Lyrics:NANA KATASE、Satomi & rom△ntic high
Music:Ryouki Matsumoto
Arrangement:Manao Dai
Strings Arrangement:Yasuaki Maejima
品番:AVCD-30448/B、AVCD-30449
発売日:2003年5月28日(オリコン最高19位)
TBS系ドラマ「こちら本池上署」主題歌
片瀬那奈の3rd Single「Shine / REVENGE〜未来への誓い〜」は、音盤としては其れまでの様に「リミックス」を収録せず、タイトル・トラック2曲と其のカラオケの計4トラック収録の「普通じゃん!」なカタチになりました。然し乍ら、当然の如く「初回限定ピクチャー・レーベル三種封入りDVD付き」と「通常盤初回限定別ピクチャー・レーベル」と通常盤の「計5種」が平然と店頭に並び、ファンが全てを揃える為に沢山購入したからだけでは無いのでしょうけど、此のシングルはオリコンで19位まで上がっています。片瀬の6枚在るシングルの中でデビュー盤に続く「第二位」のヒット作となったのですが、未だに正当な評価が成されていない作品だと強く思います。されど、地上波の音楽番組でも最も多く披露された「クレオパトラ風」な片瀬自身によるコンセプチャルな衣装やヘアメイクは、2009年の現在に「ジョージア」のCMでも鮮やかに蘇った程に「エヴァーグリーンな輝き」を放ち続けています。さあ、今こそ「Shine」を再評価しましょう。
あたくしは発売日前日にフライングで地元のお店でDVD付きを買いましたが、翌日の残業後に閉店間際の渋谷タワレコまで行き「通常盤初回限定別ピクチャー・レーベル」を購入しました。其れは、渋谷タワレコで購入するとポスターも付き、更には「イベント参加券」が貰えるからでした。何故前日に行かなかったかと云うと「イベント参加券は発売日当日より配布」となっていたからです。其れでも商品は前日には店頭に並んでいるのですから、聴きたくて買ってしまったのだ。其れで「那奈ちゃんって何種類も出してくれて親切だナァ」なんぞと「avex 商法」に踊らされているのに「シアワセ」な気分になってしまうのでした。次作のアルバム「TELEPATHY」も色んなイベント参加券が付いてましたから、五種類出たのは嬉しかったりしました。「やっぱ、おんなじのを何枚も買うのはアレだけど、那奈ちゃんはちゃんと沢山出してくれるから自然と集まるし、好いよね」なんぞと、那奈ヲタはみんな思っていたのです。だけど、あのさ、音源はおんなじだから。レーベルの写真が違うだけだったんだからね。しかも「封入り」で、買って開けなきゃ分んなかったんだからさ。「片瀬は、大人のファン(平たく云えば、オヤジ)を相手にしている」って事だと思いましたよっ。
前作『Babe』で最高傑作シングル盤を出した片瀬でしたが、彼女の音楽性はヴァラエティに富んだ『Babe』の4トラックだけで収まらなかった。キラー・チューン「Babe」と其れを解体し片瀬の裏メロと男性ラップが絡み合うリミックスをメインに、ギターのカッティングと唸りを上げるベースが聴ける片瀬楽曲で最も「バンド演奏での実演」を期待させた「MY LIFE」、そして「ひとり三重唱」の極めつけなR&Bバラッド「for you」をサンドイッチした芳醇な音楽世界は、衝撃のデビュー盤も含めて「アルバムがいよいよ楽しみだぜっ!」と大いに期待させるには充分過ぎました。しかし、片瀬は未だ切り札を持っていました。其れが「Shine / REVENGE〜未来への誓い〜」と云う「正統派バラード二曲カップリング」の三枚目シングルです。
特に事実上はタイトル曲とも云える「Shine」は、片瀬那奈の最重要曲だと断言しましょう。此の楽曲で、片瀬はストリングスを導入しています。エレクトリック・ポップスを志向した片瀬が、初めて「シンセサイザー」では無く「生の管弦楽団」と「電気式音源」を融合した演奏に乗せてバラードを歌いました。此の楽曲は後にアルバムで「片瀬式な電気式リミックス」でも再現されますが、本来ならば其のヴァージョンがシングルとして出ても不思議ではなかった。事実、カップリングの「REVENGE〜未来への誓い〜」は、其のリミックス同様に「電気式編曲でのバラード」として既に提示されています。
