w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ノーマン・スミス
2E:ケン・スコット(2/19、2/20)、マルコム・デイヴィス(2/23)
録音:1965年2月19日(take 3)
MONO MIX:1965年2月20日
STEREO MIX:1965年2月23日(1、2)、4月2日(3)
(公式盤に採用されたのはリミックス2)
1965年8月6日 アルバム発売 (「HELP !」 A-6)
パーロフォン PMC 1255(モノ)、PCS 3071(ステレオ)
ジョン・レノン作の名曲。「此れぞ、ビートルズ!」と叫んで町内一周したくなる程に素晴らしい演奏、歌唱、全部合格!!アルバム「HELP !」のA面はサントラ用の楽曲で構成されていますが、主役はまたしても「ジョン・レノン」でした。全那奈曲中、ジョン・レノン作が四曲で、全て名曲です。其れは、冒頭の主題歌「HELP !」から、三曲目「YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY(悲しみはぶっとばせ)」を経て、六曲目の「YOU'RE GOING TO LOSE THAT GIRL(恋のアドバイス)」と最後の「TICKET TO RIDE(涙の乗車券)」へと連なる「ジョン・レノン劇場」です。内、二曲は先行大ヒット・シングル曲でもあるのです。ハッキリ云ってしまえば、間に入るポール作の二曲とジョージ作の壱曲は、単なる「繋ぎ」にしか聴こえません。ひっくり返して始まる世界を知らずにいれば「矢張り、ビートルズはジョン・レノンで保っている!」と思うしかありません。駄曲無し!変幻自在!美しい!芸術は爆発だ!!
其の素晴らしい「1965年前半型ジョン・レノンの世界」のA面四曲で、異彩を放つのが此れです。1965年の彼等は、邦題とは反して既に「4人はアイドル」では無かった。四人で仲良く楽しい恋の唄を奏でる楽団では無くなっていました。其れでも、彼等はアイドルとして主演冒険活劇映画に駆り出されたのです。だからジョンは「HELP !」と叫び「YOU'VE GOT TO HIDE YOUR LOVE AWAY(悲しみはぶっとばせ)」や「TICKET TO RIDE(涙の乗車券)」、更には「YES IT IS」や「IT'S ONLY LOVE」と悲観的な心情を歌いました。でも、其れでも、ジョンは此の楽曲をも書いた。誰もが好きになってしまう魔法の声で煽動し、明るく愉快で一寸意地悪な大衆音楽を書いてファンが求める「ビートルズ」を見事に演じ切って魅せた。いや、そんな解釈なんか要らないんだ。
ジョンが自信たっぷりに歌う、ポールとジョージが追っかける、リンゴが笑って太鼓を叩く。完璧なカタチだ。此れがビートルズの在るべき姿でした。でも、彼等は其れを自ら破壊しました。続けて始まる「TICKET TO RIDE(涙の乗車券)」は、シングル盤で単体で聴いた時よりも衝撃的です。うっかり1964年型「I WANT TO HOLD YOUR HAND(抱きしめたい)」路線の「YOU'RE GOING TO LOSE THAT GIRL(恋のアドバイス)」で甘い夢をふたたびと思わせて、其れを切り裂く様に鳴り響くヘビイメタルの嵐に、畏れさえも覚えます。そして、B面には更なる暴力的な美が待っているのです。アルバム「HELP !」こそが、実は最初のコンセプト・アルバムだったと思います。何もかもが、衝撃的な傑作です。
(小島藺子)
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