nana.812.png

2009年09月03日

「夢みる歌謡曲」第那奈章: 片瀬那奈がきこえる
#016:「Dangerous To Me」Ladybird

デンジャラス・トゥー・ミー


 Lyrics:Marcus Granberg & Patric Sarin
 Music:Marcus Granberg & Patric Sarin



片瀬那奈のデビュー曲として認識された「GALAXY」は、2002年12月4日にトリプルA面曲の冒頭曲として発売され、彼女のシングルとしては現時点で最もヒット(オリコン最高13位)した作品です。其の理由として、それが今や大女優となった「みーたん」(笑うトコ)主演ドラマ「逮捕しちゃうぞ」のテーマ曲であり、当初片瀬が覆面歌手扱いだったことも挙げられます。ファン以外にも「楽曲」だけで浸透出来た唯一の作品でした。片瀬の知名度は、本人が認識している以上に「歌手転向」の足枷となります。

一般的にも片瀬のオリジナルとして知られた楽曲だったけれど、看過出来ない謎を持つことは以前(此のサイトを開始した2004年8月)に詳しく書いた通りです。その謎とは、此の楽曲には北京語と英語の異名同曲が存在し、本来ならオリジナルであるはずの「Dangerous To Me」が何故か三種の中で最も遅く世に出た事実ゆえ生じました。北京語と日本語によるカヴァー・ヴァージョンが先に認知されたのではなく、本当に英語盤が最後に発表されたのだからややこしい。其れではオリジナルとは呼べないじゃないか。只、最初に発売された北京語盤「DUN DUN DUN」の楽曲クレジットにも「O.T.(原題):Dangerous To Me」と明記されているのです。但し、片瀬による日本語盤では其の事実は明かされていません。

其のオリジナルと称される楽曲を歌ったのは「Ladybird」と云うラトヴィアの新人歌手で、日本盤では当時は2003年1月に発売されたダンス・コンピ盤でしか聴くことが出来なかったのです。其れもノンストップのセコい企画盤で曲数を稼ぐ為にとりあえず入れといたって扱いで、一般的には全く存在を認識されていなかったと思われます。既に片瀬盤がヒットしていたのにも拘らず、其の楽曲解説では「GALAXY」に関する事は完全に無視されていました。北京盤を検索し、其処から判明した「Ladybird」の公式サイトを発見した時の衝撃が此処の前身で在る「COPY CONTROL」発祥の一因にもなった事は、当時の記事に明白に遺されています。北京語盤の存在は在る程度知られていましたが、英語盤はオリジナルのはずなのに最もレアで其れを指摘する論も当時は探せなかったのです。「じゃ、イコちゃんが書いちゃって好いのかナ?」って始めたわけだ。まさか、其れから五年以上も延々と「片瀬噺」を書き続けるなんて思ってなかったわよ。

楽曲が「GALAXY」と同一だけで無く、其のスタイリングも酷似していました。真っ赤なレザーを着て、前髪をつくったロング・ヘアでまっすぐにカメラをみつめるラトヴィアの歌姫は、片瀬ファンにとっては「悪い冗談だろ?」とさえ思える程に「モノマネ」に見えたのです。明確な本国でのデビュー日は確認出来なかったものの、其れは「2002年12月」で在り、片瀬の公式デビュー日「2002年12月4日」とほぼ同時だったと考えられます。単純に考えれば三カ国語による「競作」だったのでしょう。されど、少なくとも片瀬那奈のプロモーションに於いては、そんな事実は2009年の現在に至っても未だ明かされていません。「GALAXY」は、片瀬那奈の為に書かれたオリジナル楽曲と云うのが定説です。でも、そうじゃなかった。一部で、其のオリジナルは北京語だと思われたものの、其れも違ったのです。

2005年3月のシングル集で、片瀬は第一期歌手活動を完全休止してたと云って良いのでしょう。そうした状況になってしまった半年後の2005年9月に、唐突に「Ladybird」が日本デビューしました。本国でのデビューから三年近く経て、一体何故?と思わずにいられません。いや、つまり「此れからやっと日本では此の音が来ますよっ」って事だったのでしょう。現実に、2009年にはそうなっています。でも、「Ladybird」もタイミングを逸したと云えますね。2005年10月には来日して地味にプロモーションしていた様です。片瀬がかつてゲリラ・ライヴ等で席巻し「GALAXY」を歌った渋谷で、三年後に漸く「Ladybird」が「Dangerous To Me」を歌ったのです。おいおい、遅いよ、遅過ぎるよ。なんで片瀬が歌手時代に呼んで共演させなかったの?遅まき乍ら2005年11月に履歴で「Ladybird」の日本公式サイトからのアクセスを発見し、逆引きし日本盤を中古で購入しました。

日本独自編集のデビュー盤での聴きどころとしては、以前のコンピ盤でノンストップ状態だった「Dangerous To Me」がフル・サイズで聴けることに尽きるのですけど、それ以外にも興味深いトコがありました。ボーナス・トラックで「Dangerous To Me」の別ミックスが収録されていて、此れが「GALAXY」を意識した構成に変えられています。オリジナルとされる「Dangerous To Me」も其の北京語版も、普通にAメロから始まりますが、新たなミックスでは「ダンダンダン!」ってサビから入ります。此れは明らかに片瀬ヴァージョンを参考にしたリミックスであって、もうどっちがオリジナルなのか分りません。また、MADONNA様の「VOGUE」のカヴァーも入っています。それは、はっきり云って「カヴァー」ではなく「コピー」でした。

公式ライナーで初めて、片瀬の「GALAXY」は「Dangerous To Me」のカヴァーであると明記された点だけでも大いにコレクター心を動かすアイテムではありますが、只それだけのことです。何故なら、オリジナルとされる「Dangerous To Me」よりも圧倒的に「GALAXY」の完成度の方が高いからです。普通、カヴァーはオリジナルを超えないのですが、片瀬は其の定説すらも既にデビュー曲で軽やかに覆していました。其れ故に、逆に後のカヴァー企画「Extended」での迷走が解せません。

片瀬がデビュー当時に揶揄された「カイリー・ミノーグのパチモン」なる批判が成立しない単純明快な証拠として、此の英語盤は存在します。其れどころか、「カイリー・ミノーグのパチモン楽曲」をカヴァーし、オリジナルに昇華したのが片瀬那奈の「GALAXY」だった!と云う「歴史的事実」が浮かび上がるのです。どーだ、参ったか?

でも、こんなもんじゃ終んないのよさ。未だ、序の口だ。だって、未だデビュー・シングルの途中なんだぜ、ベイブ☆


(小島藺子/姫川未亜)
初出「COPY CONTROL」2005年12月19日を全面改稿
RE-MIX:小島藺子



posted by 栗 at 00:07| YUMEKAYO | 更新情報をチェックする