ。
えっと、もうお気付きの片も多くおられるでしょうが、此の「エレナ第二部」で在る「怪優・片瀬那奈・進化論」は、時系列的に彼女が演じた役を徹底的に考察して行きます。音源の方では「片瀬那奈がきこえる」で絶好調連載中の試みを、女優でもやらかそうと云うわけです。「全曲解説」と同様に、既に別サイト「CHANGES:怪優・片瀬那奈がゆく」として数年前から試行していた企画ですが、そろそろ「本家:ゼンキロ」で完全版を公開する時期が来たと考えました。歌手篇と併行して、じっくりと考察して行きますので、お楽しみにネ☆
(小島藺子/姫川未亜)