

w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ノーマン・スミス
2E:ケン・スコット(2/17、2/18)、マルコム・デイヴィス(2/23)、フィル・マクドナルド(4/18)
録音:1965年2月17日(take 2)
MONO MIX:1965年2月18日
STEREO MIX:1965年2月23日(1)、4月18日(2:未使用)
1965年8月6日 アルバム発売 (「HELP !」 A-2)
パーロフォン PMC 1255(モノ)、PCS 3071(ステレオ)
さて、先行シングルでの曲が先に出ちゃってますけど、アルバム「HELP !」の登場です。邦題は映画のタイトルに合わせ「HELP ! 4人はアイドル」です。前作映画同様、水野先生のセンス、すぎょすぎです。つまり、彼等の主演第二作映画のサントラ盤としての側面を持つのですが、前作映画と同じく「A面にサントラ用の新曲、B面は其れ以外の新曲」ってカラクリになっており、サービス満点です。米国では、キャピトルによって無茶苦茶に解体され、収録曲は四枚のアルバムに分散されます。唯一の救いは、其の内の壱枚が純粋なサントラ盤だった事でしょう。
アルバム冒頭は当然、先行シングル第二弾として大ヒット中で映画の主題歌「HELP !」です。そして、二曲目に此のポール・マッカートニー作のやっつけ仕事が出て来ます。アルバム「HELP !」は、見事に「レノマカ」+α=「ビートルズ」が均等に配分されています。全14曲でリード・ヴォーカルは「ジョン:6、ポール:5、ジョージ:2、リンゴ:1」です。然し乍ら、未だ未だジョンに分が在ったと云わねばならないのは「A面でのポール駄作」の存在ゆえです。此の「THE NIGHT BEFORE」や「ANOTHER GIRL」更にはボツになった「THAT MEANS A LOT」を聴くと、未だポールは完全には覚醒しておりません。此れらはアルバム「HELP !」セッションの始めの時期(2月〜3月)に録音された楽曲です。確かに、セッション最初のジョン・レノン作「TICKET TO RIDE(涙の乗車券)」で、ポールは「編曲家&演奏家」としては化けました。でも、未だ「自作自演歌手」としては「寝ぼけた侭」だった様子です。
たったの2テイクで、一発録りに限りなく近いラフな演奏で流す上に乗せた「ポールの過剰なダブルトラック声」は、かつての「HOLD ME TIGHT」や「WHAT YOU ARE DOING」の悪夢を想起させます。実際に「THAT MEANS A LOT」が三度目の悪夢でした。アルバム「HELP !」でジョンが導入したエレピも、此の曲では余り好い効果を上げてはいません。後述する「ANOTHER GIRL」も同じ印象です。セッションは一旦、1965年3月30日の「THAT MEANS A LOT」リメイク(ポールは三たび、駄曲に他の連中を、なな、なんと「24テイク(実際には那奈テイクですけど、五十歩百歩です)」も付き合わせ、結局ボツになるのでした。)を最後に中断し、4月13日にジョン作(ポールが合作だと云っているし、完成版を聴けば其の通りなのだけど、どー考えても基本的にはジョンの曲じゃん!)の主題歌「HELP !」を録音し再び中断、5月10日にはジョンのカヴァー2曲をやって、運命の6月14日が来るのです。僅か三ヶ月後に別人の様な「世紀のメロディーメイカー」が現れます。一体、1965年の春、ポールに何が起こったのでしょう?また死んで蘇ったのかしらん。ポールって、何人いるのよさ。
(小島藺子)
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