片瀬が試みたのは、例えるなら THE BEATLES 時代のジョージ・ハリスンが印度音楽とバンド演奏及びオーケストラを融合し「ラガー・ロック」を創造した歴史的事実とおんなじ「革命的な実験」でした。既に開発した「片瀬那奈の音楽としても成立していたアレンジ」では、彼女は納得しなかったのです。片瀬那奈が嗜好する「プログレッシブ・ハウス」を最も具現化したバッキング・トラックを起用し実現させたのが「Shine」です。カップリングされたカラオケを聴いてみるが好い。何なんだ、此の奇妙奇天烈なオケは?ネオ・ナイアガラ・サウンドかよ?明らかに生演奏と電気式が喧嘩をしています。格闘し絡み合うプロレス絵巻の様な複雑怪奇な演奏なのです。カラオケを聴いて此れ程までに興奮したのは「あなたが唄うナイアガラ音頭」(純然たる音頭の和太鼓、三味線、尺八などの和楽器と「スティーヴィー・ワンダー風に弾いてよ」と大瀧師匠が命じた坂本龍一のクラヴィネットが絡み合う前代未聞の衝撃音楽)以来の事でした。ところがだ、其れに片瀬の「テレパシー・ヴォイス」が乗せられた瞬間に「普通のバラード」に聴こえてしまうのだよ。此れは「物凄い音楽」です。明らかに常軌を逸した新たなる演奏をバックにして、片瀬は其れを大衆音楽として平然と成立させ、うっかり公開してしまったのです。
ハッキリ云いましょう。此れは「カニエ・ウエストの先取り」でした。カニエが大ブレイクした時に、あたくしは猛烈な既視感を感じた。おいおい、此れって「Shine」じゃん!と。確かに、2003年にカニエはもう居ました。でも、ほとんど知られていなかった。されど、片瀬那奈は聴いていた。2003年7月の渋谷HMVでのイベントで「ハウスやテクノのコーナーは見て来ましたか?」との問いに、片瀬は平然と「ええ、でも、あたしが持ってるのしか置いてなかったよ」と云い放ったのです。事実、既に片瀬は当時でも数千枚のCDを所有するコアな洋楽マニアでも在ったのでした。「カニエが来る!」との確信が片瀬には在ったのでしょう。早過ぎるんだよ、那奈ちゃん。
此の楽曲を聴いて、あたくしは「片瀬那奈は音楽をやるべきだったんだ」と、ようやく思い知りました。此れは明らかに「ROCK」でした。こんな不可思議な音楽を、初めて聴いたのです。みんな「何故?未亜ちゃんがこんな曲のどこに惹かれるのか、さっぱり分んないよ。只のバラードじゃない?」と云った。かつて、THE BEATLES が「YESTERDAY」を創造した時に、其の革新性は理解されなかった。本人達でさえ、理解していなかった。片瀬那奈の「Shine」は、日本大衆音楽史に永遠に遺る「革命的な楽曲」です。これぞ本当の「プログレッシブ・テクノ・ハウス・ロッカバラッド」なのだよ。そんな摩訶不思議な音楽絵巻を、片瀬那奈は人気TVドラマの主題歌としても成立してしまう「歌謡曲」として世に出したのです。ストリングス・アレンジを担当した前田さんが同じく編曲したKANちゃんの名曲のタイトルの如く、半世紀後にも、いや「永遠に此の楽曲は遺る」と断言します。
今後も此の楽曲は、何度もカタチを変えて登場します。先を急げば、第一期音楽活動の実質的な最後も「此の楽曲で終った」のです。片瀬那奈の音楽を語る上で、最も重要な楽曲で在る「Shine」の全貌は、未だほとんど知られていないのかもしれません。ならば良し、あたくしが探究し詳らかにしましょう。エンディングの謎掛けを聴けば、此の楽曲自体が其れを望んでいると、確信しています。感動的な展開を魅せる壮大な「片瀬那奈の自分史」を高らかに歌う「Shine」は、オーケストラが終止和音を拒否し、はぐらかす様なピアノのフレーズて途切れます。つまり、此の楽曲は「永遠に終らない」のです。其れは何故なのか?其の答えは、此の楽曲のタイトルにあるではありませんか。
(小島藺子/姫川未亜)